昨日に引き続き除草剤ねたです。
世界でもっとも多く使用されている除草剤は,アメリカのモンサント社が開発した”グリホサート”を主成分とする除草剤です。同社の除草剤はラウンドアップという名前で商品化されています。グリサホート自体のの特許権は切れているので同じ成分の除草剤が各社から発売されています。春先からモンサント社製ラウンドアップのCMが頻繁に流れていました。家庭用の500ml容器から農家用の200Lまでのラインナップがあるそうです。20L以上の製品はJAで扱っています。
CMでは葉から吸収された薬剤が茎や根までに移行すると,枯れて爆発するというイメージ映像がありました。とんでもなく怖い農薬に思えました。モンサント社はベトナム戦争当時,「枯れ葉剤」を米軍に納めていた会社です。除草剤で枯れた草は抜かない限り,腐るまでそのままです。つまり「除草剤」ではなく本来は「枯れ葉剤」と呼んだ方がふさわしい農薬です。「枯れ葉剤」という名前ではダイオキシンによる発ガン性や催奇形性のイメージがつきまとうのでしょう。
ラウンドアップを販売している会社のHPから引用します(斜め文字が引用です)。
「ラウンドアップ除草剤の有効成分”グリホサート”はもっとも簡単なアミノ酸である”グリシン”と”リン酸”の誘導体です。ラウンドアップも同様の成分を含んでおり、人畜毒性は安全性の高い普通物です。処理後1時間以内のごく短時間で土の粒子に吸着し、その後微生物のエサとなって自然物に分解。約3~21日で半減、やがて消失します。ラウンドアップは野生生物・鳥類・昆虫類にも極めて安全性が高く、世界の環境保護区や、世界遺産の保全に広く利用されています」
いかにも安全そうです。でもこの手のコマーシャルメッセージを素直に受け取れない性分です。だって,「危険な商品ですよ」といって商売する馬鹿はいませんからね。
疑問①:約3~21日で半減するが残りの半分は残留することになる。残留したものはどうなるのか?
疑問②:成分を分解できるのは土中の微生物らしい。河川に流れたものは分解されないのでは?
疑問③野生生物・鳥類・昆虫類には極めて安全性が高いが,河川(海)の生物への影響はどうなのか?
そこで同じHP上を探すと「ラウンドアップマックスロード「製品安全データシート」なるものを発見しました。クリックするとモノクロのPDFファイルが開きました。一部を抜き出します。
「2危険有害性の要約
・環境に対する有害性
水性環境急性有害性:区分2
水性環境慢性有害性:区分2
6漏出時の措置
環境に対する注意事項
・河川等に排出され,環境へ影響を起こさないように注意する。
12環境影響情報
生態毒性
魚毒性:コイ急性毒性96時間LC50 32.7mg/L
その他:オオミジンコ急性遊泳阻害 48時間EC50 7.07mg/L
藻類生長阻害72時間EC50 1.05mg/L」
難しい有害性区分や生体毒性に関する数字が意味することの詳細はわかりませんが,水性環境や生物には毒性があることがわかります。最後尾の数値は濃度でしょうね。
「コイ急性毒性96時間」という意味は「96時間で死ぬ」ということでしょうか?
「オオミジンコ急性遊泳阻害 48時間」は泳げなくなったミジンコはおそらく死んでしまいます。
「藻類生長阻害72時間」は水中の藻類の生長が阻害され枯れるということでしょう。
販売会社のHPから想像されるのは次のような事態です。
「土中の微生物が分解しきれなかった薬剤は,雨が降ると河川に流入し海にいたります。薬剤を分解できる水性微生物は確認できません。この農薬は比較的汚れた河川に生息するコイ対しても急性毒性がありますので,他の淡水魚への影響はもっと大きいと思われます。海水魚に対する影響のデータはありません。稚魚の餌となるオオミジンコに遊泳阻害が現れ,ミジンコ類は減少するものと思われます。それを餌にする稚魚も減少します。魚類の産卵場と隠れ家となる藻類の生長を阻害します。藻類が減ると魚類も減ることになります」
主成分のほかに展着材として含まれいる「界面活性剤」も水生生物環境には悪影響があります。界面活性剤は合成洗剤の主成分ですね。魚のえらに付着すると酸素が取り込めなくなるそうです。
奄美の海でも最近は昔ほど魚が穫れなくなったそうです。昔の海は今みたいに青ではなく黒い海だったそうです。ホンダワラなどの海草が生い茂っていたから黒く見えたのです。今の海はきれいだけど本当は貧弱な海なのです。先日紹介したシロヒゲウニの減少も海草が減ったことが原因でしょう。
河川の水の成分は海の生物にも影響を与えます。奄美では赤土の流出が河川や海を汚染する原因としてとりあげられます。赤土以外に農薬の過剰使用問題にも目を向ける時期かもしれません。東北地方では豊かな海を取り戻すために,漁業関係者を中心に山に木を植える事業もあるそうです。薄まった農薬は急激な毒性を表さなくとも,ゆっくりとその影響が表れてきます。水生生物にとっては水は空気と同じです。昔は豊だった海に魚がいなくなったのは水性環境が悪化したからにほかなりません。
「奄美を世界自然遺産に登録しよう」という運動があります。野生生物は森林にだけ住んでいるわけではありません。河川や海の環境をこれ以上悪化させない方策も検討すべきでしょう。
オヤジのできることは除草剤を使わずに手で草を抜くことくらいです。
薄まった農薬もしかり。長い間使い続けたせいで魚も減りました。農家の生活も大事ですが,減農薬の意識付けが必要な時期かもしれません。