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B級会社員のOFF日記(現在無職です)

尻毛助左衛門と尻毛又丸の珍道中の日記を公開しています。

定年サラリーマンのOFF日記もあります。

紳士・淑女の昔物語・・・六宮の姫君(その3)

2016-06-21 20:23:24 | 紳士・淑女の昔物語

紳士・淑女の昔物語・・・六宮の姫君(その3)

 

五年が過ぎた。父の陸奥の守の任期は終わり、上京しようとした時、常陸の守の人は、この男の評判を聞きつけ

「娘の婿にしたい」と使者を立てて、迎えようとした。

男の父、陸奥の守は「それは結構なことだ。」と喜び、この男を常陸へ送った。

 

こうして陸奥には五年、常陸には四年がむなしく過ぎていった。

常陸の守の娘は若く、魅力もあったが、京の人とは較べようもなく、心は常に京へ向き、京の人を悲しく恋していた。

何度も京へ便りを送ったが、便りはなく、所在は不明であった。

 

そのうち常陸の守の任期は果て、同道して、上京することになった。

 

京に入るや、男は旅装束のまま、六宮の住居へ急いだ。

築地はあるものの、家はなくなり、粗末な小さな小屋があるだけであった。

 

その小屋から、尼が出てきた。

男はこの尼を呼びよせた。

月明かりに見ると、この屋敷の下女であった。

「この屋敷に住んでいた姫君はご存知か?」と問うと

尼ははかばかしい、返事をしない。

男は尼が寒そうに見えたので、男は着ていた衣を一つ脱いで与えた。

尼はどうしてよいかわからぬ様子で

「どなたさまが、このようなことをしてくださいますやら」と言う。

「おまえは私を忘れましたか。わたしはおまえをわすれないよ」

と男が言うと、尼は聞いてしゃくりあげ、涙にむせぶのであった。

それから、尼は話した。

 

(次回へ続く)

 


紳士・淑女の昔物語・・・六宮の姫君(その2)

2016-06-20 21:16:10 | 紳士・淑女の昔物語

紳士・淑女の昔物語・・・六宮の姫君(その2)

乳母はさらに言いました。

「今は受領の身分です。先代までは公卿でしたよ。ですから身分の高い方です。」

「そのような方が、この姫様がひとりで暮している由を聞いて、申し入れておいでです。御通いになっても、恥ずかしい人ではありません。」

乳母は何度も男の手紙を取り次いだが、姫君は見もせず、乳母は、姫君の手紙らしく書いては、返事として男に送った。

 

それが繰り返されて、乳母は日を決めて男を来させた。

来始めると、姫君はどうすることもできず、男を通わせることになってしまった。

男は真心をつくして、女を思った。

姫君は、この人を頼んで暮らすようになった。

 

しかし、この男の父が陸奥の国守に任ぜられ、その男も行くことになった。

 

男は女を残していくことは、とても心苦しく思うものの、どうしようもなかった。

男は将来を契り、泣く泣く男は陸奥に下った。

 

そして、月日は過ぎてしまった。

 

(次回へ続く)

 

 


紳士・淑女の昔物語・・・六宮の姫君(その1)

2016-06-16 21:19:50 | 紳士・淑女の昔物語

紳士・・淑女の昔物語・・・六宮の姫君(その1)

六宮と言う没落した古い宮家がありました。

この宮家の父は50歳余。娘が一人持っていました。

娘は美しく、素直で、これはと言う欠点はありませんでした。

世に隠れた人の娘、誰も知らず、求婚してくれる人もいませんでした。

(父) 「もらってほしいとどうして、こちらから、言えようか。求めてくれる人があってこそ」、

と古風に思いを抑えていた。母も心がかりで、仕方なく娘を愛しく大切にしていた。

乳母はいたが、打ち解けずにいた。

兄弟もなく、将来のことが、心配であった。

両親はそれを嘆くほか、何もできなかった。

 

そのうち、父母は相次いで亡くなった。

 

年月は過ぎていった。

生活のため、親から受け継いだ家具の類も、あっけなく乳母は少しずつ人手に渡していった。

姫君は生きているような気もせず、ただひたすら、心細く悲しかった。

ある日、乳母は言う

「わたしの兄に言いつけて、申し入れてきた人がございます。さる国の国司の息子で、容姿も美しく高貴な人ですよ。」

 

 

(次回へ続く)

 

 


紳士・淑女の物語・・・夜の笛

2016-06-15 20:02:17 | 紳士・淑女の昔物語

紳士・淑女の物語・・・夜の笛

 

大和国に住む人、一人の女の子を持っていた。美しく、優しく、両親はこの子を大切に育てた。

河内国に住む人、一人の男の子を持っていた。年若く、美男で、宮仕えをしていた。

 

若者はこの女性を伝え聞き、恋文を送って思いを伝えた。

 

あまりの熱意に折れて、大和の両親は若者を娘に会わせた。

二人はその後深く愛し合い、男は通い暮らしたが、3年目この夫は病を得た。

ほんの4,5日患ったあと男は死んでしまいました。

女は歎き悲しみ、ものぐるおしく、恋慕った。

ほかの男達は、言い寄るが、泣くばかりであった。

三年目の秋のある夜

泣き伏していると、遠くから笛の音が聞こえてきた。

(女) 「あの人の笛の音になんと似ていることか」

   笛の音は次第に近づき、女の家に近寄った。

(男) 「ここを開けておくれ」

女は驚き、なつかしく思うものの、恐ろしく、そっと立って戸の隙間から覗く。

まぎれもなく、夫が立っている。

泣きながら夫は言った。

「死出の山 越えぬる人の わびしきは 恋しき人に 逢わぬなりけり 」

佇んでいる姿は生前のままであったが、その身からは焼く煙が立ったいた。

(男)「無理もない。私のことを一途に慕ってくださる哀れさに、難しい冥府の暇をもらってやってきたが、あなたが、怖がっているので私は帰ろう。日に3度

焦熱の苦しみを、あの世で私は受けているのだよ。」

言い終わると、かき消すように夫の姿は消えてしまっていた。

 

(解説本曰く) 「笛は義経と浄瑠璃御前、真野長者の牛飼い童と玉世姫のように相思を繋ぐものである。」

(拙者曰く) 「冥府も、現代の会社員も有給休暇は取りづらいものである」

 

今昔物語、巻一にある話です。

 


紳士・淑女の物語・・・・・・物言う女放屁の事

2016-06-11 21:41:36 | 紳士・淑女の昔物語

紳士・淑女の物語・・・・・・藤大納言忠家、物言う女放屁の事

 

今は昔 藤大納言忠家と言う人が、ある夜、華やかな美しい女性と語りあっていた。

夜が更けていった。

その男は、月が明るくなって、その風情に堪えかねて、女の肩に手をかけて引き寄せた。

(美女) 「まあ、恥ずかしいことです」

      と言って逃れようとした。しかし、その時音高く、一発鳴らしてしまった。

      女は言葉もなくその場に伏してしまった。

(若い男) 「全く情けない目に逢ったものだ。生きながらえても何になろうか。出家しよう」

     と言ってその家を出た。

     暫くして考え直す。

      「この女が放屁したからといって、どうして私が、出家しなければならない訳があろうか」

     と言って走り去った。

この女のその後は伝えられていない。

 

(助左衛門) 「二人とも若いですね。羨ましいかぎり」

(家内曰く) 「放屁より、ゲップの方が下品」

 

宇治拾遺物語 巻三より