B級会社員のOFF日記(現在無職です)

尻毛助左衛門と尻毛又丸の珍道中の日記を公開しています。

定年サラリーマンのOFF日記もあります。

熱海の保養所(二十一)

2014-10-19 22:43:57 | 熱海の保養所

平成26年8月31日

 枕が違うと、なかなか寝つけない神経質な人間であるが、いつの間にか寝てしまったようだ。

助左衛門は平日でも休日でも午前6時には目が覚めてしまう悲しい性がある。会社人間ではないが、体がそうなっている。

又丸殿は昨夜、最終のひかり809号が眼下の線路を通過する時間が定刻の23時32分であることを確かめたそうだ。

そして今日も早朝一番の通過新幹線はひかり493号で、6時23分に通過し

(又丸)「ひかり493号定刻通過、運転よ~し」

    と一人叫んでいる。

助左衛門はNHK第2放送で6時からはじまる古典文学講座「奥の細道」を聞いている。

放送では、4月江戸を出発し8月末石の巻で、程よい旅の経過である。

文章が凛として、美しい。旅には欠かせない書籍。幸福な45分間。

 

7時になる前、隣室より厨子王が登場

7時から「きかんしゃトーマス」がはじまる。

(又丸) 「厨子王ちゃん。急行列車のゴードンだよ。いつも威張っているよ」

(厨子王)「チンカンセン! チンカンセン!」

(又丸)「トーマスがやってきたよ。良いやつだよ。しかし失敗ばかりしているよ」

(厨子王)「チンカンセン!チンカンセン!」

二人の会話は噛み合わないが、聞いていて微笑ましい。

助左衛門は真剣に「きかんしゃトーマス」を視聴している。

経営論、組織論から見ても十分ためになる

幼い子供と一緒に仕事の話はどうかと思うが・・・

良い番組と声を大にして言いたい。

いつの間にか、安寿も加わる

7時20分からは、「おしりかじり虫」がはじまる。

10分間の番組である。

女性陣がきて「朝食の時間ですよ」と告げる

助左衛門は夕食よりも朝食が好きである。

熱海は干物が有名で何とも言えない幸せな時間が流れる。

(松枝)「この箸の袋を見るとほかに保養所がほかに2か所あるのですね」

(千手)「この2か所にも行かないと不公平だわ」

(横笛)「私は毎週末ここでもいいわ」

(お汲)「死ぬ前に、もう一度どこかへ行きたいわ」

(又丸)「窓から電車が見えたら、どこでもいいよ」

(安寿)「ヨーグルトが食べたいの」

(厨子王)「シンカンセン! シンカンセン!」

それぞれ言いたいことを言っている。

助左衛門は今日の予定のことを心配している。

楽しい保養所は今日で「ごきげんよう」である

次回もどこかの保養所を考えだした。保養所の方の見送りがあり、尻毛家は保養所をあとにした。

 

(完)

 


熱海の保養所(二十、尻毛又丸の任務)

2014-10-04 22:31:36 | 熱海の保養所

楽しいカラオケがすんで、又丸殿と部屋に戻る。

又丸殿は缶コーヒーを買い、窓辺で列車を見てござる。

助左衛門はテレビのニュースを見ていると・・・

(又丸) 「テレビを切って、この映像とこの音を楽しみませんか」

     と言って、眼下の踊り子号を指さす。

(助左衛門)「さすが、鉄ちゃんの中の鉄ちゃんですね」

(又丸)「6階は少し高すぎますね。こちらから手を振っても誰も答えてくれない。寂しいかぎりですよ」

(助左衛門)「いい大人が手を振るのですか?」

(又丸) 「当然です」

(助左衛門) 「知り合いの、若い、素敵な女性なら手を振れますが・・・」

(又丸) 「助左衛門さん。話がずれてますよ」

(助左衛門) 「すみません・・・」

 

その時ドアをノックする音が聞こえる。

(又丸)「ここは女人禁制ですよ」

(千手)「うちの厨子王が、又丸殿と列車を見たいと言ってますので、又少しお願いします」

(又丸)「尻毛又丸3等兵、任務に就きます!」

(千手)「本当に又丸殿はいい人ですね。あとはお嫁さんですよ」

(又丸)「その話は勘弁してください。厨子王、新幹線をいっしょに見よう」

又丸殿は鉄道の話をいろいろ話されるが、厨子王はいつの間にか寝入ってしまう。

 

1時間後・・・

(千手)「失礼します。厨子王はどうしてます?」 

 (又丸)「おいらの布団で寝てますよ。大丈夫。僕はソファーで寝ます。何かあったら呼びますから」

(千手) 「安寿はなかなか寝ないので少しお願いします」

(又丸)「ソファーは公園のベンチより快適でーす。」

 

10分後・・・

又丸殿はその後ソファーで寝てしまう。どこでも寝ることができる天才と感心する。

 

30分後

助左衛門は枕が違うとなかなか眠ることができない神経質な人間であるから、眠れないでいた。

「バターン」すごい音がしたので、飛び起きると又丸殿はやはり落ちていた。

(又丸) 「痛-い! これはだめだ.厨子王は千手さんに返そう。」

     と言い、隣りの部屋に行く

 

隣りの部屋から「尻毛又丸3等兵は任務を遂行できませんでした。」という又丸殿の声が聞こえた。

8月30日の長い1日はようやく過ぎようとしていた。

 

(次回へ続く)

 


熱海の保養所(十九、茜の空に誓った恋・・・)

2014-10-02 22:24:39 | 熱海の保養所

助左衛門は最後にそのカラオケ部屋に入っていった、

カラオケにはここ何年も行っていない。

 

(又丸)「本日のカラオケのオープニング曲は「アナと雪の女王の物語」。歌うは安寿ちゃん三歳。盛大な拍手をお願いします」

    安寿は重たいマイクを持って、最近覚えたこの曲を披露する。母の千手と叔母の横笛が一緒に歌う。

(松枝)「又丸殿は何を歌ってくれるのですか?」

(又丸)「松村和子のデビュー曲ですよ」

(松枝)「昔、三味線を弾いて・・・・?」

(又丸)「その通り 1,980年18歳で歌手としてプロデビュー。北海道苫小牧市出身。曲はもちろん「帰ってこいよ」

    和子ちゃんと同い年の尻毛又丸がエア三味線で歌います」

    

    「♪きっと帰ってくるんだと ♪お岩木山で手をふれば

    ♪あの子は小さくうなずいた、♪茜の空で誓った恋を

    ♪東京暮らしでわすれたか。♪帰ってこいよ。♪帰ってこいよ ♪帰ってこ~いよ」

 

又丸殿の歌につられて、松枝と助左衛門は3人で一緒に2番3番を歌った。

ほかの曲もそれぞれが2、3曲歌ったが何を歌ったか、全然思い出せない。

 

松枝の二人の娘千手と横笛は故郷を後にしてまさに「東京暮らし」

松枝が二人に帰ってこいよと言っても帰ってこられない

助左衛門は又丸のこの選曲の良さに驚いた。単なる偶然と思いながらも・・・

1時間半楽しく過ごした。

あまりにも又丸のこの歌の強烈なイメージが残り

数か月経過したいまでも、助左衛門は口ずさんでしまう。

 

・・・・・・・・・♪茜の空で誓った恋を ♪東京暮らしでわすれたか ♪帰ってこいよ ♪帰ってこいよ ♪帰ってこい~よ・・・・・・・・

 

(次回へ続く)   又丸が鉄ちゃんぶりを発揮します

 


熱海の保養所(十八、チンカンセンの救世主)

2014-10-01 20:45:20 | 熱海の保養所

又丸殿の涙でテーブルは急に静かになった。

すると母のお汲みおばあちゃんは、又丸に

(お汲) 「こら!又丸。 せっかくの料理が不味くなります。いい加減に泣くのはやめなさい」

又丸を叱ってはいたが、お汲おばあちゃんの目にも、涙があった。

 

その時である。新幹線のN700形がゴーという音を発して、走っていく。

救世主が現れた。新幹線ではない。

千手の長男・厨子王である。厨子王は又丸殿の浴衣の袖をとって

(厨子王) 「チンカンセン! チンカンセン!チンカンセン!」

       と言って、新幹線を指さす。

(又丸)「チンカンセンではなく、シンカンセン、新 幹 線 です。」

(厨子王) 「チンカンセン? シンカンセン?」

(又丸) 「そうそう、シンカンセン、新 幹 線。千手さんこの子はきっと良い鉄ちゃんになりますよ」

(千手) 「又丸殿。厨子王を可愛がってくださいね。」

(又丸) 「ガッテン承知の助。」

      そして、又丸殿は厨子王の手を取り、窓際へ行く。

(又丸) 「あの電車は伊豆下田まで直通運転している踊り子号。進行方向に向かって左側に席をとると、きれいな海が見えるよ。」

      又丸殿はまだ右も左もよく知らない厨子王と並んで列車を見ていた。

厨子王の目は光り、輝いていた。

 

(横笛) 「食事の前に千手姉さんと、保養所の中を探検していたら、カラオケもあったよ」

(千手) 「せっかくだから、行きましょうよ」

(お汲) 「人前で歌なんか・・・歌えませんよ」

(松枝) 「助左衛門さんや又丸殿の歌を聴いてみたいわ。」

(又丸) 「おいらはあの歌だ!」

(横笛)「これで決まりだね。行こう、行こう」

 

音痴の助左衛門はまさかのカラオケに不安であった。

 

(次回へ続く)  又丸殿の歌に驚き、まさかの展開へ・・・