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B級会社員のOFF日記(現在無職です)

尻毛助左衛門と尻毛又丸の珍道中の日記を公開しています。

定年サラリーマンのOFF日記もあります。

貉(むじな)

2018-06-17 21:50:48 | 紳士・淑女の昔物語

芥川龍之助 「貉」より

 

貉は神武東征の昔から山野に住んでいたらしい。

人を化かすこともあったのだろう。

 

陸奥の汐汲みの娘が 汐焼の男と恋をした。

男は毎夜磯山を越えてやってくる。

娘もやってくる。

 

しかし 娘は毎夜来ることが出来ない。

 

娘には母が一人いて なかなか 来れない。

 

ある夜 一番鳥が鳴いても 娘はまだ来ない。

 

そんなことが何度かあった。

 

男は屏風のような岩のかげで待っている。

寂しさを紛らすために 高らかに歌を歌った。

波の音に消されないように 一所懸命 唄う。

 

潮を浴びて 男の声は 涸れていた。

 

これを聞いた母親は そばで寝ている娘に

「あの声は何だろう」と言った。

始めは寝たふりをした娘も答えない訳には行かない。

「人の声では ないのでは・・・」

狼狽したあまり 娘は誤魔化した。

「人ではなくて 何が歌うのか」と母は問う。

「貉かもしれない。」と答えたのは 娘の機転である。

 

夜が明けると 母は近くの蓆(むしろ)織りに話した。

蓆織りは この話を 蘆(あし)刈りの男に話した。

話は伝わり伝わった。

・・・中略・・・

 

(続く)


沙本毗売(さほびめ)の話(下)・・・そのいろ妹(も)亦従ひたまひき

2017-11-15 21:13:52 | 紳士・淑女の昔物語

沙本毗売の話(下)・・・そのいろ妹(も)亦従ひたまひき

 

天皇は子供まで孕んでいることを哀れに思われて わざとこの軍隊を回り道をさせて、急いで攻撃させなかった。

 

こうしているうちに 皇后には皇子が生まれました。

 

皇后は城の外にだして、使者に

「この御子を天皇の御子とお思いになったら、育ててください。」

と申しあげさせた。

 

天皇は「私は その兄を怨んでいるが、妻の皇后は愛しいと思っている。」

とおっしゃった。

天皇は大勢の軍隊の中から 力が強く 敏捷な者を選んで 皇后と御子を助け出すように命じになった。

ところが 皇后の方は 天皇の御心をお知りになっていた。

皇后は髪の毛を切って その切った髪の毛で頭を覆いになった。

また玉をつないだ紐を腐らせ それを三重に手にまいた。

そして 酒で着物を腐らせておいた。

屈強の者達は 皇后より御子を受け取ると 母である皇后も捕まえようとした。

しかし 髪を握ると髪はぼろぼろと落ち、玉の紐は切れ 着物はすぐに切れて 皇后を助け出すことはできなかった。

 

こうして 戦いの末 兄と妹はなくなった。

御子は本牟智和気(ほみちのわけ)と名付けられ、成人するまで話すことはできなかった。

啞の皇子と言われている。

参考:梅原 猛 古事記 学習研究社

 

原文では・・・

・・・「若し此の御子を 天皇の御子と思ほし看(め)さば 治め賜うべし」とまをさしめたまいき。ここに天皇 「その兄(いろせ)を怨みつれども 猶その后を愛(うつく)しむに得忍びず・・・」


沙本毗売(さおびめ)の話(上)・・・涙が落ちて、顔を濡らす

2017-11-14 00:19:03 | 紳士・淑女の昔物語

涙が落ちて、顔を濡らす

この天皇(垂仁)がサホビメを皇后になさった時、

サホビメの兄サホビコが妹に

「お前は夫と兄とどちらが好きか」と尋ねると

サホビメは「兄さんの方が好きです。」

と答えたそうだ。

 そこでサコビコは反逆を企んだ。

「お前が 本当に私が好きならば 私とお前とで天下を治めようじゃないか。」

小刀を渡して「この小刀で天皇の首を刺し殺してくれ。」

 

 天皇はつゆ知らず、皇后の膝を枕にして、休んでいた。

そこで皇后は小刀で天皇を刺そうとして、三度まで小刀を

振り上げたが、愛しい心に耐えかねて、首をさすことはできなかった。

皇后の泣きなさった涙は溢れ落ち、天皇のお顔を濡らした。

天皇は驚いて目を覚まして、皇后におっしゃった。

「私は今 妙な夢を見た。佐保から激しい雨が降ってきて 突然に私の頬を蒸らした。」

「また錦色の小さな蛇が私の首にまとわりついた。この夢は一体何の夢なのか。」

皇后は黙っているわけにもいかず、本当のことを天皇に話した。

 

「私の兄のサホビコは私に『夫と兄とどちらが好きか』と問うたのですが、面と向かって問うたので、私はやむをえず『兄さんの方が好きです。』と答えました

兄は『私とおまえで天下を治めよう。だから天皇を殺してしまえ。』と言って小刀を私に授けました。

そういうわけで 天皇の首を刺そうと、三度小刀を刺そうとしましたが、愛しい気持ちもあり、出来ませんでした。私の涙が落ちて、お顔を濡らしてしまいました。その夢はその表れでしょう。」

天皇は「危うく殺されるところであった。」とおっしゃって 

軍隊を起こし、サホビコを討とうとなさった。

 

サホビコは城を築き 天皇を迎え討つ準備をする。

この時 サホビメは兄をあわれに思い 宮殿の裏門から出て 兄の城の中へ入られた。

この時 サホビメは子供を孕んでおられた。

 

原文を見ると・・・

その妹(いろえ)に問ひて

「夫(を)と兄(せ)と いづれか 愛(は)しき」と曰(い)へば

「兄ぞ愛しき」と答へ曰ひき

・・・中略・・・

その天皇の御頸(みくび)を刺さむとして

三度挙(ふ)りたまひて、悲しき情に忍びず

頸を刺すこと能わず

泣く涙 御面(みおも)に落ち溢れき

即ち 天皇驚きたまひて・・・

 

 

(続く)

 

参考:現代語訳 日本の古典 梅原 猛 学習研究社

 

 

 

 


美濃(三野)に美しき娘あり、昔も今も

2017-11-03 19:44:40 | 紳士・淑女の昔物語

美濃(三野)に美しき娘あり、今も昔も

 

景行(けいこう)天皇は美濃(三野)の国造(みやつこ)の大根王(おおねのみこ)の

兄比売(えひめ)・弟比売(おとひめ)という二人の娘が 

大変顔・かたちが美しいという評判をお聞きになって

その皇子大碓命(おおうすのみこと)を遣わして召し上げようとした。

しかし大碓命は天皇にさし上げずに、自分が二人と交わってしまった。

そして、別の女を探して、兄比売・弟比売と言ってさし上げた。

天皇は別の女と知り、その女を近づけなかった。

 

後日 天皇は小碓命(おうすのみこと)に

「どうして お前の兄 大碓命は朝夕の食事に出席をしない。大事な儀式だから

よく諭して出席するように 言ってくれ。」

数日後 天皇は

「お前の兄はまだ出席しない。まだ諭していないのか」

とおっしゃると

小碓命は

「朝、便所に入るところを 待ち構えて その手足をへし折って 

菰(こも)に包んで 投げ捨てました。」

天皇は小碓命を恐れ、小碓命を各地へ征伐に行かせることになる。

小碓命とは後の 倭建命(やまとたけるのみこと)である。

 

最後に

美濃(三野)の国造の大根王の子孫とは このブログの読者である 美しい貴女のことです。

または貴方の奥さんのことです。

 

原文では 万葉集 中の巻

「・・・是に天皇 三野(みの)国造の祖大根王の女(むすめ)  名は兄比売・弟比売の

二(ふたり)の嬢子(をとめ)、其の容姿(ようし)麗美(うるは)しと聞(きこ)し看(め)し

定めて その御子 大碓命を遣わして 召し上げたまひき。

故(かれ) 其の遣はえし 大碓命 召し上げずして 即ち 己自らその二(ふたり)の

嬢女(おとめ)を婚(よば)ひて 更に 他(あた)し女人(おんな)を求めて 詐(いつは)りて

その嬢女と名付けて 奉りき。・・・」

参考 小学館 日本文学全集 古事記 上代歌謡

   現代語訳 日本の古典 古事記 梅原 猛


朱の矢に化けて

2017-11-03 00:21:20 | 紳士・淑女の昔物語

今回から「古事記」の中に紳士・淑女の昔物語りを捜しました。

美しい少女に魅せられた三輪の大物主神は 少女が用を足すために小川で身を小さくをしているときに、赤く塗った矢に化けて、少女の陰部を突き刺したという。

少女は驚いて 家に帰り 床の上あたりに持ってきたその矢を置くと

その矢は たちまち麗しい男の姿になり、契りを交わしました。

 

以下原文を読むと・・・

・・・三輪の大物主神 身感(みめ)出て その美人(オトメ)大便(くそ)まれる時

丹塗りの矢になりて その大便まれる溝より 流れ下りて

その美女の陰を突きき。・・・

先を訳文にもどすと

そして生まれた子供はイスケヨリヒメ、まことに三輪の大物主神を父とする

神の御子であった。そのご ヒコヤキ  カムヤキ カヌヌナカハ

と三人の子供がうまれた。

これは 後日詠まれた歌である。

葦原の しけしき小屋に 菅畳(すがたたみ) 

  いや清敷きて 我が二人寝し

(古事記 上の巻)