つぼ娘・・・(恵那市)
昔 自分の子供には ええ着物を着せて 継子には おぞい雑巾みたいな 着物を着させていた母がいた。
ある時 お殿様のお通りがあった。
母は自分の生んだ子供に お茶を持たせてやらしたところ 何かが茶碗に ついていた。
お殿様は急に不機嫌なった。
「これは 飲むことができない。こんどは そこの娘から お茶をもらおう。」
「そのままの着物で良い。その娘から お茶を もらいたいのじゃ。」
継子は茶碗をきれいに すすいで お茶を差し上げた。
機嫌の良くなった 殿様は 庭に消え残っていた 雪を盤に盛らせて 松の小枝を
それにつきさし
「これは なんじゃ」と 尋ねられた。
ええ着物の娘は 急いで
「盤に さらさらの雪」
と答えた。継子の娘は
「 盤皿や さらちょう山に 雪降りて 雪を根にして 育つ松かな 」と ひとりごとのように詠った。
殿様は「見事じゃ」と 気に入ったそうじゃ。
後日 城から きれいな着物が贈られた。
継子はきれいな着物を着て 立派なかごに乗ってお城へ行かれた。
母は 自分の生んだ子供を なんとかして 城に行かせたいと考えた。
母は考えに考えた。
継子のおぞい着物を着せ 田んぼに 連れて行き 草取りをさせようとした。
しかし 自分の娘は 田のあぜ道で 草取りなどしたくないと言い放つ。
母は無理やり娘を田に入れようとした。手を引っ張ったところ 娘は田に転がった。
母は「あれっ」と驚いて 田の中を探す。
娘はつぼ(たにし)に なってしまった。
(恵那市)