仙吉は下駄を突っかけて
こっそりと 裏口を出た
辺りの闇には
蛙の声が かまびすかった。
うつろ舟の回りの海には
無数の夜光虫が 発生していた。
仙吉は 素足になり
うつろ舟まで 近づいた。
仙吉は うつろ舟に 乗り込んだ。
女は仙吉の姿に驚いた。
目が合うと 言葉の違いは
苦にならなくなった。
お互い言葉がわからないので
空しく 時が過ぎた
居たたまれなく なる
若者は 立ち上がる
其の時 少し大きな浪が起こる
男は 立ち上がること かなわず
倒れるが 女と 触れ合うことに
若い二人に 言葉の違いなど・・・
時が経つ 互いに気づかなかった
朝には虚ろ舟は消えていた
千吉の下駄が 浜に残っていた