紳士・淑女の昔物語・・・逃げた女に未練は(その2)
女は老医師と同座して、恥ずかしがる素振りを見せず、永年連れ添った妻のように、打ち解けた様子である。
老医師は少しずつ変な気分になる。
「いずれにせよ。わしの存分になる女に違いはあるまい」
と思うと、歯も抜けた皺くちゃの顔が自然に笑み崩れる。
この老医師は永年連れ添った妻を亡くして3年になる。
今は妻がいない身がうれしくて仕方がない。
(女) 「どんなに恥ずかしいことにも、目をつぶります。先生、助けてください。」
(老医師) 「いったい、どうなさったのかな」
と問うと、女は袴を引き上げて見せる。
女の雪のような股がが少し腫れている。
老医師はその腫れ具合がどうも合点がゆかず、腰紐を解かせて、女の前をみると、
女の若草のお蔭で、よく見えない。
そこで、手で探ると、そこのあたりに腫瘍がある。
老医師は左右の手で若草を掻きわけると、命にかかわるできものがあった。
その日から、他人を寄せ付けず、自ら襷げけで、昼となく夜となく治療に専念した。
(次回へ続く)