運営委員長の岡野です。
これまで私たちの会では、スウェーデンが、第二次大戦以前から準備し戦後から最近にかけて一貫して、福祉国家さらには緑の福祉国家へと歩んできた歴史を学びながら、それを推進した思想が単なる看板ではなく本気の社会民主主義であることを確認してきました。
そして私個人としては、それと並行した日本の歴史を学びながら、日本にそれができなかった大きな理由の1つは――4象限理論からするとあくまで1つですが――戦前から戦後-今日に到るまで、日本では本格的な社会民主主義-社会民主主義政党が形成されなかったことではないか、と考えるようになりました。
そして、それが日本の不幸だ、という気がしています。
例えば、政権を得てから失うまでの民主党の政策・言動を観察していて、党全体として、ぶれることなく持続可能な国づくりに向かう方向付けとしての社会民主主義的な理念とビジョンが確立-共有されていないんだな、と感じてきました。
社民党は今では「社会民主党」と名乗っていますが、発言を聞いていると、スウェーデンさらにはヨーロッパの社会民主主義政党とは視点・路線が違っていて、社会党以来のマルクス主義的な階級対立路線を引きずっているようです。
(そういう状況に一石を投じるべく、前回の「政権交代」直後――タイミングが悪かったといえば悪かったのですが――私たちの会の「理念とビジョン」を民主党の衆参国会議員全員、社民党と自民党の「環境派」を名乗っている議員に送りました。結果は、民主党の議員2名から賛同の返事があっただけでした。)
そういう日本の近代-戦後史の流れを確認できるのではないかと予想して、正村公宏氏の『戦後史(上)(下)』(ちくま文庫)、『現代史』(筑摩書房)を読んでみました。
「なるほど、そういう流れだったんだな、やはりそうだったんだよなあ」と、きわめて本格的な専門家によって自分の考えの裏付けを得たという感じがしています。
もちろん事実に裏付けられた詳細な論述があるのですが、以下の文章に要点が語られていると思われます。
「『戦後』の初期のアメリカの日本占領政策の目標は日本の民主化と非軍事化であった。男女平等の普通選挙が制度化され、基本的人権の保障と主権在民が宣言された。新しい憲法は、自由民主主義(政治的民主主義)の憲法であると同時に社会民主主義(経済民主主義)の憲法でもあった。しかし『戦後』の日本の歴史の全体を通じて社会民主主義を強力に推進しようとする有力な政治勢力は形成されなかった。」(『現代史』472-3頁)
どちらも力作であり大著ですが、本気で持続可能な国づくりを考えたい関係者のみなさんには、時間を使って努力して読むに値する参考文献だと思いますので、お勧めするとともに、ぜひ知識と理解を共有することができればと願っています。(アマゾンへのリンクは私の個人ブログからどうぞ。)
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