・査読の見直しが完了.編集委員に添付メールで送付して一件落着.自らの英語の”センスのなさ”が,ちと気にかかるが,過去は振り返らないということで・・・.再び,「逃げるトドマツ」のメカニズムが気になる.今回の倒木上に定着したトドマツ実生の親子解析において,1-2年生の実生への散布距離と3年生以上の稚樹への散布距離の比較をすると,20m以下では1-2年生の実生の方が頻度が高いが,20m以上では3年生以上の実生の頻度が高くなるという興味深い結果が得られている.目下のところ,これが論文におけるトピックの一つになるだろうと考えて,その裏を取る作業を続けている.
・ところで,このような現象を説明するには,個体特異的な死亡(すなわち,A個体の樹冠下では,個体特異的な菌害が発生するなどして,母樹Aの実生が他個体の実生よりも死亡しやすい,という条件を満たす必要がある,と思い込んでいたのだが,それは”早とちり”だったことに(Tさんとの雑談の中で)気がついた.つまり,個体特異的ではなく,種特異的な死亡だとしても,もともと距離分布が近い距離に集中している場合には,ステージが上がるにつれて種子散布距離が伸びることがありうる,のではないかということである.
・ここで簡単な思考実験をしてみる.30m離れた距離にAとBという成木があったとしよう.それぞれの樹冠下は死亡しやすく,中間地点(セーフサイト)では全ての実生が生存するとして,Aの樹冠下にはAの実生が8個体,Bの実生が2個体散布され,Bの樹冠下にはその逆,中間にはそれぞれ3個体の実生が散布されたとする.
・ここで,もし種特異的な死亡要因があり(仮説1),樹冠下では母樹にかかわらず,半分の実生が死亡するとすると,Aの樹冠下ではAの実生が4個体,Bの実生が1個体になる(Bの樹冠下ではその逆).中間地点はセーフなので,全部,生存している.今度は,個体特異的な死亡要因がある場合を考える(仮説2).この場合,Aの樹冠下ではAの実生はやはり半分死亡するが,Bの実生は2個体ともに生存する(Bの樹冠下はその逆).むろん,中間地点は全て生存している.

・このようなケースを想定し,散布直後とある一定期間が経過した後(仮説1と仮説2)の距離分布を比較してみると,仮説1と仮説2のどちらのケースでも,10m以下では散布前の方が頻度が高いが,10m-20mでは定着後の方が頻度が高いという現象が起こりえるのである(ただし,仮説2では長距離成分の増加が際立つ).つまり,もともと樹冠下に”ぽたり”と落ちている実生の数が多い場合,単に種特異的な死亡でその樹冠下から逃れる効果でも,このような距離分布のモードの変化として検出されるわけである.
・実際の森林で何が起きているかを知るには,結局のところ,足繁く現場に通って,死亡要因を特定するしかないわけだが,樹冠近くでの種特異的な死亡ということになれば,虫害,菌害の両方が考えられるために,可能性の幅が広がりそうである.やはり,鳴子のYさんから紹介していただいた貴重な文献を早速読みこんでいく必要がある.
・ところで,このような現象を説明するには,個体特異的な死亡(すなわち,A個体の樹冠下では,個体特異的な菌害が発生するなどして,母樹Aの実生が他個体の実生よりも死亡しやすい,という条件を満たす必要がある,と思い込んでいたのだが,それは”早とちり”だったことに(Tさんとの雑談の中で)気がついた.つまり,個体特異的ではなく,種特異的な死亡だとしても,もともと距離分布が近い距離に集中している場合には,ステージが上がるにつれて種子散布距離が伸びることがありうる,のではないかということである.
・ここで簡単な思考実験をしてみる.30m離れた距離にAとBという成木があったとしよう.それぞれの樹冠下は死亡しやすく,中間地点(セーフサイト)では全ての実生が生存するとして,Aの樹冠下にはAの実生が8個体,Bの実生が2個体散布され,Bの樹冠下にはその逆,中間にはそれぞれ3個体の実生が散布されたとする.
・ここで,もし種特異的な死亡要因があり(仮説1),樹冠下では母樹にかかわらず,半分の実生が死亡するとすると,Aの樹冠下ではAの実生が4個体,Bの実生が1個体になる(Bの樹冠下ではその逆).中間地点はセーフなので,全部,生存している.今度は,個体特異的な死亡要因がある場合を考える(仮説2).この場合,Aの樹冠下ではAの実生はやはり半分死亡するが,Bの実生は2個体ともに生存する(Bの樹冠下はその逆).むろん,中間地点は全て生存している.

・このようなケースを想定し,散布直後とある一定期間が経過した後(仮説1と仮説2)の距離分布を比較してみると,仮説1と仮説2のどちらのケースでも,10m以下では散布前の方が頻度が高いが,10m-20mでは定着後の方が頻度が高いという現象が起こりえるのである(ただし,仮説2では長距離成分の増加が際立つ).つまり,もともと樹冠下に”ぽたり”と落ちている実生の数が多い場合,単に種特異的な死亡でその樹冠下から逃れる効果でも,このような距離分布のモードの変化として検出されるわけである.
・実際の森林で何が起きているかを知るには,結局のところ,足繁く現場に通って,死亡要因を特定するしかないわけだが,樹冠近くでの種特異的な死亡ということになれば,虫害,菌害の両方が考えられるために,可能性の幅が広がりそうである.やはり,鳴子のYさんから紹介していただいた貴重な文献を早速読みこんでいく必要がある.