ヨセフ物語 創世記37-50章
創世記は天地創造に始まり、ヨセフ物語(全446節)で終わる。聖書中、最も文学的に高い統一性を持ったこの物語は、世界的な文学遺産と賞賛されてきた。
「人類の文学史上で最も価値あり芸術の極致。」(ヴォルテール)
「旧約聖書の人物伝の中で最も芸術的かつ最も魅力的」(ジョン・スキナー)
ヨセフの資質
ヨセフが兄たちに恨まれた理由は、彼の性格の故ではなく、ヤコブの偏愛による。彼は苦労知らずの天真爛漫な人だったが、人を疑うとか、打算で動くとか、人の言いつけを守らないとかという我侭さはなかった。ヤコブからヘブロンの谷からシケムに送り出された時も、彼は約60キロの行程を探し続け、そこから更に10キロ離れたドタンで兄たちと会う。ヨセフは父の言いつけに従う忠実さを持っていた。(ルベンはそのことを知っていたからこそ良心の呵責に悩む)また、彼は獄に入れられた理不尽さについて一切弁解しておらず、獄に共に入れられていた給仕と料理長に「どうして今日は憂鬱な顔をしているのですか」と問いかけている。自己中心な人間からこのような言葉は出てこない。
ヨセフの夢 (37:7,9,40:8-19,41:1-26)
神はヤコブには語りかけるが(47:2-4)、ヨセフには語りかけることも、御使いが現れることも、ヨセフが神に祈る記述さえもない。しかし、神はヨセフに夢を通して預言され、夢によってヨセフを導かれる。彼は夢によってエジプトに売られ、牢獄から出ることが出来、エジプトの宰相となった。
ヨセフの信仰
主がヨセフと共におられた。(39:2,21,23)
ヨセフはどのような逆境の中にあっても、神の御手の中にあった。アブラハムの試練は13年(14:4)、ヨセフも13年の試練。しかし、ヨセフは牢獄に入れられても、彼は自分のいる場所で最善を尽くした。ヨセフの願いは、牢獄から出ることだったが、神の計画はもっとその先にあった。それは、ヨセフがエジプトの宰相との大臣となり、世界を飢饉から救う器として役目を担うこと。もし、この時に監獄から出ていたら、ファラオの夢を解き明かすチャンスが与えられなかった。ヨセフはファラオの前で毅然とした態度で、夢の解き明かしをした。彼は自分を誇示することなく、神に栄光を帰している。世界を支配しているのは主であり、ファラオでないという確信である。このヨセフの背後にある神の知恵と権威にファラオは驚かされ、ヨセフをエジプトのNo2の地位に就ける。ツァフェナト・パネアという名は、「秘密を解き明かす人」、ヘブル語で「世を救う人」という意味である。
裁きと赦し
わたしは神を畏れる者だ。お前たちが本当に正直な人間だというのなら、兄弟のうち一人だけを牢獄に監禁するから、ほかの者は皆、飢えているお前たちの家族のために穀物を持って帰り、末の弟をここへ連れて来い。(2:18-20)
このヨセフの言葉に、自己義認と信仰義認の対比がされている。ヨセフの兄弟たちに対する言動は、彼らに罪を自覚させ、その罪を悔い改めに導くためであった。シメオンが彼らの前で縛りあげられたことは、ヤコブと兄弟たちの愛の一致を固くした。それは、彼らが全面的に救われるために必要だった。シメオンが縛られた後、ヨセフは何度も涙を流す。(42:24,43:30,45:2,45:14-15,50:17) 特に、43:30の「懐かしさ」という言葉は、この箇所とホセア書の2回のみ用いられている言葉で、神のイスラエルに対する熱い思いが重なる。兄弟たちに対するヨセフの仕打ちは、彼らを裁くためではなく、赦すために行なわれた。この物語のテーマは、売られた者が、売った者を救うという、神の愛の摂理である。裁きなくして赦しはなく、赦しがあるからこそ、裁きがあるのである。
ヤコブの試練
ヨセフはヤコブの愛妻ラケルが残した忘れ形見。ヤコブはヨセフを見るたびに、ラケルのことを思い出した。ヨセフをヤコブは溺愛し、自分の手の中にヨセフを握りしめていた。ヤコブが神の祝福をヨセフに受け継がせる為には、一つ神に対する大きな課題があった。それは、アブラハムがイサクをささげ、イサクがヤコブをアラムの地に送り出して、我が子を手から離したように、ヤコブも一度ヨセフを自分の手から離さなければならなかった。ヤコブは子供たちを失うことを恐れるあまり、神の計画が理解できず頑なに拒否する。(42:38) 神が一人子イエスを、十字架上で一度喪失したように。ヤコブは「押しのける者」から、イスラエル「神に勝たれる者」者に変わる必要があった。神は自分の愛するもの(偶像)を自分の手に握りしめている内は、神はその人を祝福することができない。しかし、手放した後はその何倍もの祝福を下さるのである。
神の計画と人の思い
私はあなたたちがエジプトへ売った弟のヨセフです。しかし、今は、私をここへ売ったことを悔やんだり、責め合ったりする必要はありません。命を救うために、神が私をあなたたちより先にお遣わしになったのです。この二年の間、世界中に飢饉が襲っていますが、まだこれから五年間は、耕すこともなく、収穫もないでしょう。神が私をあなたたちより先にお遣わしになったのは、この国にあなたたちの残りの者を与え、あなたたちを生き永らえさせて、大いなる救いに至らせるためです。私をここへ遣わしたのは、あなたたちではなく、神です。神が私をファラオの顧問、宮廷全体の主、エジプト全国を治める者としてくださったのです。(45:4-8)
恐れることはありません。わたしが神に代わることができましょうか。あなたがたはわたしに悪をたくらみましたが、神はそれを善に変え、多くの民の命を救うために、今日のようにしてくださったのです。(50:19-20)
ヨセフがエジプトに売られた目的は、大きく二つある。一つは数年後に起こる世界的な飢饉から、この世の人々とイスラエルを救うため。もう一つは、メシア降誕の土台となる、イスラエルの家族関係の回復のためである。その目的遂行のため、神はヨセフという人物に目を付け、彼を神の器、一国の宰相としての資質を身に付けさせるべく、徹底的に訓練する。ヤコブも11人の兄弟たちも、ファラオも、その神の目的のために用いられているのである。しかし、人は神の計画が成就するまで、その過程において、神の計画の真意を知ることはできない。神は、人間の悪と計らいを越え、それさえ用いて働かれるのである。
私たちが、このヨセフ物語で学ぶべきことは、決して目の前の現状に囚われることなく、絶えず愛と、正義と、希望の神に信頼し、自分の思いではなく、神の思いを、自分の内に実現させてください。と、祈り続けることである。
主はこの地に飢饉を呼び、パンの備えをことごとく絶やされたが、あらかじめひとりの人を遣わしておかれた。奴隷として売られたヨセフ。主は、人々が彼を卑しめて足枷をはめ、首に鉄の枷をはめることを許された。主の仰せが彼を火で練り清め、御言葉が実現するときまで。王は人を遣わして彼を解き放った。諸国を支配する王が彼を自由の身にし、彼を王宮の頭に取り立て、財産をすべて管理させた。彼は大臣たちを思いのままに戒め、長老たちに知恵を授けた。イスラエルはエジプトに下り、ヤコブはハムの地に宿った。(詩篇105:16-23)
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創世記は天地創造に始まり、ヨセフ物語(全446節)で終わる。聖書中、最も文学的に高い統一性を持ったこの物語は、世界的な文学遺産と賞賛されてきた。
「人類の文学史上で最も価値あり芸術の極致。」(ヴォルテール)
「旧約聖書の人物伝の中で最も芸術的かつ最も魅力的」(ジョン・スキナー)
ヨセフの資質
ヨセフが兄たちに恨まれた理由は、彼の性格の故ではなく、ヤコブの偏愛による。彼は苦労知らずの天真爛漫な人だったが、人を疑うとか、打算で動くとか、人の言いつけを守らないとかという我侭さはなかった。ヤコブからヘブロンの谷からシケムに送り出された時も、彼は約60キロの行程を探し続け、そこから更に10キロ離れたドタンで兄たちと会う。ヨセフは父の言いつけに従う忠実さを持っていた。(ルベンはそのことを知っていたからこそ良心の呵責に悩む)また、彼は獄に入れられた理不尽さについて一切弁解しておらず、獄に共に入れられていた給仕と料理長に「どうして今日は憂鬱な顔をしているのですか」と問いかけている。自己中心な人間からこのような言葉は出てこない。
ヨセフの夢 (37:7,9,40:8-19,41:1-26)
神はヤコブには語りかけるが(47:2-4)、ヨセフには語りかけることも、御使いが現れることも、ヨセフが神に祈る記述さえもない。しかし、神はヨセフに夢を通して預言され、夢によってヨセフを導かれる。彼は夢によってエジプトに売られ、牢獄から出ることが出来、エジプトの宰相となった。
ヨセフの信仰
主がヨセフと共におられた。(39:2,21,23)
ヨセフはどのような逆境の中にあっても、神の御手の中にあった。アブラハムの試練は13年(14:4)、ヨセフも13年の試練。しかし、ヨセフは牢獄に入れられても、彼は自分のいる場所で最善を尽くした。ヨセフの願いは、牢獄から出ることだったが、神の計画はもっとその先にあった。それは、ヨセフがエジプトの宰相との大臣となり、世界を飢饉から救う器として役目を担うこと。もし、この時に監獄から出ていたら、ファラオの夢を解き明かすチャンスが与えられなかった。ヨセフはファラオの前で毅然とした態度で、夢の解き明かしをした。彼は自分を誇示することなく、神に栄光を帰している。世界を支配しているのは主であり、ファラオでないという確信である。このヨセフの背後にある神の知恵と権威にファラオは驚かされ、ヨセフをエジプトのNo2の地位に就ける。ツァフェナト・パネアという名は、「秘密を解き明かす人」、ヘブル語で「世を救う人」という意味である。
裁きと赦し
わたしは神を畏れる者だ。お前たちが本当に正直な人間だというのなら、兄弟のうち一人だけを牢獄に監禁するから、ほかの者は皆、飢えているお前たちの家族のために穀物を持って帰り、末の弟をここへ連れて来い。(2:18-20)
このヨセフの言葉に、自己義認と信仰義認の対比がされている。ヨセフの兄弟たちに対する言動は、彼らに罪を自覚させ、その罪を悔い改めに導くためであった。シメオンが彼らの前で縛りあげられたことは、ヤコブと兄弟たちの愛の一致を固くした。それは、彼らが全面的に救われるために必要だった。シメオンが縛られた後、ヨセフは何度も涙を流す。(42:24,43:30,45:2,45:14-15,50:17) 特に、43:30の「懐かしさ」という言葉は、この箇所とホセア書の2回のみ用いられている言葉で、神のイスラエルに対する熱い思いが重なる。兄弟たちに対するヨセフの仕打ちは、彼らを裁くためではなく、赦すために行なわれた。この物語のテーマは、売られた者が、売った者を救うという、神の愛の摂理である。裁きなくして赦しはなく、赦しがあるからこそ、裁きがあるのである。
ヤコブの試練
ヨセフはヤコブの愛妻ラケルが残した忘れ形見。ヤコブはヨセフを見るたびに、ラケルのことを思い出した。ヨセフをヤコブは溺愛し、自分の手の中にヨセフを握りしめていた。ヤコブが神の祝福をヨセフに受け継がせる為には、一つ神に対する大きな課題があった。それは、アブラハムがイサクをささげ、イサクがヤコブをアラムの地に送り出して、我が子を手から離したように、ヤコブも一度ヨセフを自分の手から離さなければならなかった。ヤコブは子供たちを失うことを恐れるあまり、神の計画が理解できず頑なに拒否する。(42:38) 神が一人子イエスを、十字架上で一度喪失したように。ヤコブは「押しのける者」から、イスラエル「神に勝たれる者」者に変わる必要があった。神は自分の愛するもの(偶像)を自分の手に握りしめている内は、神はその人を祝福することができない。しかし、手放した後はその何倍もの祝福を下さるのである。
神の計画と人の思い
私はあなたたちがエジプトへ売った弟のヨセフです。しかし、今は、私をここへ売ったことを悔やんだり、責め合ったりする必要はありません。命を救うために、神が私をあなたたちより先にお遣わしになったのです。この二年の間、世界中に飢饉が襲っていますが、まだこれから五年間は、耕すこともなく、収穫もないでしょう。神が私をあなたたちより先にお遣わしになったのは、この国にあなたたちの残りの者を与え、あなたたちを生き永らえさせて、大いなる救いに至らせるためです。私をここへ遣わしたのは、あなたたちではなく、神です。神が私をファラオの顧問、宮廷全体の主、エジプト全国を治める者としてくださったのです。(45:4-8)
恐れることはありません。わたしが神に代わることができましょうか。あなたがたはわたしに悪をたくらみましたが、神はそれを善に変え、多くの民の命を救うために、今日のようにしてくださったのです。(50:19-20)
ヨセフがエジプトに売られた目的は、大きく二つある。一つは数年後に起こる世界的な飢饉から、この世の人々とイスラエルを救うため。もう一つは、メシア降誕の土台となる、イスラエルの家族関係の回復のためである。その目的遂行のため、神はヨセフという人物に目を付け、彼を神の器、一国の宰相としての資質を身に付けさせるべく、徹底的に訓練する。ヤコブも11人の兄弟たちも、ファラオも、その神の目的のために用いられているのである。しかし、人は神の計画が成就するまで、その過程において、神の計画の真意を知ることはできない。神は、人間の悪と計らいを越え、それさえ用いて働かれるのである。
私たちが、このヨセフ物語で学ぶべきことは、決して目の前の現状に囚われることなく、絶えず愛と、正義と、希望の神に信頼し、自分の思いではなく、神の思いを、自分の内に実現させてください。と、祈り続けることである。
主はこの地に飢饉を呼び、パンの備えをことごとく絶やされたが、あらかじめひとりの人を遣わしておかれた。奴隷として売られたヨセフ。主は、人々が彼を卑しめて足枷をはめ、首に鉄の枷をはめることを許された。主の仰せが彼を火で練り清め、御言葉が実現するときまで。王は人を遣わして彼を解き放った。諸国を支配する王が彼を自由の身にし、彼を王宮の頭に取り立て、財産をすべて管理させた。彼は大臣たちを思いのままに戒め、長老たちに知恵を授けた。イスラエルはエジプトに下り、ヤコブはハムの地に宿った。(詩篇105:16-23)
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