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安倍晋三の「平和に貢献」は日本を経済大国で終わらせず、軍事大国の顔まで持たせたるめの目くらまし

2014-05-08 09:20:34 | Weblog

 

 ヨーロッパ各国を歴訪中の安倍晋三が5月6日(2014年)午前(日本時間同日午後)、訪問中のパリでスロベニアのブラトゥシェク首相と会談、自らが掲げる 「積極的平和主義」に基づき、国際社会の平和と安定の確保のため積極的に貢献していく考えを伝えたと、5月6日付の「NHK NEWS WEB」記事が伝えていた。

 そして同日午後(日本時間6日夜)最後の訪問国ベルギーを訪れて、NATO理事会に出席、そこでの演説でも、「世界の平和と繁栄に強くコミットしてまいります」と発言している。

 一方で安倍晋三は訪問国あちこちで、法の支配の重要性を訴えている。法の支配は平和と繁栄の礎となる。

 国際社会の平和と安定の確保のための積極的な貢献と法の支配の重要性を言うなら、今年の6月で25年となる天安門事件で家族を亡くした遺族や民主化運動関係者が集会を開いて事件の真相究明や犠牲者への賠償を訴えたところ、公安当局に相次いで拘束されたということだが、平和とは単に戦争をしていない状態を言うのではなく、法の支配と基本的人権の保障のもと、各国それぞれの国民が人間らしく生きる様子をも平和と言うのだから、中国に対してその権状況を改めるように声を上げるべきだが、そのような平和には無関心を示している。

 国民の平和ではない状況を無視して国が戦争をしていないことの平和の確立に努めることが、あるいは戦争をしないことの平和の確立に努めることが 「積極的平和主義」だとするなら、国民あっての国家でありながら、国民を置き去りにして国家のみを問題にすることになり、単なる形式主義の「積極的平和主義」に堕すことになる。

 NATO本部での演説では、国際社会の平和と安定の確保への積極的な貢献と同時に「人間の安全保障」に基づいた女性の地位や権利、能力の向上に言及している。

 発言の前後を変えて、先ず女性の地位や権利、能力の向上について。

 安倍晋三「日本は、『人間の安全保障』の理念を重要視しています。

 アジア諸国を始め、途上国の女性の能力向上や母子保健、女性の権利の保護・促進等の分野で、地に足のついた支援を実施しています。21世紀の今日に於いても、武力紛争に於いて多くの女性が心身にわたり癒やしがたい傷を負ってしまう事態が後を絶たないことは実に痛ましいことです」――

 中国のみならず北朝鮮の女性だけではない、男性を加えた多くの国民が強制されている権状況や、あるいはイスラム国家に於ける女性の制限された地位が何らかの差別や抑圧の形を取ったとしても何も声を上げずに「人間の安全保障」を言うことができるのは、女性の地位や権利、能力に関わる自らの思想が体裁上のもので、ホンモノとはなっていないことの証拠以外の何ものでもない。

 安倍晋三「カンボジア、ゴラン高原、ハイチ、そして南スーダン。さらには、インド洋でのテロとの闘い、イラクにおける復興支援。世界中で、冷戦終結後、5万人もの自衛隊員が、平和のために身を尽くしてきました。

 国連PKOには、米国に次ぐ11%の財政負担を行っています。190の国と地域に、総額3000億ドル以上のODAを実施してきまし た。日本のODAは、今年で60周年。振り返れば、戦後貧しい頃から、アジアの友人をはじめ、世界に支援の手を差し伸べてきました。

 そのような、揺るぎない平和国家としての歩みを礎に、日本はこれまで以上に、世界の平和と繁栄に強くコミットしてまいります。空の自由、海の自由といった『国際公共財』を守り抜くため、より積極的な役割を果たさなければならない、と考えています」――

 そして次のような発言もしている。

 安倍晋三「日本は、NATOの『必然のパートナー』である。ラスムセン事務総長は、このようにおっしゃいました。私も、心から賛同します」――

 以上の発言は集団的自衛権の行使を既定事実とした上での発言であるはずである。

 このことは憲法解釈変更の閣議決定に先立って策定する「政府方針」に自衛隊活動の地理的制約は盛り込まない方向としていることと対応し合っている。

 安倍晋三は自衛隊の活動をPKO活動から本格的な軍事活動に格上げし、その活動範囲を世界に広げようと欲求している。このことを可能とする主たる手段が自衛隊活動の地理的制約を無制限とする集団的自衛権の行使であって、前後相呼応し合った措置であるはずである。

 この事の象徴的は証明として、憲法9条が禁じる「他国による武力行使との一体化」に当たるとして従来制限されてきた国連決議に基づく多国籍軍への自衛隊支援活動を拡大する本格検討に入ったと伝えている記事、《多国籍軍支援の拡大検討、政府》福島民報/2014/05/07 20:30)を挙げることができる。

 記事は、〈集団的自衛権とは別の新たな憲法解釈見直しにつながる可能性があリ〉、〈自衛隊の海外活動に歯止めが効かなくなる懸念が強まるのは必至。政府、与党調整で論議を呼びそうだ。〉と解説している。

 ここで問題となるのはかつて戦前の日本によって侵略を受けたアジア各国が抱いている日本の軍事大国化への懸念である。その懸念を払拭するために「国際社会の平和と安定の確保のための積極的な貢献」、あるいは「積極的平和主義」という繰返しのフェレーズが必要となる。

 当然、安倍晋三はアジア各国の懸念払拭を期待してこれらのフレーズを使っていることになる。

 もしそうでなければ、既に触れたように、平和とは単に戦争をしていない状態を言うのではなく、法の支配と基本的人権の保障のもと、人間らしく生きる様子をも平和と言うのだから、国民あっての国家という手前からも、あるいはNATO本部で演説したように「人間の安全保障」の観点からも、権国家の国民の権状況に厳しく対応すべきだが、見るべき対応を示していないのだから、安倍晋三は自衛隊の活動範囲を無制限に広げて日本の軍事的プレゼンスを世界中に拡大・確立しようとする一方、そのことによる周辺国の日本の軍事大国化懸念の払拭のために「平和」という言葉を用いているとしか見ることはできない。

 ウソも100回言うと、そのウソを信じて事実と見せかけることができるようになるのと同じである。

 安倍晋三が戦前の偉大な大日本帝国への復古――戦前の日本を取戻したい願望を持つ国家主義者であることから考えると、日本を経済大国で終わらせず、軍事大国の顔まで持たせたいと願っているはずであり、願いが叶って戦前の日本につながっていくのだから、軍事大国の顔を目くらませる「平和」の言葉となっていると見るべきである。

 先進国としての責任を果たすために集団的自衛権を必要としても、国民主権の手前憲法改正の手続きを踏むべきだが、軍事大国になる必要まではない。

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