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《生活の党機関紙第13号(5月1日付) 》
【内容】
9人の生活の党議員の思いが官僚の壁を乗り越え被災地の復興を前進
達増拓也岩手県知事党本部を来訪
第186回国会活動報告。
元静岡大学教授・税理士 湖東京至、鈴木克昌代表代行・幹事長、第85回メーデー挨拶等
安倍晋三が4月29日(2014年)昼、ドイツを最初の国とするヨーロッパ6カ国訪問に出るために政府専用機で羽田空港を飛び発った。安倍晋三お得意の訪問外交である。記者会見等、発言の機会があるたびに何カ国訪問した、首脳会談を何回したと誇る程にも安倍晋三、お得意の訪問外交となっている。
回数がスラッと口から出てくるのだから、しっかりと頭に記憶しているに違いないが、その記憶は首相執務室か私宅書斎の黒板か何かの常に目に入る場所に訪問国と何カ国目かを書いて置いて、いつでも間違いなく口にすることができるように準備している成果の賜物に思えて仕方がない。
いずれにしても安倍晋三は自身の外交上の存在感をアピールする道具立て、あるいは装置として何カ国訪問した、首脳会談を何回したといった数字的積み重ねに拘っていることは間違いない。だから、時間があると、海外に足を伸ばす。
昨年(2013年)は確か「地球儀を俯瞰する外交だ」と称して、25カ国を訪問したそうだ。そして今年2014年に入って1月早々の7日、訪日のエルドアン・トルコ首相と首脳会談を行っている。
これも外国首脳と会談した回数の内に指折り数えているはずで、そして1月9日から15日までの7日間の日程で中東のオマーンとコートジボワール、モザンビーク、エチオピアのアフリカ3か国、合計4カ国を訪問し、1月末にはインドを訪問、2月にはソチでプーチンと会談等々、既に30回を超えているはずで、今年末には昨年の25回から計算すると、50回を優に超えて、60回近い数字か、あるいは60回を超えた数字を順次頭に入れていくことになるに違いない。
安倍晋三は今回の欧州6カ国訪問に先立ち、羽田空港で記者団に発言している。
安倍晋三「欧州は世界における世論形成に大きな影響力があり、欧州との関係を強化し、日本の発信力を強化したい」(時事ドットコム)――
「日本の発信力を強化したい」云々――
発信力強化を自らの実績として目的とするなら、それは訪問国数や首脳会談数で決まるわけではないことは承知していなければならないはずだが、これらの回数を自らの実績としてアピールしている自身の矛盾には気づかないようだ。
ドイツの有力紙が書面で遣り取りした安倍晋三に対するインタビュー記事を4月29日に報じ、それを同じ4月29日に、《首相 独紙で「原発簡単にやめられない」》(NHK NEWS WEB/2014年4 月29日 22 時32分)が報じている。
先ず、ドイツが全廃を決めた原子力発電所について、双方を取り巻く環境の違いを指摘し「日本は島国で隣国からの電力の輸入が難しく、豊富な石炭に恵まれるドイツと状況が異なる。そう簡単に『原発はもうやめた』と言うわけにはいかない」と述べたという。
ドイツの豊富な石炭に代わる日本の豊富な太陽光、風力、波力等々の再生可能エネルギーという発想はないらしい。勿論、後者は電気料金という形でコストが高くつく。だが、後者が地球温暖化防止にかけなければならない膨大なコストや地球温暖化による高潮浸水被害を受けているマリアナ諸島やカロリン諸島、マーシャル諸島等の太平洋諸島の高潮浸水被害に対して支払っている日本の高額な援助を、例え少額ずつではあっても、順次差し引いていくと考えた場合、あるいは原発が事故を起こさなくても、常に万が一のシビアアクシデント発生を想定して住民避難のために費やさねければならないカネと時間を省くことになると考えた場合、差し引きしたコストはかなり減額され、そこに安心というプラスアルファを加えることができる。
安倍晋三は企業に負担を強いる電気料金だけで電力供給を考えているとしたら、電力に関わる発信力は大したことはないと看做さざるを得ない。
次に、「日本とドイツの中小企業の橋渡しをしたい」と述べて、高い技術力を持つ日独双方の中小企業が提携するなど、両国の経済分野での関係強化に意欲を示したという。
成功したなら、日本の中小企業の技術力に関わる発信力は海外に広がることになるが、安倍晋三は単に仲立ち役を果たすだけのことで、政治家として持つ外交上の発信力が高まるわけではない。
“発信力がある”とは、言葉を単に発することではなく、発した言葉の内容が見るべき事柄を成す力を持っていて、実際に成して初めてその存在が証明される力のことを言うはずだ。
記事は最後に中国、韓国との関係についての安倍晋三の考えを伝えている。
安倍晋三「困難な課題もあるが、課題があるからこそ、前提条件を付すことなく、率直に話し合うべきだ」――
この最後の発言は安倍晋三の常套句となっている。
2013年6月、安倍晋三はイギリス・北アイルランドのロックアーンで開催の2013年6月17・18日G8サミット出席後、6月19日、イギリス・ロンドンで講演している。
安倍晋三「(中国との関係について)何か問題があったとしても話し合いを続けていけることが大切だ。私は常に対話のドアは開いているし、習近平主席といつでも首脳会談をする用意はある」(NHK NEWS WEB)――
言っている趣旨は全く同じである。
安倍晋三は日本時間の2013年9月27日未明、国連総会に出席、一般討論演説を行っている。
安倍晋三「戦略的互恵関係の原点に立ち戻って日中関係を発展させていきたい。何か問題があるからと言って対話のドアをすべて閉じてしまうのではなく、課題があるからこそ、首脳レベルも含めて話し合うべきだ。私の対話のドアは常にオープンであり、中国側にも同様の姿勢を期待したい」(NHK NEWS WEB)――
これ以外にも同じ趣旨の発言を繰返している。
だが、すべての発言が相手に対する話し合うことの要請と自身は常にその用意があると伝えるだけのことで終わっている。勿論、外務当局や首相補佐官を派遣して首脳会談の働きかけを行っているようだが、実現させることができないでいる。
この経緯は安倍晋三自身の言葉の発信力の脆弱性を証明しているはずだ。日中、あるいは日韓にしても同じだが、首脳会談開催実現を成すだけの言葉の力を持ち得ていない。単に言うだけで終わっているからだ。
終わっているから、同じ趣旨の発言を繰返すことになる。
この安倍晋三の発信力の脆弱性は中国の海洋進出の動きにに対しての「力による現状変更の試みは許されない」とする発言や、普遍的価値観を訴える発言にも見ることができる。既に耳にタコができる程にも聞き飽きた常套句となっているが、常套句で終わっていることが既に発信力の脆弱性を物語っていることになるのだが、今回のヨーロッパ6カ国訪問の最初の訪問国ドイツでの日独首脳会談でも、同じ言葉を発信している。
安倍晋三「力による現状変更の試みは許されず、国際秩序や法の支配が尊重されるべきだ」(MSN産経)――
4月4日(2014年)の訪日したオバマ大統領との首脳会談でも発言している。
安倍晋三「力による現状変更の試みを継続しており、強固な日米同盟とアメリカのアジアへの強いコミットメントを示すことが重要だ」(NHK NEWS WEB)――
アメリカの軍事力に頼った対中国忌避感であって、自身の発信力に頼った対中関係改善の模索とはなっていない。そのような模索ではないから、単に中国の悪口を言い振らすために外国を繰返し訪問しているだけのことになる。
これでは発信力以前の問題となる。
「国際秩序や法の支配が尊重されるべきだ」と言っているが、これはかねてから常套句としている価値観外交の一節に過ぎない。
2012年12月26日に2度めの首相に就任してから、翌2013年1月28日の第183回国会所信表明演説。
安倍晋三「外交は単に周辺諸国との二国間関係だけを見つめるのではなく、地球儀を眺めるように世界全体を俯瞰して、自由、民主主義、基本的人権、法の支配といった基本的価値に立脚し、戦略的な外交を展開していくのが基本であります」(首相官邸HP)――
民主義国家として当然の立脚点だが、求められていることは「自由、民主主義、基本的人権、法の支配といった基本的価値」を共有していない中国や北朝鮮に対して自身の立脚点と同じ土俵に立たせることであって、自分だけが立脚すればいいわけではなく、また元々共有している各国首脳と共有を確認し合うだけでは誰にもできることであって、あくまでも共有していない国家体制に共有へと少しでも近づけさせ得て初めて自らの言葉が発信力を持つことになる。
だが、共有する各国を誰もが入館を拒まれることはない公共施設を訪れるように拒まれることなく訪問しては、そこに存在しない中国相手に遠くからお互いが共有している価値を確認し合うのみで終わっている。
お互いが好きな歌が一致していて、では、その歌を歌いましょうと一緒に歌って、心地よさを感じ合うようにである。
安倍晋三は同じ言葉を繰返すことを得意としていて、外国訪問の際に繰返す機会を得て、相手からも受入れられて心地よさを感じては自らの外交能力の高さを誇るかもしれないが、相手としては共有している手前当然のことであって、繰返すだけで中国との間に生じている事態が何ら変化がないということは、変化がないどころか、少しずつ悪化しているということは、言葉の発信力に見るべき効果を持たないことの証明としかならない。
安倍晋三は日本の中小企業の技術の発信力を海外に広めることよりも先ずは自身の外交上の発信力に磨きをかけ、その強化に努めるべきだろう。期待はできないが。