安倍晋三のお友達プーチンの領土的野心が形を取った巧妙・狡猾なウクライナ現代版トロイアの木馬

2014-05-11 07:31:34 | Weblog

 

 トロイア戦争とは、大方ご存知ではあると思うが、「Weblio辞書」 に、〈ホメロスの叙事詩「イリアス」に描かれている戦争。古代ギリシアの半ば伝説的戦争。トロイアの王子に誘拐されたスパルタの王妃ヘレネを奪還するため、アガメムノンの率いるギリシア軍が包囲10年目に大きな木馬に兵を潜ませてトロイアに潜入し、これを陥落させたという。トロイア(Troia)は小アジアの北西部、トルコのヒッサルリクに位置し、トロイ、トロヤともい 。〉と解説している。

 題名の一部に「トロイアの木馬」との文字を配せば、プーチンの企みが自ずと明らかになるはずである。

 先ずクリミア自治共和国住民による3月16日のロシアへの編入の是非を問う住民投票が実施され、90%以上の賛成可決と、それを受けてプーチンが翌3月17日、クリミア自治共和国を独 国として承認する大統領令に署名、翌3月18日にはクリミアをロシアに編入する条約に署名して、プーチン・ロシアはクリミアを手に入れた。

 クリミアのロシア系は約60%。そこへ3月18日の投票前からロシアの伝統的な軍事社会集団「コサック」のメンバーが親ロシア派とその武装勢力を応援するために続々とクリミ ア入りしたという。

 いわばコサックはプーチンによってクリミアに送り込まれたトロイアの木馬の兵士たちに当たる。巨大な木馬を造る手間を省き、直接送り込んで、内部から侵食してロシア化という征服を果たし、最終的にクリミア全体をロシアの現代版トロイアの木馬とした。

 クリミア併合後も、ロシア系住民の多いウクライナ東部で親ロシア派がクリミアに習って、「国家としての自立」を問う住民投票の5月11日決行を目指している中、コサックたちは今度はその東部目指して続々と越境していったという。

 親ロシア派が5月6日にネット上に公開した映像では、ロシアの旗を掲げたトラックにコサックの男たちが分乗し、市民に拍手で迎えられている様子が紹介されていたと、「NHK NEWS WEB」が伝えていた。

 現代のトロイアの木馬はトラックとなった。しかも幌をつけて内部を隠すことなどはせずに、堂々と姿を曝して他国に侵入していく。

 コサックたちが武器を取り、顔に覆面して親ロシア派武装勢力に早変わりしない保証はない。プーチンが直接命令を下さずとも、送り込みさえすれば、プーチンのウクライナ東部ロシア化の意を体して動くことになる。

 プーチンは5月7日、ウクライナ東部の親ロシア派に対して、「連邦制の導入を求めるウクライナ東部の代表らに対し、5月11日に予定されている住民投票を延期するよう要請する」(NHK NEWS WEB)と呼びかけた。

 連邦制の成就が独立成就へと向かい、ロシア編入へと向かう流れとなることはプーチンの4月の支持率が82%にのぼったことからも分かるように領土拡張を以って大国意識を満足させるロシア国民の意識と相互反映し合っているプーチンの旧ソ連時代が体現していた大国主義への回帰願望がそのように仕向けずには置かないだろうからである。

 このことはプーチンのクリミア訪問が証明することになる。

 だが、プーチンは一時的ではあっても、住民投票延期要請によってウクライナ東部のロシア化への流れを止めようとした。これはアメリカとEUの制裁がボディブローのようにジワジワと効いてきているところへ、4月17日(2014年)のスイス・ジュネーブで行われたウクライナとアメリカ、ロシア、EU外相級4者協議によるウクライナのすべての武装集団を武装解除し、政府庁舎等を占拠している建物などからの退去を求めるとした合意にも関わらず、ロシアが親ロシア派に対して何ら影響力を行使していないことに対して更に制裁強化に出たことに対する反応であろう。

 プーチンの5月7日の延期要請に対して翌日の5月8日、新ロシア派から直ちに反応が返ってきた。

 親ロシア派メンバー「投票の準備は整った。プーチン大統領は我々の友人だが司令官ではない。投票は必ず実施する」(NHK NEWS WEB)――

 プーチンが影響力を行使すべく住民投票の延期を働きかけたが、断られて影響力行使を果たすことができなかったという形を取ったことになる。だが、これがアメリカやEUに対して責任を果たしているところを見せて顔向けできるようにするための延期要請だとしたら、責任を履行したと見せかけるアリバイ作りであり、アリバイ作りだと承知していたからこその親ロシア派の拒絶だとしたら、双方が示し合わせたヤラセの連携プレーということになる。

 親ロシア派がプーチンの要請を断った5月8日の翌5月9日、プーチンはクリミア全体をトロイアの木馬とさせた我が領土クリミア入りを果たしている。

 この訪問は第2次世界大戦で旧ソビエトがナチスドイツに勝利した記念日に合わせたものだというが、この点に関しても旧ソ連時代が体現していた大国主義への回帰願望を見て取ることができる。

 プーチンは黒海艦隊の拠点であるセバストポリで軍事パレードに出席、市民や軍人、退役軍人を前にして演説している。

 プーチン「2014年はクリミア市民がロシアと共に生きることを決定し、歴史の真実や祖先の記憶に忠実であることを確認した年として、我々国家全体の歴史に残るだろう。

 多くの仕事が残っているが、困難は克服することができる。なぜなら我々は共にあり、一段と強くなったからだ」(ロイター)――

 「歴史の真実や祖先の記憶に忠実である」とする欲求は旧ソ連時代の領土を記憶に置いた欲求であろう。その上でクリミアのロシア併合を「歴史の真実」であり「祖先の記憶に忠実」な偉業とした。いわばクリミアは歴史上、一貫してロシアの領土だったと主張している。プーチンは最初からクリミアをロシアの領土として欲していたのである。 

 だが、果たしてクリミアのロシア併合のみを「歴史の真実」とし、「祖先の記憶に忠実」な偉業としているのだろうか。旧ソ連時代の領土を記憶に置いた欲求である以上、そうではないことは確かだが、「2014年はクリミア市民がロシアと共に生きることを決定し」以下、「我々国家全体の歴史に残るだろう」までの言葉自体がウクライナ東部の親ロシア派や親ロシア派武装勢力、そこに紛れ込んでいるコサックたちをなお一層鼓舞し、彼らの愛国心をこの上なく熱くしたことは疑いを差し挟む余地がないことを考えると、彼ら自身の意志=彼らが果たそうとしている目的を元気づけ、确信させる言葉となったはずだから、プーチンの領土的野心=「歴史の真実や祖先の記憶に忠実であること」はクリミアにとどまらず、ロシアとなって手放すことになった旧ソ連時代の領土に向けた領土的野心となっているはずだ。

 要するにプーチンの住民投票延期要請は影響力行使を見せかけるアリバイ作りだと看做されても仕方はあるまい。

 プーチンの領土的野心は目的を果たしたクリミアを除いて、ウクライナのロシア住民が多数を占める地域、あるいはそれ以外の国の同様な地域に向けて様々な形でトロイアの木馬を送り込むに違いない。旧ソ連時代の領土を記憶に置いて「歴史の真実や祖先の記憶に忠実」であろうとする自らの領土的野心を充足させるために。

 またそうすることによって偉大な大統領として高支持率を獲得でき、偉大な大統領として後世に記憶されることになる。

 この点に於いて大日本帝国の偉大さを取り戻そうとし、そのような偉大さを否定することになる侵略戦争や従軍慰安婦といった日本の歴史の誤謬を認めることができない安倍晋三と極めて近親的な関係にある。だからこその信頼関係であり、お友だち関係なのだろう。

 プーチンを徹底的に叩かなければ、ウクライナ問題、その他は解決しない。

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