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三幕劇「ウォールストリートの危機」“Wall Street in crisis”

2008-09-17 | グローバル企業
2008-9 No.14

米国金融界の破綻とその顛末を描いたドキュメンタリー劇の第一幕は政府に抱きとめられた「ベア・スターンズと住宅金融公社二社の救出」。そして第二幕は政府に突き放された「リーマン破産への道」。そして三幕目は政府の救済介入の肝試しとなる「AIG放浪の場」でありましたが、つい先ほど米国政府が850億ドルの融資を行い、同社を政府管理下におくということで幕が下りました。

週末の第二幕から第三幕への暗転のなか、「もうこれ以上米国政府は公的資金注入を絶対しない」とのポールソン財務長官の宣言を、AIGについても貫徹できるか第三幕の見所でありました。その間AIGの信用格付けは切り下げられ、株価は暴落し、市場は退場を激しく迫りました。民間による資本注入(capital infusion)を促すための政府の仲介は依然不調が伝えられ、さらに必要な資本注入額は、一夜にして400億ドルから700億ドルまで膨張していたのです。

さて、この第三幕の主役である保険会社AIGのいわば突然の登場についてFTの女性人気コラムニスト、ジラン・テットは、「保険と堅実な金融商品業務を中心にした巨大金融コングロマリットながらも、『問題が起こるはずが無い』と注目されてこなかった『退屈な脇役の激演』(The boring is biting with a vengeance)」と評しています。そして「大人しいウスノロとおもっていても狂犬にもなりうる」というのが今回の教訓だと言い切っています。

いずれにしてもあれほど「自由市場に任せよ」と主張してきたFTの論調もこの3幕劇の劇評として、「グローバル時代の国際金融・国内金融に対する監視と規制と、規制機関の間の協調が不適切であった」という論調に大変化を遂げました。さらには米国政府の金融機関救済政策について、判官ポールソン長官の日替わりとも言うべき『変心』の説明に注目いたしましょう。