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原油価格の行方:Dip or decline

2008-08-05 | グローバル経済
原油価格は、7月にピークからバレルあたり20ドルの下げを見せました。本日も、バーレルあたり120ドル台の下にまで下がっています。FTは、果たしてこれは一時的な下げ(a dip)なのか、長期低落傾向(a trend)なのかという問題を2日の論説で取り上げています。

結論は、一時的なもの(dip)だというものです。直接的な理由としては、米国の旅行シーズンを前に、原油・ガソリンの在庫に減少が見られないことと、原油先物価格が2016年渡し物で120ドル台を維持していて、原油価格の先安を市場は期待していないことの二つを上げています。

それでは基本的には需給バランスが価格をきめるという立場に立った議論からすれば、供給サイドの増加が、至近年度では大きく見込めないのになぜこのところ価格は下げに転じたのか。それは米国景気の後退と、ガソリン価格上昇による走行距離の減少による消費の減少にあるとします。

そして、それが一時的と断じる理由は、世界の需要構造が中国・インドなどの新興国の需要の伸びの顕著さに求めます。多少の米国の需要減や、利用効率の改善などはすぐにでも吹っ飛ばしてしまうのが長期傾向(trend)であるということであります。

FTは伝統的に、自由市場経済主義を固く信奉していますので、需給関係以外の要素は一時的な「あや」と断じます。投機資金の流入・流出もそのあやの一つであるという立場です。数年前に、メージャーが軒並み保有する可採埋蔵量の過大評価を市場から糾弾され、トップの辞任や財務諸表の訂正が行われて以来急速に原油価格が上昇に転じたことも需要逼迫の状況証拠なのでしょう。