goo blog サービス終了のお知らせ 

世界の動きを英語で追う

世界と日本の最新のできごとを、英語のキーワードを軸にして取り上げます。

反ロ・反独愛国者、ポーランド大統領事故死 Death of A Patriot

2010-04-11 | グローバル政治
2010年4月11日

旧ソ連によるポーランド人虐殺の「カチンの森事件」70年の追悼式典に出席する予定だったポーランドのカチンスキ大統領(Lech Kaczynski)夫妻が乗った政府専用機が、昨日ロシア西部スモレンスクの空港近くの林に墜落し、同大統領と多数の政府高官が死亡した。

大統領は、敬虔なカソリック教徒で60歳。当時地下組織「連帯」のメンバーに加わり、ワレサ元大統領とともにポーランドの旧ソ連体制からの解放のために戦った愛国者である。彼には、今回難を逃れた元首相であったJaroslaw Kaczynskiという双子の兄弟がいる。

ドイツとソ連双方からの攻撃によって瓦礫と化していたワルシャワに生まれた双子の兄弟は、この両国に対する敵愾心を強く秘めながら成長し政治家の道を進んだ。

筋金いりの反共主義者であり、2005年に、「法と正義党」(Law and Justice Party)から大統領に選出され、選挙民の支持を背景に共産党元幹部による実質支配を終わらせることに意を用いてきた。ワレサ氏とは、「連帯」が共産党と妥協しすぎであるとの理由から後に袂を分かっている。

大統領の突然の事故死の報道に関連して、本日のThe New York Timesは、同大統領の政策とポーランドの対外政策について概観している。それを中心にポーランドと東欧・中央の今後のパワーバランスを考えてみる。

ポーランドは2004年にEUに加盟していたが、2005年に就任した同大統領は、ロシアに対してもEUに対しても対立的な姿勢をとり続け、国内世論の右旋回を目指した。

そして同大統領は、米国との直接的な同盟関係の強化を図った。ポーランドは1999年にNATOの加盟国となっていたが、『NATOこそがポーランド安定の唯一の道』と言い切り、ブッシュ政権とのつながりの強化に腐心し、ロシアの対欧膨張主義の封じ込めに熱心であった。

その一環としてポーランドはウクライナとグルジアのNATO加盟を推進しようとしていたが、これを過剰な反ロシア行動とするドイツのメルケル首相の強い反対を引き起こした。

また対ロシアミサイル防衛網構築についても対米協力を惜しまぬことを表明してきたが、オバマ政権は、対ロ配慮から積極推進はしない方針に転換せざるを得ないことから、計画は宙に浮いている。

モスクワ市長を経て大統領に就任して以来、ポーランド国民の対ロ・対独の反感を軸にした愛国主義、対米一辺倒の外交政策、共産党との決別、そして汚職追放によって人気を得たが、カソリックに基づく性差別主義者でもあったことからこのところ人気は下降線をたどっていた。今年予定されている総選挙の帰趨は混沌としてきた矢先の大統領の死であった。

反ロシアの象徴である「カチンの森」追悼式典に出席途次にロシア国内で搭乗のロシア製飛行機の墜落のため、突然死亡するというのは、恐ろしい偶然である。




米国、非核国に核攻撃はしない Negative Security Assuarance

2010-04-07 | グローバル政治
2010年4月7日(水)

今週木曜日に米ロ間で、核軍縮条約STARTの条約改定に調印, 来週にはワシントンで核兵器サミットを主催、来月核拡散防止条約国会議を予定しているオバマ政権は、昨日「核戦略の現況報告書」(Nuclear Posture Review)を公開するとともに、米国の新核戦略構想について発表を行った。

NPRの内容が全面公開されたのはこれが始めてであり、米国は今後新たな核兵器開発を行わないし、核実験も行わないと公約したことは注目されるが、もっとも注目されるのは、非核保有国には核攻撃をしないとの保証をするという部分である。

オバマ大統領は、「ここ数十年にわたり支配してきた冷戦構造に別れを告げ、核兵器の拡散の防止を誓うために意義深い第一歩を踏み出した」と演説の中で語り、「核の脅威は、いまや二国間の核戦争ではなく、核テロ問題、核拡散問題に焦点が移った。この二つが米国にとって、もっとも大きな問題(at the top of America’s nuclear agenda)となった」ことを強調したとABC放送が伝えている。

米国内で今後もっとも論議を呼ぶと予想されるのは、上記にも触れたが、「核拡散防止条約(NPT)締約国に対しては核攻撃をしないと誓約し、これらの国が、化学・生物兵器で米国を攻撃した場合でもそれが適用される」という政策である。

オバマ大統領はこの点に関して、「この誓約を行うことで、生物・化学兵器が使用されるという事態(contingencies)への抑止効果が上がり、核拡散防止を遵守しようとする動機付けになる」と狙いを説明した。

オバマ大統領は、「米国は、非核攻撃抑止のために核武装するという政策から引き続き手を引いていく。いわゆる「核不使用保証」政策'negative security assurance'と呼ぶ「核拡散防止条約に加盟し、遵守する国に対しては核兵器を使用しない」という政策をとる。

しかし生物・化学兵器を使用した国々に対しては、通常兵器で徹底的な撃滅方針で懲罰を加えるし、そうした兵器を使用したテロ行為を行った個人や政治家は草の根を分けても責任を追及していく」と補足説明を加えた。

この政策は、イランと北朝鮮に、核拡散防止条約への参加の道を促すことを主目的としているが、マケイン上院議員を始めとする共和党保守グループからは、「米国はあらゆる核戦略オプションを堅持する」ことを明言すべしとの反対論がすでに出ている。


Financial Timesは、今回の発表の中の表現の変更を指摘している。それは「核攻撃抑止力は、米国の核保有の基本的な目的」( the “fundamental role of US nuclear weapons”)へと、核軍縮推進派が要求していた「核攻撃抑止力は、核保有の唯一無二の目的」( the exclusive purpose of the US arsenal)から、用語の変更があったことである。

確かにfundamentalとexclusiveの違いは大きい。fundamentalであれば米国は核兵器を攻撃のために使用が可能となる。exclusiveであれば、自らの意思で核兵器を使用することを完全に放棄することになるからである。

オバマ大統領は、今週ロシアとプラハでSTARTに調印するが、ロシアはミサイル防衛網の欧州配備に留保条件をつける構えであり、最終段階まで予断を許さない。そして調印しても共和党の反撃と戦わねばならない。


オバマ、対中「為替操作国」宣告を延期 Some Breathing Room

2010-04-04 | グローバル政治
2010年4月4日(日)

オバマ政権は、財務省が議会に4月15日までに送達することが定められている上半期為替情勢報告書(the semiannual exchange rate report)の中では、中国を「通貨交換レートの人為的操作をしている国」と断定することは先送りし、引き続き外交ルートを通して人民元の切り下げの実現を求めていくこととした。

これは、12日から始まる核サミット参加のために訪米する胡錦濤国家主席に配慮した、いわば中国の対米政策軟化と引き換えの決定である。

Timothy Geithner財務長官は、「中国は人民元を対ドルで固定し、為替市場に介入して人為的に安く操作してきた」と指摘した上で、「この問題は、今月末のG20中央銀行総裁会議、5月の米中二国間戦略・経済対話、6月のG20サミット会議において中国に翻意を促していく」と米国の対中交渉方針を明らかにした。

さらに同長官は、「こうした場で、外交努力を払うことが、米国にとって最良の国益を増進させる最良の方法である(“the best avenue for advancing U.S. interests at this time” )」と述べた。

そしてThe New York Timesは、「最近中国が、米国が最重要課題(American priorities)とする、イランや北朝鮮の核疑惑対処に関して理解ある態度を示していることを考慮すると、議会への報告を延期したことは、十分説明が付く話である(Delaying the currency report is a small price to pay)」との、中国の専門家の意見を紹介している。

議会側は、すでに超党派の130名の下院議員が、「対中制裁のため懲罰的関税を課すべき」との書簡をホワイトハウスに送っていることもあって、共和党の強硬派を中心に今回の決定を非難する共和党議員が目立っている。

一方、強い影響力を持つ民主党下院議員のSander M. Levin歳出委員長は、「有限の期間の延長であり、目的がはっきりしているので、延期を是としたい」との意見を公表している。

The New York Timesは、「人民元は40%切り下げるべきであるが、今回の報告延期によって、中国側は、自主的に今の人民元の対ドル固定政策から調整過程に入るであろう。いわば自主的な調整に向かうために多少の息継ぎの余裕(some breathing room to do so) を中国に与えるのも良かろう」と論評している。

中国と米国の硬軟取り混ぜた外交折衝は、大人のゲームである。それに引きかえて...

胡錦濤主席、核サミット参加決定 Temporary rapprochement

2010-04-02 | グローバル政治
2010年4月2日(木)

中国外務省は木曜日、胡錦濤国家主席はオバマ大統領が4月12日と13日にワシントンで主催する核サミット(the Nuclear Security Summit)に参加することを発表した。

Googleの中国撤退という事件で両国関係は冷え切っている最中、「この木曜日の公式発表まで、米国政府は中国が、台湾への武器売却とダライラマとのオバマ大統領の会談に対する不快感を示すために核サミットをボイコットするのではないかと非常に懸念していた」とThe New York Timesは報じている。


また中国の外務大臣は、米国が主導する国連による対イラン制裁措置を支持して、北京に到着したイランの核問題交渉担当官と会談した。

「この二つの動きを総合すると米中両国は、目下最大の利害衝突を起こしている、人民元の切り上げ問題と対イラン制裁実施問題という二つの懸案で妥協点を見出しつつある」との観測がなされているとThe Wall Street Journalが伝えている。

昨日の定例記者会見では、中国政府スポークスマンは、会談内容については一切言及せず、外相がイラン側担当官との会談前に、「中国は今回の訪問を大変重視している。また中国はイランとの関係の重要視している」と語ったとのみ明らかにし、危機は外交手段で解決されるべきである」とのコメントを発表したにとどまった。

核サミットは、「核兵器をテロリストの手に渡すな」というオバマ大統領の今年の一般教書演説に基づいて計画されたものである。しかし4月12日、13日という日取りは、財務省が、「通貨操作国」として中国を認定する否かの期限が、4月15日であることから、きわめて微妙なものとなっている。

大方の観測では、この15日の期限は繰り延べられるであろうと見ている。延期されるという確証を中国政府が得ない限り、胡錦濤国家主席の訪米決定はありえないとの見方を、The New York Timesが紹介している。

米中間は、関係改善に進んだように見えるが、過去の例を見れば、多数の問題を抱える両国関係は突然悪化することもままあった。当面の経済問題は、何をおいても人民元の切り上げ問題である。

そして、「一見関係改善(rapprochement)をしたかに見えるが、これは一時的なものに過ぎない。台湾とチベット問題は、米国にとって二次的な問題(peripheral to the United States)であっても、中国にとっては妥協ができない大問題“China’s core interests”である。

両国関係の緊張が高じることは双方にとって不利益をもたらす。米国は無用に中国への挑発行動を慎むべきだ」との中国の識者の意見で、同紙は記事を結んでいる。



オバマの「核なき世界」と「核脅威の必要な米国」 Fearmonger

2010-03-31 | グローバル政治
2010年3月31日(水)

雑誌”Time”は、ワシントンの保守系シンクタンクThe Heritage Foundationが、「米国はEMPの脅威に備えるべきだ」とキャンペーンを開始し、「3月26日を「EMPの日」(EMP Recognition Day)と定めよ」と要求していることを、米国の歴史が「幻の脅威」をつねに必要としてきたという文脈の中で、半ばからかいながら報じている。

ここでは、一般学術用語EMPは、核爆弾を64km以上の高空で爆発させると、その際放射される強力な電磁パルス(electromagnetic pulse)によって、地上のあらゆる電子機器の機能を破壊できる兵器の意味で使われている。

この攻撃を受ければ、交通、通信、インターネット、電力系統制御などの社会インフラ、電子化されている自動車、病院などが瞬時に機能停止(go black and freeze)に陥ると脅威を煽っている。

まさに、米国には、常に来るべき脅威を誇張して国を形成してきたという伝統遺産(heritage)があると、Timeは歴史を振り返る。西部開拓史はつぎからから次へと現れる新手のインディアンの脅威で彩られていた。

そして冷戦時代は、ミサイルと爆撃機数でソ連に劣後しているという脅迫観念に凝り固まった。核攻撃用ミサイル性能で負けているという幻の恐怖がレーガンの”Star Wars”戦略構想につながった。そしてそのための迎撃ミサイルシステムに、ソ連消滅後も10兆円が投じられた。9/11後には、イスラムテロからの防衛を目指す「国土防衛産業複合体」が出現することになった。

The Heritage Foundationは、EMP対策をまったく取っていないことを憤り、レーガン大統領が、ミサイル戦略構想(missile-defense initiative)を発表した3月26日を、「EMPの日」 とせよと叫んでいる。軍部がその可能性が低いと断定しているEMP攻撃について対策をとれとなぜこのように執拗に主張するのか。その底流には米国には、「悪魔的な攻撃能力を持った敵を本能的に欲している(some visceral need for foes with diabolical destructive abilities)」のだとTimeは断じる。

そして、軍産複合体の幽霊がいつも出てくる。EMP脅威をさけんでいることの裏には、EMP対策に電磁シールドを国中のあらゆる電子システムと、機器に装備するための予算支出への要求が隠れている。「恐怖を煽れば、膨大な戦争マシーンがまた売れるよ」("More fearmongering to garner more $$$ for The Big War Machine")というわけである。

もちろんこの運動には、Roscoe Bartlett,共和党上院議員がちょうちん持ちをして、議会活動を始めている。そしてTimeは「どういうことなのか海軍は、見過ごせないリスクであるとして、超高度核爆発電磁波パルス(High Altitude Electromagnetic Pulse (HEMP))研究を開始した」と嘆じている。

このHEMPはhemp(大麻)に通じるので、”HEMP or high?” (大麻でハイに)というジョークで記事を結んでいる。


オバマ、急遽アフガンを訪問 Corruption and narco-trafficking

2010-03-29 | グローバル政治
2010年3月29日(月)

オバマ大統領が急遽アフガニスタンを訪問、カルザイ大統領と会談し、駐留米軍を督励した。この訪問は秘密裏に企画され、週末大統領はキャンプデービッドに家族と過ごしているように装い、土曜日に出発、日曜日現地午後8時に到着したとThe Wall Street Journalが速報している。

オバマ大統領は、昨年アフガン戦闘強化(the surge)をウェストポイント陸軍士官学校での演説で発表して以来4ヶ月目で現地訪問を実現させたのであるが、「軍隊を引き上げるイラクには行き、戦線強化を行っているアフガニスタンを訪問していない」ことに対する一部の批判に答えたものである。このため、今回大統領にはホワイトハウス高官、顧問団、高級外交官が多数随行し、現地からはMcCrystal司令官も参加した。

随行中の国家安全保障アドバイザーのJames Jones氏が明らかにしたところによると、オバマ大統領は、再選された2期目のカルザイ大統領に対して、「米国とその同盟軍が戦っているタリバンの軍資金源(the economic engine of the insurgency)となっている、政府の腐敗と麻薬取引(Corruption and narco-trafficking )」への善処を強く求めたという。

「この二つの問題は、ブッシュ大統領による戦闘開始(Day One)以来見過ごされてきた問題であり、これ以上見過ごすわけには行かない(cannot be tolerated)として今回最重要事項として取り上げられた。またタリバンの中でも穏健派を一刻も早く懐柔して社会復帰させる努力に注力することを両大統領は協議した」と同氏は語った。

カルザイ大統領は、オバマ大統領の来訪を先週木曜日に連絡を受け、最上級のしつらえで遇した上で、会談後の記者会見で「アフガニスタン社会の再建("rebuilding and reestablishing the institutions" of Afghanistan)のために米国民が過去8年アフガニスタン国民を支援してくれた」ことに対する謝意表明を行った。

その後オバマ大統領は、戦闘服で米軍兵士の大集会に出席し、20分にわたり、彼らの貢献をたたえる演説を行い、握手とともに会場を後にした。現在アフガン南部で展開されているタリバンに対する米国海兵隊による集中攻撃は、最小の被害で大きな成果を挙げていると伝えられている。今回の訪問は、オバマ戦略の成否を握り(make or break)、難攻となると予測されている今夏のタリバン拠点カンダハル攻撃を前にした督戦の意味があるとされている。

オバマ大統領にとっては、インドネシアと豪州訪問を中止して健保改革法案を成立させ、ロシアとは戦略核兵器削減交渉(START)に関する合意を達成した上でのアフガン訪問である。そして米国は、アフガン攻撃のためにロシア領空通過を含めて支援を受けていることも見過ごしてはならない事実である。

世界はこのように動いている。日本の外交・防衛もこのコンテクストで考える必要がある。

オバマ対ロ軍縮交渉妥結 A World without Nuclear Weapons

2010-03-27 | グローバル政治
2010年3月27日(土)

国内で懸案の健保改革法案に署名したオバマ大統領は、外交面でも大きな成果を挙げた。昨年4月にチェコのプラハで宣言した「核無き世界」への第一歩として、昨年末に失効した米ロ間の戦略核兵器削減条約(START 1)の改定の内容に合意に達した。調印式は宣言から1年後の4月8日に、同じくプラハで行われる。

ロシア側からもこの合意達成に関して「両大統領間で行われた電話交渉は14回に及ぶ。まさしくこれは両国関係の新規巻きなおしとなる( their shared goal of resetting US-Russia relations)」 と発表されたが、ここでは特に、オバマ大統領が使ってきたresetという言葉をロシア側も使ったことが注目される。

そして、「ロシアはこの条約によって、米国との関係を改善できることが期待できるので、現在苦労している経済インフラの近代化を図り、国際的な信用を高めることができる」と率直に認めたことをFinancial Timesが報じている。

オバマ大統領の演説は全文が公開されているが、そのなかから、ほとばしるオバマ大統領の熱意に満ちた部分を抜粋してみる:

「大統領に就任以来、米国民への核兵器の脅威に対処していくことは私の重要目標の一つであったゆえ、昨年4月にプラハでそれを語ったのだ。『核なき世界』(a world without nuclear weapons)の形成によって平和と安全な世界を目指したいと。それこそがケネディーやレーガンのような歴代大統領が目指してきた道と同じくするものである」

「この願いは近未来では実現はできないだろう。しかしそれを目指して、核兵器が拡散することを防止し、核物質がテロリストの手に渡るのを阻止し、核兵器の貯蔵を削減すための提案を行った。STARTのロシアとの交渉において基本としたのはその精神であった」

「さらに言えば、就任以来自分は、対ロ関係を巻きなおす(reset)ことを約束してきた。両国が効果的に協調すれば、両国の利益の増進に資するのみならず、世界の安全と繁栄に役立つと信じるからだ。すでに両国はアフガニスタン問題では協力してきた。G20の枠組みで経済問題にともに協力している。イランに対しては国際社会に対する義務を果たせと協調して圧力をかけている。そして本日現政権にとって、きわめて重要な安全保障分野で合意に達した、まさに転機となる軍縮条約で合意に達したのだ」

この成果をもとに、オバマ大統領は、核兵器開発を阻止するための対イラン包囲網の強化ができるので、課題が山積してきた対中交渉に全力を挙げることとなる。
 

オバマ外交へ各国の反発目立つ We Don't March to U.S. Beat

2010-03-21 | グローバル政治
2010年3月21日(日)

オバマ政権発足当時、世界各国からあれほど大きな期待をかけられていたにもかかわらず、1年が過ぎたいま、米国外交政策は次々と各国から反発(A string of public rebukes)を受けているとThe Wall Street Journalが通信簿を書いている。

先週Biden副大統領が、中東和平の仲介役として訪問中に、まさに問題となっている東エルサレムに大規模な住宅建設を開始するとイスラエル政府が発表を行い、同副大統領を激怒させ、米国の顔に泥を塗ったのは記憶に新しい。イスラエルは、「発表の内容は正しい、時期を誤っただけ」と米国の忠告を意に介せず、問題地域への入植や住宅の建設を進めている。そのため目下エルサレムでの衝突が再度激化していて、和平交渉の破綻が懸念されている。

また、クリントン国務長官が、先週末からモスクワで、ロシア首脳と戦略核兵器制限条約の更改のつめのために訪問したが、外務大臣と会談している最中に、プーチン首相が、「建設を請け負っているイランの原発を夏までに完成させる」と発表して、対イラン制裁の国連決議に向けて国際世論を糾合中の米国の努力に水を差す挙に出た。

核開発を禁止させるための対イラン制裁については、トルコ、ブラジル、中国が、先月に米国の方針に反対する立場を明らかにしている。一方、イランを懐柔しようとの姿勢を示したり、ロシアとの関係の一新(reset)を独自に進めた米国のやり方には、欧州諸国が不快の念を示している。米国が対ロ関係一新を言いながら、対イラン対策としてミサイル防衛網を東欧に置こうとしていることにロシアは神経質になっている。

中国との関係も緊張度が高まっている。先週全人代直後の記者会見で温家宝首相は人民元切り上げに対する米国の圧力を、「自国通貨の切り下げによって輸出増加を狙う国の保護政策」と非難し、台湾への武器売却やダライラマとの面会によって米国は中国の内政に干渉し、関係悪化の原因を作っていると非難した。

こうした米国の外交政策のまずさの原因について、The Wall Street Journalは、識者の意見を紹介しているが、それは二つに集約されると分析している:

ひとつは、個々の政策については評価できるものであっても、その政策の波及効果に関する分析が不足していて、思わぬ方向からの反発(the indirect effects of policy initiatives)を呼び起こしているというものである。

その例として挙げられているのが、オバマ大統領の4月のプラハにおける「核なき世界」演説、6月のカイロにおけるモスレム世界との和解を目指す「再出発(A New Beginning)」 演説、9月のモスクワにおける「米ロ関係のリセット」宣言などである。おのおのは説得力のある理念に満ちているが、当面負の結果を受ける諸国の猛反発を引き起こすという事態が想定されていなかった。

そして同紙は二つ目の原因として、外交的な配慮に欠けた、各国やその元首に対する「軽侮」(slights)と取られる米国の行動をあげている。英国のブラウン首相に映画のビデオを贈ったり、フランスのサルコジ大統領をことさら無視する態度を取ったりして怒らせている。そしてあからさまな対中重視策は、日本や、特にインドからは不満を持って受け止められているのもそうした、二次的影響への配慮の無さが原因であると論評している。

ちなみにこの記事の見出しは、"Nations Decline to March to U.S.Beat"となっている。「米国の太鼓に合わせて行進はしない各国」ということで、日本の言い回しでは「笛吹けどおどらないよ」ということになる。



クリントン長官、モスクワで奮戦中 START to Finish

2010-03-19 | グローバル政治
2010年3月19日(金)

クリントン米国国務長官は、2日間の日程でロシアを公式訪問し、第一日目の木曜日に、ロシアのラブロフ外相と会談し、まず両国間の懸案の中でも2009年12月に失効したSTART1(第1次戦略兵器削減条約)に代わる新たな核軍縮条約について協議した。

2009年12月に失効したこの条約の改定は、両国間で昨年7月のオバマ大統領のロシア訪問以来ジュネーブで交渉が行われてきたが、まだ完全合意には至っていない。今回のクリントン長官の訪問は、いわば「最後の仕上げ」の訪問でもある。

ラブロフ外相は、協議を終えたあとの共同記者会見で「われわれはゴールにまでこぎつけた("We are now at the finish line")と表現したが、一方のクリントン長官は、「孵るまではひよこの数を数えるなというたとえもある(`Don't count your chickens before they hatch')と古びたことわざを持ち出して、懸案が完全にはかたづいていないことを色濃く表現した。

クリントン長官はさらに続けて、「二人の大統領がどこで、いつ署名すべきかを話し合うところまで来てはいる。しかしあわててはいけない(We don't want to get ahead of ourselves.)。公式に署名して初めてからの話だ(First, our negotiators have to sign on the dotted line, so to speak.)」とあくまでも慎重であった。

ところが、この会談が行われている最中に、プーチン首相は、ロシア国内の原発の開所式に出席中に、同国の原子力関係者の前で、「ロシアが長年にわったって建設に協力してきたイラン国内の原発の運転を今年の夏には始めさせる」との声明を出した。

イランの核爆弾製造疑惑に関連して、国連の安保理事会で制裁決議を行うか否かという議論が沸騰する中で、それをひとつの両国間の議題として、訪ロしていたクリントン長官の機先を制する形のプーチン声明となった。

The New York Timesは、バイデン副大統領が、中東和平交渉再開のために、先般イスラエル訪問中に、同国政府が「係争の地エルサレムに1600戸の住宅建設を行う」と発表し、同副大統領を激怒させたことに続く、立て続けの米国要人の公式訪問中の「驚愕」のあしらいと論評している。

上記の共同記者会見で、クリントン長官が、「イランが核兵器を開発しないとの確証を得るまで、原発の運転開始を延期するように求めた」ことに対し、直ちにラブロフ外相は、「ロシアはあくまでも運開させる」と反論した。この原発建設は、ロシアとイランの間で1995年に結んだ契約に基づくものであるが、ロシアが欧米の圧力に配慮して、工期を延ばしに伸ばしてきたものである。

クリントン国務長官は、本日金曜日にメジデェーエフ大統領とプーチン首相と会談を行うこととなっている。核兵器削減交渉の成否とイラン問題に関してその結果は、今後の世界情勢にとっても、オバマ政権の行く末にとっても非常に注目される。


イスラエルにバイデン副大統領激怒 A Slap in the Face

2010-03-11 | グローバル政治
2010年3月11日(木)

中東和平交渉の再開の糸口を見つけようとするオバマ政権の期待を背負ったバイデン(Joe Biden)副大統領は、今週イスラエル、パレスチナ、ヨルダンを歴訪中であり、イスラエルとパレスチナ自治政府が米国を仲介にした間接交渉を開始するとの合意にこぎつけるところまで事態は好転していた。

ところが、イスラエル政府は、同大統領を最高のしつらえで歓迎行事をしながらその裏で、同副大統領の顔をつぶす挙に出て世界中を驚かせている。

バイデン副大統領は、月曜日にペレス大統領と面会、火曜日にはナタニエフ(Netanyahu)首相の歓迎夕食会に出席したのであるが、イスラエル政府は、突然火曜日に、領有権でもっとも係争問題の火種となってきた東イスラエルに1,600戸のアパートを建設すると発表したのである。

このアパート建設発表の直前には、同副大統領は最大級の表現で、米国とイスラエルの間の紐帯の強さを記者会見で表明していた。「イスラエルの安全保障に関する米国の立場は、このユダヤ国家の立場と同一である(identical)。イスラエルの安全保障問題という話になれば、米国とイスラエルの間には一寸のすきも無い。まったく無いのだ」(There is absolutely no space between the United States and Israel.)

さらには、ペレス大統領が、バイデン副大統領を「真の友」と呼び、バイデン副大統領はこれに答えて、「家でくつろぐのはいいものです」("It's good to be home")とエールを交換しあったばかりのところへ冷水(a slap in the face)となった。

この仕打ちに対して同副大統領は、水曜日に色をなして、記者会見でイスラエル政府を非難する事態に展開した。「この行動は、まさに今われわれが交渉を成功させるためにもっとも必要としている相互信頼(the trust)を破壊するものである」。パレスチナ政府側が激怒しているのは言うまでも無い。

イスラエル政府は、「このアパート建設の発表は、バイデン副大統領に向けての計算づくの一発を見舞ったのか(a calculated slap in the face)、単に外交上のポカなのか(simply undiplomatic timing)」と問われて、「後者だ」と答えて涼しい顔をしているとCNNが伝えている。

バイデン副大統領は、この後パレスチナ自治政府のMahmoud Abbas議長(英語ではPresidentと呼称されている)と会談したが、その後の記者会見では質問を受け付けなかった。同副大統領は、本日Tel Aviv大学で、「不朽の両国関係」という題目で演説を行うことになっている。この内容はきわめて注目される。イスラエル国民のみならず米国内のユダヤ社会に対してのオバマ政権のメッセージの発信となるからだ。




映画「ハートロッカー」の持つ狂気と反戦思想 The Hurt Locker

2010-03-07 | グローバル政治
2010年3月7日(日)

日本時間の明朝、本年度第82回アカデミー賞の発表が行われる。作品賞候補では、世界で前代未聞の興行収入を上げている「アバター」(Avatar)が最有力であるが、それを追い上げているのが二本の戦争映画である。

ひとつは先週日本で封切となったイラク戦争をテーマにした「ハートロッカー」(The Hurt Locker)と、もうひとつはすでに公開済みのナチスへの報復をテーマにした「イングロリアスバスタード」(Inglorious Basterds)。

作品賞のテーマの傾向としては、上記2本が直接戦争をテーマとしているだけでなく、広い意味で「アバター」も「第9地区」も戦争映画である。雑誌Timeは、少なくともオスカーの候補選びだけで見ると、『戦争映画は行けるぞ』(War is swell)との流れであり、「戦争映画の再生」(the rebirth of war movies)であると寸評している。そしてこの流れを受けた、イラク戦争をテーマにしている「グリーンゾーン」がまもなく封切られる。

「ハートロッカー」は、作品賞、主演賞(Jeremy Renner)、監督賞(Kathryn Bigelow)、脚本賞(Mark Boal)など9部門で候補となっているが、Time誌は脚本を書いたMark Boal氏とのインタビュー記事を電子版に掲載してこの映画の意味を語らせている:

「イラク戦争がなぜうまくいかないのかを説明したかったし、イラク戦争が兵站面で破綻していることを言いたかった。それを脚本化しアイデアを売り込んでいた最中にバグダッドに飛んでみて、今までのメディアでは、イラク戦争の狂気(the insanity of the war)が描ききれていないことを実感し、前線に立つ兵士の目を通した戦争の恐怖を描くべきだと確信した。

そして、Platoon、Saving Private Ryan, Schindler's Listや、Apocalypse(地獄の黙示録)に匹敵し、20年後にも話題にされる映画にしたかった」

爆弾処理の専門家を描いた「ハートロッカー」は、全編生理的な恐怖を起こさせる恐ろしい映画である。そして無限地獄とも言うべき意味のない戦いに、勇敢さと義侠心で身を捨てて行動する男たちの深層心理を考えさせるものがある。

そして、上に挙げた戦争名画は、すべてベトナム戦争までの徴兵された兵士の物語であった。しかし、この映画は、新しい制度すなわち志願兵制度の下での物語であることに注目しなければならない。志願してまで、そしてなぜ人は死がそこにある任務に身を投げ出すのかを考えさせる物語でもある。

さて、The Hurt Lockerとはどんな意味であろうか?辞書には出てこないこの言葉はアメリカ人にも解説が必要なようで、Boal氏は質問に答えて、「この言葉はバグダッド滞在中にも何度か聞いていたので、かなり早い段階から題名にしようと思っていた。その意味するところは、『究極の苦痛に晒される場所、いるだけで心が痛む場所のことだ』(The phrase, the hurt locker. It means the place of ultimate pain — a painful place.)」 と解説している。

閑話休題。「ハートロッカー」と、「イングロリアスバスタード」ともに原題をカタカナ化しただけの題名になっている。こうしたカタカナ化をして、意味を観客に考えさせようとするクイズ的な命名は、そろそろやめたほうが良いのではないだろうか。




米議会委員会、「アルメニア大虐殺」認定 The Genocide Label

2010-03-06 | グローバル政治
2010年3月6日(土)

米国下院の外交委員会は、木曜日に23対22の僅差ながら、第一次世界大戦中の1915年から1916年にかけてオスマン帝国内で発生したキリスト教徒であるアルメニア人の追放と殺戮に関して、これを「大量虐殺」(genocide)と認定する決議を行った。

これに対してトルコ政府は直ちに反応し、駐米大使を召還して厳重抗議姿勢を示した。

オバマ大統領は、2008年の選挙期間中には、「大量虐殺宣言」を行うことを公約としていたが、その態度を転換したことを公にしており、今回も中東政策特に対トルコ関係に配慮して、この委員会決議が上下院で法制化されないように動いている。

トルコとアルメニアは、昨年10月に関係正常化(normalization)に向けて歴史的な条約に調印したが、トルコ議会はまだこれを批准していない。クリントン国務長官は、「米国議会のこうした行動は、こうした両国間の関係改善(reconciliation)を阻害するものとして反対する」とのコメントを出した。

下院外交委員長は、クリントン長官の要請を拒否して決議まで持ち込んだのであるが、「虐殺宣言を行うことは米国民の道徳的義務(a moral obligation)である。トルコと米国の関係はこの決議では壊れない」としている。

ちなみに外交委員会のこの決議には拘束力はない(a non-binding resolution)。Pelosi下院議長は今後の決議案の取り扱いについては沈黙している。共和党は、米国の中東・中央アジアでの軍事作戦にとってのトルコ領内の米空軍基地の重要性にかんがみて、決議には反対の態度をとってきた。

アルメニア政府は、「組織的大虐殺により150万人のアルメニア人が殺された」との主張をトルコが公式に認めることを要求している。一方トルコ政府は、「数十万人のアルメニア人殺害の事実を認めるものの、第一次大戦中のオスマン帝国内部の内戦状態で起きた、アルメニア人も死んだが、トルコ人も死んだ事件である」との態度を崩していない。

現在国際的に、この「事件」を大虐殺genocideと認定する国は20カ国に達していることをBBC放送が伝えているが、オスマン帝国の崩壊と中東での覇権を狙い画策したのが当時の大英帝国であり、それがアルメニア人虐殺の遠因となったことを考えると今昔の感がある。




ロシア、イラン核濃縮に警告 There is a Limit to Everything

2010-02-10 | グローバル政治
2010年2月10日(金)
イランは、中部ナタンツのウラン濃縮施設で低濃縮ウランの濃度を20%に高める作業に着手したことを発表した。

イランは、その目的をテヘランにある医療用研究炉向けの燃料製造にあるとしているが、核兵器に転用(weaponization)を警戒する米国は濃縮強行に態度を硬化させている。オバマ大統領は直ちに、「国連による更なる対イラン制裁決議を求める」と記者会見で明らかにした。

今回各国の反応の中で注目されるのは、ロシアの態度である。ロシアは、従来欧米の強硬路線には一定の距離を置きイランに好意的な態度をとり続けてきたのであるが、今回はその従来路線を大きく転換した。

ここ数ヶ月メドベージェフ大統領はイランの行動に懸念を強めていたが、実際の「最高権力者」であるプーチン首相は、国連による制裁強化には反対してきた。しかしFinancial Times の報道によると、昨日プーチン首相にもっとも近いとされている、Nikolai Patrushev大統領府安全保障協議会事務局長が、「欧米がテヘランの計画に懸念を示しているのは、故なしとしない(valid)」とその態度を表明した。

さらに同氏は、「イランの行動は、諸外国に疑念を抱かせているが、この疑念はきわめて当然のことである(quite valid)。問題解決には政治的・外交的手段によるべきとは思うが、ものには限度がある(but there is a limit to everything)」とまで言い切っている。

この発言は、「ウラン濃縮をイランが中止すれば、濃縮工程をロシアが引き受ける」と提案してきたロシアの顔に泥を塗るに等しいイランの態度に怒るロシアの苛立ちの表明である。ロシアが国連の安全保障理事会で、対イラン経済政策を採るべきであるとの声は、ロシア議会の有力議員からも上がっている。

一方、安全保障理事会において、中国は一貫して対イラン制裁には消極的である。また現在の非常任理事国である、トルコ、ブラジル、ナイジェリアも消極的といわれている。こうした中、イランに対する最大の武器輸出国であるロシアが、国連で欧米と歩調を合わせて対イラン制裁に賛成するかどうか、今回の高官発言が口先だけの警告なのか否かはまだわからない。

その意味で今回のロシアからの一連の対イラン警告発言はプーチン首相のあげた観測気球といえる。また米国は湾岸諸国への武器供与を発表したばかりであり、今回のイランの行動はそれに対するカウンターでもあるとも解釈できる。また世論支持率を下げているオバマ大統領は、イスラエルロビーへ配慮しなければならないというその政治的立場を考えると、米国が対イラン強行路線をますます強めていくことは間違いがない。

米軍攻勢、パキスタン・タリバン指導者死亡か Drone attacks

2010-02-01 | グローバル政治
2010年2月1日(月) 

中東カタールのAl Jazeera放送が、タリバンのパキスタン側組織the Tehrik-e-Talibanの指導者Hakimullah Mehsudが、1月14日に、米軍の攻撃によって死亡したとのパキスタンのTV報道を、タリバン側が否定したと伝えている。

もし、Mehsud氏が死亡したとすると、昨年8月に前代指導者がやはり米軍の攻撃で死亡しており、短期間に続けて指導者を失うという大きな打撃をこうむったことになる。

米国は、昨年12月に、アフガニスタン側のCIA基地内で、パキスタン人二重スパイによる自爆テロで7人のCIA関係者を失っており、以来パキスタン側のタリバンに対して無人爆撃機(drone)による攻撃を強化してきた。今回もMehsud氏もこの爆撃によって殺害されたとされている。

タリバン側は、音声テープを放送局に送って生存を主張しているが、映像テープが送られてこないことから、生存に関する情報は確認されていない。一方パキスタン軍は、南バジリスタンに散在するタリバン側基地を孤立化(disconnect)させることに成功し、タリバン制圧地域を奪還したと声明を発している。

パキスタン軍司令官は「タリバンは潰走し、守勢に回っている」("They were on the run, they were on the defensive )と強気に出ている。

タリバン内部には抗争があるので、もしMehsud氏が死亡したとするとその建て直しには相当の時間を要するであろうと予想されている。一方パキスタン側の攻勢が、今までも「形だけ」で、米国を常にいらだたせてきたことを考えると、パキスタン軍の強気発言を額面どおりに取ることはできない。

しかし、米国の無人爆撃機の威力はタリバンにとって大きな脅威となることは間違いない。誤爆で多数の住民を殺傷したことから、使用をためらってきた爆撃攻勢であるが、自軍地上部隊の損失を抑制するために、空爆にますます依存して、パキスタンとアフガニスタンへの攻撃を強めることになるであろう。

そして、アフガニスタンの雪解けの4月からは、オバマ大統領によって増強された米軍が到着するので双方の地上戦闘が激化すること必至である。

米中、台湾への武器売却で突然険悪化 Serious Consequence

2010-01-31 | グローバル政治
2010年1月31日(日)

昨日中国の国営新華社通信は、ワシントン特派員発の記事として、「中国の度重なる重大な意思表明(repeated solemn representations)を無視して、米国政府は、6400億円相当の武器を台湾に売却することを議会に通告した。」とトップで報じている。

「この武器売却は誤った意思決定である。中国の国防上の権益と中国統一の大義を損なうのみならず、わが国民感情を逆撫でするものである。そして中米間の協力関係全般に重大な破壊をもたらすものでもある」

「米国による台湾への武器売却は両国関係にとって長年にわたる悪性疾患となってしまっている。」

「1982年8月17日の中米コミュニケでは、米国は台湾に対する武器売却を質量ともに徐々に減少させ、最終的には完全に終結させることが謳われているにも拘わらず、今回また執拗に(stubbornly)に売却を決めたことは両国間の取り決めへの背反行為である」

そして、厳かにもあたかも戦争前夜のごとき宣告が続く。「米国が中国の立場を無視し続けるならば、そのために生ずる重大な結果に対する責任をすべて取るべきである」(all the responsibilities for any serious consequence caused by such a decision)

また、Financial Timesは続報として、中国政府は今回の武器売却に関与するメーカーBoeing、 United Technologies、Lockheed Martin、Raytheonの各社に報復措置を取ることを発表したことを伝えている。

Black Hawkヘリ、Patriotミサイル、Osprey型掃海艇を、6500億円分を売却するとそれに数倍する将来の中国の民間市場から締め出されることインパクトは大きい。しかしこれらのメーカーは国防省の注文をなげうって、自主的に中国への売却交渉から離脱できる自由はない。

台湾は、2001年にブッシュ大統領が台湾に供与を約束した上記の武器のほかにも、F-16戦闘機や新型の潜水艦の供与も要請しており、この問題はもっと大きい問題に発展する可能性が高い。

かつての中国は国力に比して大きい金切り声型の非難をすることが多かったが、いまや経済・軍事大国として、まさにすごみのある威圧的な攻勢に出てきたのである。ここ1年ばかり米国から突きつけられてきた、国内人権問題、食品安全問題、サイバーテロ問題、グーグル問題に代表されるメディア検閲問題など守勢を一気に跳ね返す挙に出てきた。

台湾は、友好ムードの熱を一気に冷まされ、台湾海峡に1000発のミサイルが台湾に向けてセットされているという現実に引き戻された。