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世界の動きを英語で追う

世界と日本の最新のできごとを、英語のキーワードを軸にして取り上げます。

オバマの銀行規制一本化、困難な道筋 Single Bank Regulator

2009-05-29 | 米国・EU動向
2009年5月29日(金)

オバマ大統領は、米国の金融機関の規制が、あまりにも機能分散していたために、金融危機に対処できなかったのだとの認識にたち、規制機関の統廃合による一本化(consolidation and simplification)を目指している。

このsingle regulatorを基本とする改正案は、6月中旬までに議会に提出し、公約どおりに年内に新体制を確立したいとしている。

現在米国には、銀行を規制する機関が多数あって、いわば「ごたまぜ」(hodgepodge)状態にあることが、混乱を助長したとの反省から、まず銀行規制を一本化しようというわけである。またあらたに、消費者への金融商品に対する保護と、ノンバンクを含めた金融機関の総合的な監督機能も持たせることが考えられている。

こうした改革につきものの、官僚側の抵抗も当然予測されている。

財務省管下の通貨監査局と金融監督局の統合が当然予想されるが、FBR(連邦準備制度)やFDIC(連邦預金保険公社)の監督機能の剥奪の可能性も高いと伝えられている。そして、その代替にFBRには、経済全体の構造的リスク(systemic risks)の監視権限、FDICにはノンバンクへの監督権限を付与する「妥協」が準備されているようである。

しかし、権限に関する抵抗は議会側からもある。すでに、上院銀行委員会議長から、「FBRにシステミックリスク監督権限を全面的に付与することに反対」との意見が出ている。

また、米国証券取引委員会( the Securities and Exchange Commission)と米商品先物取引委員会(the Commodity Futures Trading Commission)の合併の可能性も高いのであるが、この合併は、議会側の証券会社監視と、商品取引監視の権限の集中がおこるので簡単ではない。

また米国の銀行は、連邦政府が行う規制対象にあるものに加えて、州政府が監督する地方銀行が5,000行にも達する。現在、連邦と州で別々に監督がおこなわれるという二層構造(dual banking system)になっているが、監督機関の一本化には、連邦と州政府間の調整も必要としている。

ちょうど30年間にわたり、「規制撤廃と市場原理主義」を掲げて新自由主義経済運営を行ってきた米国が、「規制強化と政府介入」に舵を切るには、大きな政治社会的な障害をたくさん乗り切らねばならないということである。


オバマの女性最高裁判事候補に逆差別主義者との攻撃

2009-05-28 | 米国・EU動向
2009年5月28日(木)

今週オバマ大統領は、空席となっていた米国最高裁判事の職に、女性でニューヨーク、ブロンクス地区の貧しいプエルトリコ人家庭に育ったソニア・ソトマヨール氏(Sonia Sotomayor)を指名した。上院が承認すると、初のヒスパニック系の判事の誕生となるので大いに注目される。

彼女は、幼いころに父親に死なれ、看護婦の母親の女手ひとつで育てられ、プリンストンを優等生で卒業後、イエール大学で法学を修めた稀代の俊秀である。現在54才で、離婚暦あり、子供はいない。

オバマ大統領は、指名に際しては、「深く考え、慎重な判断」(“deep reflection and careful deliberation”)をもって、「正確無比の知能と、法律体系の習熟」(“a rigorous intellect, a mastery of the law”)を併せ持った人物を選択したと語った。

しかし彼女の、選出に反対する共和党保守派からの声がいっせいに上がり始めた。「彼女は逆人種差別主義者(reverse racist)だ」というものである。そして、その理由としてあげたのが2001年に、カルフォルニア大学バークレー校で行った演説である。

Sandra Day O'Connor元判事の「判決を下すにあたっては、賢明で、老練であれば、男であれ、女であれ同じ結論に達する」という言葉を引用しながら、明らかに自分のことを指している「豊富な経験を持っている賢明なラテン系女性であれば、それに匹敵する人生経験を持たない白人男性よりも、しばしば、もっとよい判決を下せる」と思いたい、と述べたことをさしている。

下院議長を務めた共和党長老議員Gingrich氏は、「白人の判事候補が、『私の経験からすると、ラテン系女性よりも優秀な判事になれる』といったと仮定してほしい。新しい人種差別は、古い人種差別よりましということはできないのだ (new racism is no better than old racism)」とtwitterに書き込みを行った。

オバマ政権は、議会が夏休み休会に入る前に、同氏への承認を取り付けたいとしている。彼女が、「アメリカンドリームの体現者」であり、古い人種差別を克服して社会の頂点に来たことは、オバマ大統領の後を追う経歴であるが、少数民族が要職を占め始めていることに対して、白人側から「逆差別」という反発(backlash)が出始めたことは注目される。

ちなみに米国最高裁判所は、連邦法や州法の合憲・違憲判断を下すところであり、日本の最高裁のように下級裁判所からの上訴を審査するところではないところに大いに違いがある。その意味で、今後の、同氏に対する議会聴聞会は、アメリカ民主主義のあり方を問うものとして、またオバマ大統領の議会に対する手腕をためすものとしてもきわめて重要である。


共和党内、チェイニー対パウエル Listen to Moderates, Too

2009-05-25 | 米国・EU動向
2009年5月25日(月)

先週、グアンタナモ基地閉鎖問題で、民主党上院議員の大半が、オバマ大統領の予算案の反対に回り、党内は揺れている。この機に乗じて、共和党右派は、いっせいにオバマ大統領攻撃を強めている。

チェイニー(Dick Cheney)前副大統領は、オバマ大統領の対テロ戦略に対する批判を公に行っており、特に今回のグアンタナモ収容所の閉鎖については、公然と厳しい攻撃を加えていることを、先週取り上げたが、今度はこれに対して、ブッシュ政権下で、国務長官を務めたパウエル氏(Colin Powell)が、党内穏健派(moderates)として反論に立ち上がった。

日曜日の全米に放送されたTV番組で、同氏は、「共和党は、ヒステリックで、ご都合主義の(shrill and judgmental)な一派の声に支配されて、右に振れすぎている。そのために共和党は、多数党になれる地位を失いかけている」と批判したのである。

これに対して、チェイニー元副大統領は、別のTV番組で、極右として定評のあるコメンテーターRush Limbaugh氏と一緒になって、パウエル氏を言いたい放題で、こき下ろしたのである。いわく、「パウエル氏が、まだ共和党員かどうかわからない。大統領選挙では、オバマを支持したではないか。黒人同志という理由で。パウエルは、ただのアカだ。("just another liberal")」

これらの声に対して、パウエル氏は、はるかに冷静な反論を試みている。「このまま、右に振れた党を放置すれば、支持基盤は狭いものになり、地域的にも限定的な二流に堕してしまう」。

「わたしは、彼らの言う意味での共和党の範疇外なのかもしれない。(I may be out of their version of the Republican Party)、しかし共和党を再生させていく別の形があってもよいのだ(there's another version of the Republican Party waiting to emerge once again)

二大政党間の論争、そして党内の政策論争も活発な、米国型民主主義の典型を、日曜日のTVのトークショーが証明して見せたのである。


オバマ・チェイニー論争白熱 Cheney Continues Obama Rebuke

2009-05-22 | 米国・EU動向
2002年5月22日(金)

米国上院においてグアンタナモ収容所閉鎖のための予算処置が、90対6の大差で否決され、オバマ大統領には、「閉鎖後、容疑者をどこに移送するのか」を明確にすることが求められる事態となっている。

オバマ大統領は、昨日この問題にどう答えるかが注目されたのであるが、ワシントンにおける50分間の演説のほとんどを、オバマ政権の収容所閉鎖の正当性と、前政権の犯した過ちを攻撃することに費やし、収容者移送問題には焦点が当てられていなかった。

大統領は、「There must be "clear, defensible and lawful standards.」(誰にもはっきりわかり、求められればきちんと説明できる、合法的な拘束基準が、絶対にあるはず)と述べたにとどめ、いわば「未決囚」で、第三国への移送の可能性も難しい240 人の処置について、一部を米国内の「Supermax」と称される厳重監視の独房に移送することを考慮中とのみ言及した。。(Supermaxとは、super-maximum security(超厳重監視独房)のことを指しており、いわば「羊たちの沈黙」型の、隔離房のことであり、全米のいくつかの州の刑務所内に設置されている。)

また一部は、サウジアラビアの矯正施設に移送することも考慮中であると伝えられているが、このサウジの施設の「卒業生」は、高率で、テロ活動に戻ってしまったことが明らかになっているので効果は疑問視されている。一方、チェイニー前副大統領は、オバマ大統領の対テロ戦略に対する批判を公に行っており、特に今回のグアンタナモ収容所の閉鎖については、公然と厳しい攻撃を加えている。

昨日も、オバマ大統領の演説直後に、"It was done legally. It was done in accordance with our constitutional practices and principles" (収容所内で行われた厳しい尋問は、合法的なものであり、憲法が命じている行動と原則に合致しているものであった)と、ブッシュ政権の政策を強く擁護した。

共和党の「グアンタナモを廃止すると、テロリストが、あなたの周りをうろつくようなことになりますよ」というデマゴーグ作戦は、短期的な政治的成功を収めているように見えるが、長期的に米国民を納得させることはできるはずが無い。しかしオバマ大統領にとって、廃止を来年1月と決定した中での「テロリスト移送問題」は大きな頭痛の種となった。


オバマ初の大敗、Money to close Guantanamo denied

2009-05-21 | 米国・EU動向
2009年5月21日(木)

テロリスト容疑者を240人収容するキューバ領内のGuantánamo収容所(the detention center at Guantánamo Bay)を、来年1月22日までに閉鎖するために、オバマ大統領が議会に諮っていた80億円の予算措置を、上院が90対6の大差で否決した。オバマ政権にとって初めての議会における大敗北であり、何よりもその大差が示すように、民主党内の支持も得られなかったことの影響は大きい。

法案は、約9兆円の、イラク・アフガニスタンにおける戦費の歳出を求めるものであったが、その中に収容所閉鎖に充当する支出が含まれていたのである。先週、下院では、同様に約10兆円の戦費歳出を圧倒的多数で承認しているが、やはり「収容所閉鎖後の処置計画」がないとして、閉鎖用の歳出を除外したものとなっている。

共和党は、反オバマキャンペーンの焦点を、「収容所を閉鎖したら、テロリストは米国国土内の刑務所に収容し裁判にかけることになる。先に行けば、釈放されたテロリストが、皆さんの周りをうろつくことは、危険です」という宣伝に集中させ、世論を糾合することに成功したのである。民主党議員も地元選挙民の反感を恐れて、ほとんどが反対に回ってしまったのである。 

世論は、“We will never allow terrorists to be released in the United States.”(米国内で、テロリストが釈放される事態を許さない)という感情に支配されたということである。


民主党議員の反対の理由は、“予算法案には「閉鎖」のみが書かれており、閉鎖後の容疑者の扱いの詳細が欠落している”というものであり、閉鎖そのものに反対するものでないというのが大勢である。これを受けて、オバマ大統領は、木曜日に、「閉鎖後の処置」について詳細を発表することとなっている。

米国世論が、いかに簡単に動きうるかを示す好例でもあり、またいかにオバマ大統領が人気があろうとも、是々非々の政治が行われるという好例でもある。今日のオバマ大統領の、本件に関する演説とその後の米国議会の動きは注目に値する。

オバマ、車燃費改善革命へ toward Clean-Energy Economy

2009-05-20 | 米国・EU動向
2009年5月20日(水)

オバマ大統領は、2007年のエネルギー法(Energy Act)で定められた、燃費を、「16年モデルから順次改善し、20年までに1リットル当たり14.9キロとする」という現行規制を強化・前倒しし、「12年モデルから導入し、16年までに1リットルあたり15.1キロ」とする画期的な計画を発表した。

この計画の実施により、乗車車1台の単価は、平均で、1,300ドル上昇するが、燃費の節約で、消費者は、そのコスト上昇分を、3年で取り戻せる計算になるとの見解を発表した。そして、これから5年間に販売される車による、石油消費は180億バーレル抑えることができる計算となると。

ホワイトハウスの前庭(the White House Rose Garden)に、政界、自動車業界、労働組合の各界代表とともに現れて、記者会見したオバマ大統領は、「この計画は、昔であれば不可能としか考えられなかったもの」(the agreement that once would have been considered impossible)であり、 「ワシントンにおける政治改革の先触れをなすもの」(a harbinger of a change in the way business in Washington)と、高らかに宣言した。

連邦ベースの規制と、州ごとの異なる規制を課されることを恐れていた自動車業界は、連邦ベース規制に一本化されることを歓迎しており、自動車工業会の代表は、「ただひとつの国家計画に基いて協力体制を推進することで, 関係者全員が合意に達することになる」(We're all agreeing to work together on a national program)と賛意を表明した。

政府資金と保証で、生き残りのために悪戦苦闘中の自動車業界に、厳しい燃費規制を排除しようとしてきた過去の力は無く、オバマ大統領の、「クリーンエネルギー政策」、「グリーン革命政策」は今後さらに強い力で推進されていくであろう。アメリカは変わりつつある。

オバマ、ノートルダム大学で野次の洗礼 Anti-abortion

2009-05-18 | 米国・EU動向
2009年5月18日(月)

全米カソリック系大学の総本山とも言うべきノートルダム大学の卒業式で、名誉法学博士号を受けるために出席したオバマ大統領は、堕胎反対(anti-abortion)、ヒト幹細胞研究(embryonic stem-cell research)反対グループの、野次と怒号(hecklers)に見舞われた。

野次(hecklers)と万雷の拍手(standing ovations)のいずれかで演説をたびたび中断せざるを得なかった大統領であるが、この問題に対して、"open hearts, open minds, fair-minded words"(開かれた気持ち、開かれた考え、そして公平な言葉)で、議論をしようと呼びかけ、そして、次のように聴衆に訴えた:

「堕胎問題では、意見の一致を見ることはできないだろうが、この心の痛む意思決定を女性が、気軽に行っているはずも無いことでは同意できるだろう。堕胎問題は、道徳問題であり、心の問題でもあるのだ。だから堕胎をしなければならない女性の数を減らす努力をしよう。心もならず妊娠(unintended pregnancy)してしまう女性の数を減らそう。養子縁組の数を増やそう。出産(to term)までこぎつけられるよう女性を援助しよう」

大統領に対して、反堕胎運動家(anti-abortion activists)が、このように激しい組織的運動を、卒業式で繰り広げたのは、初めてのことであり、いかにカソリック系米国人の中で、オバマ路線に反対している勢力が強いかを示すものであるといえる。

しかし、すべてのカソリック教徒が、オバマ大統領に対して反対の態度を取っているわけでないことにも注意が必要である。カソリック教徒にも、堕胎に賛成(pro-choice)の意見を持つ人も多く、その比率は、非カソリックの比率と変わらないことが、世論調査が示しているのである。

インフレ兆候レーザービーム探査 focused like a laser beam

2009-05-16 | 米国・EU動向
2009年5月16日(土)

金曜日に、米国の景気動向を示す指標が、種々発表されたが、景気先行きを読まねばならない人たちにとって、「まだら模様」というものであった。

米国の4月の消費者物価は、主としてガソリンや電力料金などのエネルギー関連商品の値下がりを受けて、1955年以来の年率ペースである0.7%下落したが、前月比では横ばいであった。

4月には、そのエネルギー価格は、前月比2.5%下落したが、前年比では、25.2%の下落となった。これは昨年前半の原油価格の大幅な上昇との比較になるためである。

一方、住宅、食料、衣料価格は下落、一方教育と医療費は上昇、というように細かく見ると、下落一色の状況から変化が見られ始めている。

そして、常に変動の大きいエネルギーと食料をのぞいて集計される「コアインフレ率」(core prices)は、4月に前年比1.9%の上昇を記録した。しかし、これはタバコに対する税率が引き上げられたという特殊要因が寄与しているので、4月に限ってみると長期指標として参考にすることはできない。

一方、景気の先行きを示す指標として参照される消費者信頼感指数(Consumer Confidence)は、昨年9月のリーマンショック以来の最高値を記録した。また、4月の工業生産は、3月に続き収縮したが、その下落ペースは鈍化している。

こうした交錯するデータを前にして、景気動向に関する専門家の見方は割れている。先行きデフレ懸念が続くのか、それともインフレを懸念しなければならない時期にいたったのかという議論である。

連邦準備制度(FRB)は、「インフレを起こさないように景気刺激策をとることに、レーザービームのごとき注意を注いでいる」(remain focused like a laser beam)との姿勢をとっている。

そしてBernanke議長は、「経済は、指標を見る限り、安定化しつつあるが、これが回復基調に転じる様相を示したら、そのインフレ回避策をとる用意をしている」( working on plans to avert inflation in the event that recent tentative signs of economic stabiliation morph into recovery)との見解を示している。

オバマ政権は、緊急経済政策のために、金融界と自動車業界を中心に巨額の財政支出を行っている。そして、次の政治課題である、国民医療保険改革という大事業に、近々着手する。また、共和党との妥協を図るためには、大幅減税も行わねばならなくなるであろう。

現時点では、今「やむなし」と受け入れているこうした一連の経済政策であるが、巨額の財政赤字を、累積させていくことは間違いが無い。それが、将来必ず、インフレを引き起こすであろうとの「予感」が漂い始めていて、それがこのバーナンキ議長発言に、反映されているのである。


サルコジ、「トルコはEUに入れない」 Slam the door on Turkey

2009-05-14 | 米国・EU動向
2009年5月14日

欧州議会(The European Parliament)の選挙が、6月に加盟各国で五月雨式に行われて、各国に割り振られた定数に沿った議員が選出されることになる。フランスでの投票日は、6月7日となっていて、現在その選挙活動のさなかにある。

Sarkozy大統領は、キャンペーン中のさる5日に南仏の都市ニームで、欧州の独自性を打ち出すべしとした、きわめて右よりの主張を行った。特に、「トルコのEU加盟を認めてはならない」との従来主張を繰り返したことが注目される。

同大統領は、「EUを築いた人たちの精神に立ち返れ」("rediscover the spirit of the Europe of our founding fathers" )と叫び、「(目標とすべき)欧州は、幼稚な開放主義であってはならない」( "a Europe that is open, but not naiive.")と力説したのであった。

トルコや、その他非西欧諸国の加盟を認めて、欧州精神を希釈してしまうような、際限の無い拡大はもう止めにしよう」(must stop diluting itself in a never-ending enlargement)と主張して、トルコとロシアは、広域共同経済・安全保障圏構想(a common economic and security space)を形成して、域外での協調を図ることで十分であるとした。

人気凋落中のサルコジ大統領は、この反移民感情の強い南仏を選んで、国粋主義を鼓舞し、強い欧州、自立する欧州、白人・キリスト教徒のための欧州を選挙スローガンに選んだのである。ちなみに同大統領への支持率は、どの世論調査を見ても5割を割り込んでいる。

一方トルコ側は、「EUに入る希望はもはや無い」との受け止めかたが大勢を占め始めており、イランなどの周辺諸国への傾斜を強めている。ハンガリー移民の子供であるサルコジ大統領は、この重要な中東の友人を足蹴にすることにより、欧州に取り返しのつかない失敗を犯させているようだ。


オバマ、ジョークの天才 Biting and self-mocking humor

2009-05-11 | 米国・EU動向
2009年5月11日

オバマ大統領は、毎年好例のホワイトハウス担当のジャーナリストが主催する夕食会( White House Correspondents' Association dinner)に出席そのすばらしいユーモアのセンスと、自分をも笑いのタネにする余裕を見せた。

まず、「この夕食会には来たくなかった」と一発。「でも、これもブッシュ大統領から引き継いだ問題のひとつとして片付けるためにきたのだ」と会場を沸かせた。

その表情は、最初の100日を乗り切ったという自信にあふれていた。その余裕から出たジョーク:「次の100日は、もっと簡単だから, 仕事は72日で終えて、残りはお休みにする」("And on my 73rd day, I will rest.")

また、いつも演説の際に、テレプロンプターを使っていること、そしてそれが故障すると言いよどむことがある自分自身を笑いのめすために、「今日は、カンニングしないで、暗記してお話します」という傍ら、わざとテレプロンプターを音を立てて、床から出させたのである。

また自分自身の人事ミスから、なかなか商務長官を決定できなかったことを、「こんな短期間に3人も商務長官を指名した大統領はいない」といって笑いの対象にした。

また、共和党から最近民主党に鞍替えして、上院における民主党の絶対多数確保に一歩前進させた79歳のArlen Specter 議員を、民主党がfresh, young facesを入れている努力の表れであると。

そして、夕食会のエンターテイナーとして呼ばれたWanda Sykesからは、訪欧の際、バッキンガム宮殿で、エリザベス女王にメードインUSA製品として誇らしげにiPhoneを贈ったこと、さらに、first lady Michelle Obamaが、女王の背中をポンとたたいたことを「あれじゃ、まるでホームベースに滑り込みセーフをになった女王に、“やったぜー,女王”("like she just slid into home plate — way to go, queen!")といったみたいだったわね」と痛烈にからかわれた。

次々と繰り出される大統領の高級なジョークはすばらしかった。しかし、オバマ大統領は、最後に、最近経営危機に陥っているメディアについて、きわめてまじめな口調に戻って、「メディアの存在があるからこそ、政府の人間が説明責任を果たせるのだ」と応援演説を行ったのである。(praising journalists for holding government officials accountable.)


オバマ税制改革、企業との対決を覚悟 A sweeping crackdown

2009-05-05 | 米国・EU動向
2009年5月5日(火)

オバマ大統領は、いよいよ非常に大きな仕事に挑戦することを決心した。米国の多国籍企業(multinationals)の海外所得に対する特典を廃止するとともに、国際的な租税回避国(tax haven)への監視を強化する方針を明確化したのである。

昨日、記者会見でオバマ大統領は、「この方策により、今後10年間に21兆円の税金が国庫に戻り、国外に流出していた雇用機会が米国に戻るだろう(to create jobs in Buffalo, New York, rather than in Bangalore, India)」と語った。

また、オバマ大統領は、アイルランド、オランダ、バーミューダを名指しし、これらの国で申告されている米国企業の所得は、全海外所得の3分の1に達していることを指摘した。そしてこうした国を利用している、企業に対する実効税率が70兆円の所得に対して、たった2.3%に過ぎないという租税回避状況(tax avoidance)を是正するとの強い意思を明確にしたのである。

そしてケイマンの、ある建物の中には18,000ものの会社が登記している例をあげ、「これは世界で一番大きい建物か、世界で一番大きな脱税スキャンダルのいずれかだ」(“Either this is the biggest building in the world or it is the biggest tax scam in the world,”)と非難した。

オバマ大統領は、海外で支払った税金を控除する現行税制を改正して、脱税(tax evasion)を阻止し、租税回避国に流出している税収を取り戻すことを立法化して、2011年から新制度を導入するとしている。

当然、企業社会からは、米国の多国籍企業活動の国際競争力に悪影響があると、強い反対の声がいっせいに上がり始めている。特に現在の不況の中では、「the wrong idea, at the wrong time for the wrong reasonsだ」とする反対のロビー活動が、議会に対して繰り広げられることは必至である。

上院で、絶対多数super majorityとなる60人を確保することに目途がついた、オバマ政権はいよいよ、「米国株式会社」(Corporate America)に対して、対決姿勢を鮮明にしたということである。


サッチャー首相就任30周年 The closing of the Thatcher era

2009-05-03 | 米国・EU動向
2009年5月3日(日)

30年前の、1979年5月3日は、Margaret Thatcher率いる英国保守党が、総選挙で勝利し、首相就任を事実上決定的にした日である。同首相は、経済学者Milton Friedmanが唱導した新自由主義Neo-liberalismを信奉し、小さい政府、高額所得者の減税、投資優遇税制、労組支配からの脱却という政治信条を機軸に、民営化privatization、規制緩和・撤廃deregulation、市場経済market economyといった市場経済にベースをおく政策を強力に推進した。

さらには、戦後英国を実質支配していた労働組合を封じ込め、過度の社会福祉政から大きく方向転換し、財政均衡を図って、いわゆる「英国病」the British diseaseを、いわば外科手術によって治療し、英国を世界の政治・経済の舞台に引き戻した功績が、称揚されてきた。

しかし、2007年に端を発する経済混乱は、市場原理主義と金融資本主義の失敗の結果であり、金融機関トップをはじめとする金融界の道徳・倫理の堕落を招いたと非難される事態となっている。そして、30周年の今日をもって「サッチャー時代の終焉」The closing of the Thatcher eraと、数日前のFinancial Timesが見出しに掲げて特集を組んだのであった。

現在、世界経済の市場原理主義からの巻き戻しrewindingが急速に進行しており、それは三つのkeywordsで端的に表されている:それらは、①de-globalization、②de-leveraging、③re-regulationである。そして、「節約と節制」を旨とする、新資本主義が到着したのである。

それに対抗するかのごとく、広告代理店大手のSaatchiが、昨日Financial Timesの一面を買い切って、サッチャー擁護の広告を出した。その大きな見出しを、”Saatchi on Thatcher”「サーチがサッチャーを語る」としたのである。明日すなわちサッチャーの首相就任日の4日に、サッチャー擁護記事の本文が掲載されるとの予告であった。

オバマ、議会対策に朗報 A 60-seat Super Majority in Senate

2009-04-30 | 米国・EU動向
2009年4月30日(木)

ペンシルバニア州選出の79歳のベテラン共和党議員、Specter氏が、今週に入って、共和党から民主党に鞍替えすると発表した。これにより、オバマ政権は、上院で,共和党が妨害演説戦術(filibuster)による法案通過阻止をできなくなる60議席確保に向けて、大きく前進した。

同議員は、先にオバマ大統領の緊急経済対策としての7,870億ドルの景気刺激予算案に、共和党から賛成票を投じた3人のうちの一人であり、今回の同議員の、共和党離脱の弁は、「1980年の選挙で当選してレーガン政権に協力することから政治に関与してきたが、今日の共和党は、右にぶれすぎた(moved far to the right)」という趣旨のものであった。

現在民主党は下院で多数を抑えて安泰であるが、上院では100のうち58議席を押さえているものの、妨害戦術を受けることなく迅速に法案を通せる60議席(filibuster-proof)にあと一息というところであった。今回のSpecter議員の入党に加えて、ミネソタ州上院議員選挙に関する法的な問題を解決することができれば、民主党議員Al Franklin氏を上院議員とすることができ、60議席を確保できることに、民主党は自信を深めている。

就任以来100日を迎えるオバマ大統領には、経済政策、外交政策、健康保険制度改革など、国政上の問題が山積する中、この上ないお祝いとなった。


オバマ、専用機NY低空飛行に激怒 The President was furious

2009-04-29 | 米国・EU動向
2009年4月29日(水)

大統領専用機'Air Force One'が、NY上空を超低空で飛行し、NYと対岸のNew Jerseyの住民を、9/11の再来かと、恐怖に陥れ、事務所ビルから退避するなどの混乱を引き起こした。そしてその飛行の理由が、Air Force Oneの写真アルバムの更新のための写真撮影であり、政府許可済み(a classified, government-sanctioned photo shoot)であったと、ホワイトハウスの責任者が認めたのである。

この飛行については、連邦航空局(Federal Aviation Agency)の飛行許可も取っており、上級の警備当局には事前通告が行われたが、下位の地方関係機関には通知しないようにとの命令(directives)がついていたことが騒ぎを大きくしたのである。

YouTubeに、マンハッタン上空を超低空飛行するジャンボジェットが映し出されたこともあって、広くホワイトハウスの判断ミスを非難する声が即座に広がり、Obama大統領や、Michael Bloombergニューヨーク市長が、直ちに「激怒」を露にしたのであった。そして、ホワイトハウスの担当官は、即座に謝罪を表明した。

オバマ大統領は激怒(outrage)し、一体なぜこのようなことが起こったのかを調査するように指示をだすとともに、記者団には、”It will not happen again”(二度とこのようなことは起こさせない)と語ったのである。

ブルームバーグ市長は、「自分に事前報告がなかったことは想像を超えている」(It defies the imagination)と怒り、「’perturbed’だ、いや’annoyed’だ、いや’furious’だ」(心がかき乱された、いや不快だ、いやはらわたが煮えくり返る)と語ったのである。

関係者は、口を極めて非難しているのであるが、その攻撃語彙の豊富なところは英語の大きな特徴である。

Ridiculous and poor judgment: 笑止千万の思慮の足りない判断ミス
An absolute travesty: この上ない茶番劇
Crass insensitivity":恐るべき鈍感さ
Felony stupidity:重罪と呼ぶべきバカさ加減

アフガンはイラクより手強い A More Difficult Problem Set

2009-04-25 | 米国・EU動向
2009年4月25日(土)

ペトレイアス中央軍司令官は、金曜日、アフガニスタンの状況を、「アフガニスタンは、世界で最も、多国籍の過激派(transnational extremist)の脅威にさらされている場所である」と米国下院歳出小委員会で語った。

同司令官の議会証言の目的は、オバマ大統領のアフガニスタン政策を全面的に支持するとともに、その勝利のためには、単に、兵力の増強だけではすまないということを、議会に訴え、幅広い民生安定のための予算措置を求めることにあった。

そのために、同司令官は、イラクで行ってきたように、アフガニスタン人自らによる国軍の創設が必須であることを訴えると同時に、イラク以上の問題を解決しなければならぬことを力説したのである。

それを、同長官は、「より困難な一連の問題点」(a more difficult problem set)と表現したのであるが、その中味として、海のない陸封国であること、イラクのような石油・ガス資源がないこと、チグリス・ユーフラテス川のような大河が流れていないこと、教育を受けた人的資源に乏しいことを挙げた。そして何よりもきちんとした政体に統治された経験(the muscle memory of a strong government)がないことに言及したことは注目される。

そして、アフガンでの戦いが、" very, very hard”になるであろうとして、米国は「腹をすえた長期戦の覚悟」( sustained, substantial commitment.)をしなければならないと熱弁をふるったのである。

オバマ大統領は、21000人の米国兵のアフガン増派を決めて、NATO諸国も協力姿勢を示している。一方、平定されたかに見えたバグダッドでは先週自爆テロが相次ぎ、またパキスタンではタリバン勢力の活動が活発化している。オバマ大統領のアフガン平定作戦が、次第に「ブッシュ大統領のイラク」化、いや「60年代のケネディ大統領にとってのベトナム」化の再現とならないという保証はない。