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世界の動きを英語で追う

世界と日本の最新のできごとを、英語のキーワードを軸にして取り上げます。

オバマ、カード規制に乗り出す Abusive Card Lending

2009-04-24 | 米国・EU動向
2009年4月24日(金)

オバマ大統領は、Amexなどのクレジットカード発行会社や、その業界団体幹部をホワイトハウスに招いて、オバマ政権がクレジットカードに関して、消費者保護政策を進めることを宣言し、法外な遅延金利請求(abusive lending)を止めるよう業界の自粛を促した。

具体的には、利用者に課している一方的な金利(unfair rate increases)や、支払い遅延に対する法外な遅延金利(abusive fees and penalties)の撤廃である。ABC放送が取り上げている消費者の苦情によると、一回の遅延ですら突然遅延金利が引き上げられ、そのレベルも23%から29%に達しているという。

さらに、オバマ大統領は消費者保護の観点から、契約条件を利用者にとってわかりやすいものにするように強く求めた。細かい字(fine print)で書かれた約款で、消費者を欺いてはならないとして、透明性の高い(transparency and clarity)のあるわかりやすく(easy-to-understand)、簡明な(plain-vanilla)契約書の作成を義務付けるとしたのである。

現在、そのような趣旨の立法化措置が議会で進行中であるが、国民の税金で、巨額の救済資金の注入を受けている銀行が、このような法外な条件を消費者に押し付けているのは、許せないというのが規制強化の背景にある国民感情である。

これに対する金融界は、政府資金を早期に返済して納税者に報いるためには、リスクに見合った金利を請求しなければ経営できないと反論して、規制強化に反対するロビー活動を行っている。

米国では、消費者は、一人で多数のカードを所有して、分割払いにすることで実質的には、銀行からの借り入れの代用にしている人が多い。とくに、昨年までのバブル期にはそうした人は、たくさんいて、多少の高い金利を払っても、消費優先のライフスタイルをとってきた。

ところが、住宅関連でサブプライムローンを払えなくなった人が多発してバブルが崩壊したのと同様に、クレジットカードの支払い不能の事態も深刻である。バンクオブアメリカは、第四半期に、クレジットカードの事故が3800億円に達しており、これは昨年同期の1400億円の倍以上のレベルに達しているのである。

金融界は、ロビーストを通して、「規制を強化するなら、クレジットカードによる貸し出しを抑制するよりほかない」との主張を繰り広げている。しかし、オバマ大統領との会談を終えて出てきた金融界の代表者たちは、記者団にたいして一切の発言を行わず、その場を去った。一方、オバマ大統領は、「会談は、建設的(constructive)であった」と、記者会見で語った。



オバマ、「拷問」糾弾に転換 Enhanced Interrogation Technique

2009-04-23 | 米国・EU動向
2009年4月23日(木)

9/11事件以降、捕縛したテロ容疑者を、イラク国内のAbu Ghraib刑務所と、キューバのGuantanamo Bay刑務所に収容し、きわめて「厳しい尋問」を行ってアルカイダの関与を取り調べ、幹部の逮捕につなげる情報の収集に当たり、「成果」を挙げたとするのが、当時のブッシュ大統領や、チェイニー副大統領、ラムズフェルド国防長官の一貫した主張であった。

ブッシュ政権当時から、捕虜に対する非人道的な取り扱い(abusive detention)や、過酷な取調べ方法(abusive interrogation)についての映像や証言が世界のメディアに流出してきたが、これらの残虐行為は、ラムズフェルド長官の言葉のように、“the work of a few bad apples”(少数の腐ったりんごの所業)に過ぎないと片付けられてきた。

オバマ大統領は、すでにこの問題については、「拷問」と位置づけその行為を禁止するのみならず、「拷問メモ」(torture memos)と称されるブッシュ政権の秘密文書を公開(declassified)させた。この文書こそ、”enhanced interrogation technique”(強力な尋問方法)と、婉曲表現された拷問の実行指示書である。Enhancedとは、すでに明らかにされているように、目隠しされた捕虜に水をかけ続け窒息の恐怖を味合わせるwaterboardingと呼ばれる「拷問」を含んでいる。

当初オバマ大統領は、拷問行為を許可し実行したものを訴追しない方針であるとしてきた。しかし昨日発表された上院軍事委員会の報告で、2年間の調査内容が公開されるにおよび、その立場を変更し、訴追するか否かは、検事総長の決定次第であること、さらには拷問を合法的行為であると法的な根拠を与えた者たちは訴追されるべきであると、民主党内部の左派や、人権団体からの圧力に応じる政策に転じた。

オバマ大統領は、軍部やCIAからの、「秘密情報の公開や、実行者の訴追がその軍事作戦の実行を困難にさせる」との強力な反対に抗し、「良い拷問」の存在を肯定するに等しいことはできないという政策原点に回帰したのである。

オバマ大統領が、「拷問国家の汚名」を返上しなければならないという差し迫った局面に追い込まれて、アメリカの民主主義国家としてのイメージ回復を、優先課題として前面に押し出したことを、世界と歴史は評価するであろう。

オバマ、キューバ政策転換 The Ball Squarely in Cuba’s Court

2009-04-18 | 米国・EU動向
2009年4月18日(土)

週末にトリニダード・トバゴで開催されるラ米・カリブ海諸国(Latin American and Caribbean nations)首脳会議には、33カ国の代表が参加する。この会議にはキューバは招待されていないが、オバマ大統領は、米国の善意のしるし(a show of good faith)として、対キューバ外交の大転換を図る政策を、次々と打ちだす構えを取っている。

両国首脳が、この雪解け(thawing)をいかに扱っているかは、外交の妙味といえるものであり、50年の隣国同士のわだかまりが、いかに解けていくかを示していて大変興味深いので、今週の動きを、時間を追ってみてみよう。

まず、オバマ大統領が、突然発表した、在米キューバ系市民の里帰り制限撤廃であり、ドル送金制限の撤廃である。これは、まさに1962年に、米国が経済封鎖をキューバに課して以来50年ぶりの外交政策の大転換であるといえる。しかし、フィデル・カストロ前国家評議会議長は、「施し物に決して手を伸ばさない」と反発し、経済封鎖の完全解除が関係正常化の前提だと立場を、共産党系の新聞に論文の形で意見を出した。

これに対して、オバマ大統領は、「更なる関係改善には、政治犯の釈放と、言論の自由の保障などの、人権政策の転換が、条件である」(in the interests of "a further thawing of relations.")と釘をさした。そして「キューバがchangeできるかどうかだ」(to see whether Cuba is also ready to change)と、ボールを、キューバのコートに打ち返したのである。(Placed the ball squarely in Cuba’s court)

間髪をいれず、オバマ大統領の言葉に対して、フィデルの弟のラウル・カストロ大統領が、「米国が望むなら、人権問題でも政治犯の釈放問題でも、何でも話し合う用意がある」との声明を返したところ、直ちにクリントン国務長官は、ドミニカで公開の席上で、「米国のキューバ政策は破綻した。(U.S. policy toward Cuba has "failed")」と認めた上で、ラウル大統領の言葉を、「今後の広範な話し合いの序曲(overture)だ」と歓迎の意を表したのである。

ラテンアメリカに立ち込める、チャベス・ベネズエラ大統領に代表される反米連合の状況を、オバマ大統領がいかに打破できるか、会議の結果はきわめて重要で、注視に値する。


サルコジ:「オバマは経験不足」 Sarkozy: “Me, Myself and I”

2009-04-17 | 米国・EU動向
2009年4月17日(金)

野党代表を、エリゼー宮に招いてサルコジ大統領は昼食会を主催したのであるが、その席上で、米国、スペイン、ドイツの首脳を、言いたい放題、遠慮会釈なく切って捨てたのである。Financial Timesは、皮肉をこめて、「大したものだ」(quite an achievement)と評している。

「オバマ大統領は、決定能力やその有効性といった点で(政治家として)期待されるレベルに達していない」。普段から口の悪いサルコジ大統領であるが、さらに続けて「オバマ大統領は、経験不足(inexperienced)で、迷いがある(hesitant)、そしていくつかの政策課題では態度がはっきりしていない(vague)」とまで言ってのけたのである。

「メルケル・ドイツ首相は、ドイツの銀行の経営危機に適切に対処できず、結局私の真似をせざるを得なくなった。昨秋から欧州を飲み込んだ危機に対する見通し(foresight)を、私のようには持ち合わせていなかったからだ」。そして、「サバテロ・スペイン首相は、頭が悪い(lacked brain power)」とこきおろし、悪口のボルテージは上がったのである。こんなことを言っては、スペインやドイツという隣国との外交関係は確実に悪化することは間違いがない。

昼食会の席に野党代表が含まれていたので、サルコジ大統領の発言が、メディアに流出したのであるが、左翼系の日刊紙Liberationは、「サルコジのミーイズムのオンパレード」(a festival of me, myself and I)であり、「手柄話の自己顕示」(display of self-congratulation)と手厳しく批判している。

サルコジ大統領の、口の悪さは、フランスの負債( a liability)になってきたようである。

オバマ、減税策発表 Simplify a monstrous tax code

2009-04-16 | 米国・EU動向
2009年4月29日(木)

オバマ大統領は、6点からなる減税政策と、税法の簡素化を発表した。その6点とは;

① 米国の労働者の95%を対象とする、1,200億ドル(12兆円)の減税
② 零細企業の損金の5年間の持ち越し
③ 学生の税優遇
④ はじめて住宅を購入した人への、80万円の税金還付
⑤ 海外にアウトソースしている企業への税優遇措置の廃止
⑥ 所得上位2%への減税措置の廃止
である。

さらに、税金還付の手続きを簡素化することを宣言した。米国では4月15日は、’Tax Day’と呼ばれているが、還付の申請手続きの期限である。手続き書類は、きわめて複雑(monstrous tax code)で、ほとんどの人が自らその書類を自分で作る国民に対する、オバマ大統領の「4月15日が近づいても、もう恐れることが無いようにする」(April 15th is not a date that is approached with dread every year.)という配慮である。この日を選んで、減税策を発表し、国民の頭痛の種をなくすと発表するのは、考え抜かれた演出である。

また、この日を選んだ理由はもうひとつある。この日、共和党員を中心に組織された、全国規模で行われたオバマ政権に対する最初の反対運動を意識したのである。その反対運動は、「現在の、経済緊急政策が、将来の巨額の増税を意味するものである」とのスローガンの下に結成され、The Tea Party Protestsと名づけられている。

この名前は、アメリカ独立運動のきっかけとなった、1773年のthe Boston Tea Party(ボストン茶会事件)になぞらえてつけられたものである。英国政府の植民地アメリカに対する、不公平で、恣意的な課税政策に怒った市民の反乱であった。(首謀者Samuel Adamsは、ボストン市民にとって英雄であり、今では、人気の地ビールのブランドにもなっている)。

大きな政府・増税の民主党、小さな政府・減税の共和党というステレオタイプの分類に挑戦しようというオバマ大統領の大減税政策の、議会での今後の審議がどうなるか注視しよう。

オバマ、緊急経済政策の効果を強調 Wary Optimism

2009-04-15 | 米国・EU動向
2009年4月15日(水)

大統領就任後85日の、オバマ大統領は、Georgetown Universityで演説し、7870億ドルの経済刺激策、7000億ドルの銀行への資本注入、700億ドルの住宅ローン救済と自動車業界への支援策が、効果を発揮し出した(generate signs of economic progress)と高らかに宣言した。TVに写された同大統領の弁舌は、いつものごとくどこまでもさわやかで、なめらかであった。

そして、この救済策が、巨大な赤字財政をつくり出していることへの批判に対しては、「大不況のさなかに、政府がもっともしてはならないことは、支出の削減である」と確固たる反論を表明した。

その演説の基調にあるのは、「経済回復の兆し(green shoots)が、きらめく希望の光(glimmer of hope)となってきた」というわけであるが、同時に、過大な期待は禁物(warn against expectations of a rapid recovery)と戒め、これからも、「失業、差し押さえ、苦痛がまだまだ続く」と、釘をさしたのである。

銀行を〔リーマンのようには〕破産させないことや、国有化によって事態の収束を図らないことについては、銀行を重病人にたとえた話を持ち出している。確かに銀行は今、厳重な、”stress test”と呼ばれる、健康診断を受けさせられているのである。

オバマ大統領は、「われわれは、医者の立場と同じだ。まず、治療行為で患者に危害があってはならない(do no harm)。最初から国有化などしたら(pre-emptive takeovers)、銀行側の自信とやる気を失わせて、結局は納税者の金をもっとつぎ込むことになると信じるからだ」と自分の政策を弁護した。

一方、3月の消費者支出は、1.1%減少し、このところ回復の兆を示すデータと、悪化を示すデータが交錯している。今朝のABC放送は、この演説を評して「オバマ大統領は、正反対のメッセージを同時に国民に送った」(Mixed Messages)と、論評している。

真実は、『米国景気は、昨年末の底なし沼は脱したようにも見えるが、まだ方向感はつかめぬ状態』にあるというべきなのであろうか。Financial Timesはそれを、おっかなびっくりの楽観主義(wary optimism)と呼んでいる。


オバマ、経済先行きに「希望の光」を見る Glimmers of Hope

2009-04-11 | 米国・EU動向
2009年4月11日(土)

オバマ大統領は、記者会見で、200兆円にも達する経済刺激策が、効きはじめ(kicking in ), 経済の先行きに「希望の光のきらめき)」(glimmers of hope)が見え始めたと語った。そしてこれから数週間にわたって、更なる対策を発表していくとの決意も同時に表明した。

米国政府の、景気対策とりわけ金融界への救済政策には、今月末に予定されている、銀行に対する経営健全度審査の結果発表が決定的な意味をもっている。その結果はそろそろ出始めるのであるが、オバマ政権は、対象19行の結果が出揃うまでは、個々に発表しないようかん口令を引いている。( 2月26日付けの本欄「米政府、大手銀行を過負荷試験に」参照)

さて、このオバマ大統領の「希望の光」発言は、今週発表された、連邦準備制度(Federal Reserve Board:FRB)の、3月度連邦公開市場委員会議事録に基づいている。この議事録によると、「米国の不況(recession)は、年内に底を打ち(expected to ease)、景気は来年徐々に(slowly)上向きに転じるであろう」との見解が示されているのである。

しかし、議事録の詳細を読むと,直近の経済情勢の分析には、次のような厳しい言葉が連なっている。(議事録はFRBのHPに全文が公開されている)

「2007年12月から後退局面に入った米国経済の見通しは極度に不透明(significant uncertainty)である」、「委員のほとんどが、直近では下振れリスクが支配する状況(predominating downside risks)であると見ている」、「なぜならば失業率の増加とGNPの収縮が、消費と投資に悪影響を及ぼし、さらに金融機関の経営悪化につながれば更なる信用収縮を引き起こすからである」。

ここで使われている言葉は、”adverse negative feedback”である。通常は負のフィードバック(negative feedback)がかかれば、システムは安定化に向かうが、経済のすべての要素が、収縮に向かうという、「悪しき(adverse)フィードバック」 がかかってしまう状況だと分析しているのである。

FRBの発表する文書の英語は、一語一語に計算された意味がこめられているので、非専門家に読み解くのは容易ではない。日銀の発表が、以って回った表現になっているのは、この「FRB語」の日本語版であると思えばよいのである。


米国電力、サイバーテロ標的に Cyber Attackers

2009-04-09 | 米国・EU動向
2009年4月9日(木)

中国やロシアに発信源があると見られる、ハッカーが、米国の電力会社、水道、下水などの公共設備の制御システムに侵入する例が、最近多発して、全米で2008年だけで7万件に達しているとウォールストリート・ジャーナルが伝えている。

CIAやその他の治安機関が検知した例によると、侵入して破壊工作をした例はないが、破壊工作が可能なソフトウェアをシステム内にそっと置いていくのだということである。一朝ことあれば、中国やロシアから、これらのソフトに作動する命令が出て、電力システムの破壊ができるようにセットされているので、米国の社会システムは、常時このような、起爆装置のついた爆弾が埋め込まれているようなものである。

ブッシュ政権時に、約1.7兆円の対サイバーテロ対策のための秘密予算が組まれており、オバマ政権もそれを引き継いでいるが、これからもさらに米国の安全保障の観点から予防措置が強化されると予測される。

先週、上院の民主党は、公共施設のサイバー攻撃対策のための規制を導入すること、さらには、大統領に電力システムが危険にさらされた場合の非常時権限を付与するという決議案が提出されている。また、すでにFERC(連邦電力規制委員会)は、昨年1月に、電力会社のコンピュータシステムの設置・運営基準の強化を指示している。さらに、今週火曜日には、NERC(電力会社が結成している電力システムの安全運用のための組織)は、サイバーテロに対する対策研究の強化を打ち出している。

ちなみに、中国・ロシア両国政府はともに、関与を全面的に否定しているのは言うまでもないことである。


サルコジは、G20で席を蹴るか? “An Empty Chair”

2009-04-02 | 米国・EU動向
2009年4月2日(木)

本日ロンドンで開催のG20金融サミットを前に、フランス流の「サルコジ芝居」が演じられている。「もしフランスの言い分が通らなければ、席を蹴って(there would be an empty chair)、その場から退場する(walk-out)。」と閣議で宣言し、同様趣旨の発言を、記者団にも話し、閣僚もその意図を会見でその発言を肯定している。

1965年に、当時のドゴール大統領が、現在のEUの前身EECから一時離脱したことを彷彿とさせる、いつもの「何でもアングロサクソンには反対する」フランス流に過ぎないと見るのが大方である。しかしTVに写されたサルコジ大統領の表情からは、今回はやりかねないという勢いを感じさせる。

フランスが最も強く主張するところは、「今回の経済危機は、米国の金融機関規制の甘さが引き起こした」ものであり、「ヘッジファンドを規制し、デリバティブ取引の決済機関を創設し、放埓経営の原因となった銀行経営者報酬を規制セよ」ということに尽きる。

この主張は、ドイツのメルケル首相の同調をえているが、アングロサクソン流の基底にある「過度の規制は資本主義の活力をそぐ」という立場をとる英国と対立する。一方、オバマ大統領は、共和党の反対を押し切って、規制強化政策をとっているので、サルコジ大統領の考える方向へと総論は動いているが、今回各論のつめができるとは思えない。

米国と、欧州がもっとも大きく対立するのは、オバマ大統領が提唱する、巨額財政赤字を辞さない「強固なる協調的財政出動による景気刺激策」(a robust coordinated stimulus)に対してである。「この危機を作り出した米国が、どの顔をして、各国に赤字財政予算を組むべきだ」と説教できるのかとの、強い怒りが底流にあるのである。

今回オバマ大統領は、その個人的人気はさておき、サルコジ大統領の発言に代表される反米感情の標的になる可能性が高い。欧州諸国が、長いあいだ鬱々と抑えてきた「米国の説教」(long pent-up resentment at the US’s evangelical approach)に対する怒りの標的である。

オバマ大統領の8日間訪欧日程 If it’s Tuesday,

2009-03-31 | 米国・EU動向
2009年3月31日(火)

オバマ大統領は、火曜日に最初の重要な8日間の外遊に出発する。(正確には、最初の海外訪問は就任直後のカナダ日帰り訪問であったが)

その日程を見ることで、米国外交政策の重要案件(agenda)が浮かび上がってくる。

火曜日:夜にロンドン着
水曜日:ブラウン首相と官邸で朝食会、その後メドベージェフ・ロシア大統領との会合、胡錦涛主席との会と続く。そしてエリザベス女王との会見が予定されている。

木曜日:G20会議

金曜日:ストラスブール(仏)へ移動して、サルコジ仏大統領と会合。その後直ちにヘリコプターでバーデン・バーデン(独)へ移動して、メルケル独首相と会合。

土曜日:NATO首脳会議。

日曜日:プラハにて、米国―EUサミット。

月曜日:イスタンブールとアンカラで2日間のトルコ訪問。

今回の訪問国として注目されるのが、チェコとトルコである。両国ともに、今後の米国の、軍事戦略に大きな意味を持っている事実が、見事に浮上しているのである。チェコは対イランミサイル防衛網の設置予定国のひとつであり、トルコは、オバマ政権のアフガニスタン「平定」作戦の展開のための軍事拠点としてきわめて重要となるからである。(3月8日の本欄、「トルコの戦略価値上昇」参照)

なお、Financial Timesが、見出しに使ったIf it's Tuesday,は、昔のヒット映画(1969)の題名’If it's Tuesday, This must be Belgium’のもじりである。

オバマ大統領、G20訪欧の途へ Call for G20 'Unity'

2009-03-31 | 米国・EU動向
2009年3月31日(火)

Financial Timesの力にはすごいものがある。ロンドンで2日(木)に開催されるG20サミット会議に、本日出発するオバマ大統領と、ホワイトハウスで単独会見を許されたのである。

そして、『この危機に際して、われわれのもっとも重要な責務は、G20諸国が団結しているという強いメッセージ(deliver a strong message of unity)を世界に送ることだ』というオバマ大統領の発言を世界に伝える役割を担ったのである。

オバマ大統領は、超大型の緊急経済対策を打ち出し、それに呼応した対策をEU側に求めているが、EUとくに独仏両国は懐疑的な態度をとっている。『対立』とまでは表立った関係悪化までは進んでいないが、意見の『相違』は確かに存在する。

一方同紙は、先週には、ドイツのメルケル首相との単独会見にも成功しており、”3週間前にあれほど激しく、危機対応策に関して論争していた米国とEUはいまや、その痕跡を見出すのは難しいくらいである”と論評したうえで、『米国とEUは、互いに争うのではなく、共通の意思決定をしようと会議に臨むのだ』との同首相の言葉を冒頭に紹介している。

また同紙は、G20のコミュニケの草案をすでに入手しており、その中には、「EU側が抵抗している、大型経済刺激策(stimulus package)に関する各国の財政出動の詳細」は含まれていない、とも報じている。

米国側にくすぶる、米国の景気刺激支出に、EUはただ乗りしている(free-riding)という不満が、今回解消することは多分ないのであろう。

いずれにせよ、Financial Timesが、アングロサクソン型資本主義の唱導者であることが、今回のオバマ大統領が、単独会見を許した大きな理由であることは間違いが無い。

オバマの怒り Obama: your anger, Clinton: your pain

2009-03-20 | 米国・EU動向
2009年3月20日(金)

とにかくスケールの大きい話である。17兆円の政府からの救済資金注入を受けたAIGが、損失を発生させた社員に、合計160億円のボーナスを払う。それが法治社会アメリカの決めごとであり、「この”the best and the brightest”なくして、納税者に報いる道はない」ということだ、と議会で証言する同社のトップの表情は世界に伝えられた。

アメリカンドリームの実態が、会社のトップに昇りつめて、巨額の報酬と、数々の役得と、贅沢な社長室(最高幹部には、top floor、ミドルにはcorner office)を獲得することであることを世界に教えたAIGのCEOは正直である。Hollywood映画が描いてきた世界は、虚妄ではなかったのである。

同氏は、金融資本主義の本質を世界に向かって、議会証言を以って教えてくれたのである。21世紀初頭の、エンロンや、ワールドコムのトップは犯罪的な、私欲充足を責められたのであるが、さすが学習効果は満点の人々が、合法的私物化の手本を示してくれた。

オバマ大統領は、怒りをあらわにして、選挙民に訴えている。「あなたがたが、怒っているように、私も激怒(outraged)している」というのが、同大統領のメッセージである。Financial Timesは、クリントンは、「皆さんの痛み(pain)はわかる」大統領だったが、オバマは、「あなたの怒り(anger)はわかる大統領」だと論評している。

怒っているのは、大統領だけではない。ウォールストリートの盟友、共和党も過去の発言に口をぬぐって、「オバマは、巨額ボーナスを見過ごして、3000億円の追加支援をしたのはけしからん」と怒って見せるのである。政治的な「怒りの標的転換」というべきものである。

フランス人、NATO復帰に怒る Angry backlash

2009-03-13 | 米国・EU動向
2009年3月13日(金)

サルコジ・フランス大統領は、今週突然、「フランスは、NATOへ43年ぶりに復帰する」と宣言して、世界を驚かせたが、何よりもフランス国民を驚かせた。そして、中道右派の与党内部からすら強い反発(angry backrash)が沸き起こっているのである。

フランス救国の父であり英雄、ドゴール大統領が、戦後の米国による一国支配、とりわけ欧州の米国外交政策への従属からフランスを解放するために、NATOから離脱し、米軍を撤退させたあのフランスの心意気はどこへ行ったのだというフランス人の怒りである。

フランスは、第二次大戦後、長く、米国の外交政策の批判をし、時には強い反対者によってその独自性を主張してきたのである。NATOと袂をわかっていることこそ、独立の象徴(mark of independence)なのに何たることか、との嘆きの声も聞こえる。

これに対して、サルコジ大統領は、NATOに入っていないことで、世界の中で居場所が定まらない状況と、EU内部での浮き上がった存在になっていることを解消することが必要だと主張している。

そして、ドゴール主義という孤高の政策はもはや、時代遅れの習慣(old habits)であり、自己満足(self-satisfaction)から決別しようと、国民に呼びかけているのである。

しかし、冷静に見ると、90年代から、フランスは、NATOとは、協調をとってきており、イラクにも共同派兵しているので、軍事的にはたいした変化ではないとの見方が支配的である。むしろ、本当に影響を受けるのは、フランス人から、ただでさえ「アメリカかぶれ」とみなされている大統領自身であろうとのみ方が支配的である。

「わが愛すべきドゴール将軍の伝統を壊し、アメリカに国を売った(sell-off)奴」とのレッテルを、左右両派から貼られる危険性があるということである。


オバマの「利権誘導排除宣言」 More than 8000 Earmarks

2009-03-12 | 米国・EU動向
2005年3月12日(木)

去る2月5日の本コラム「オバマ予算メタボ肥大化」でも取り上げたが、米国政府予算の審議過程では、本筋の連邦レベルでの年度支出に加えて、議員が自らの選挙区のためのお土産にする支出を、予算全体への賛成条件として押し込み、てんこ盛りにして肥大化させるのが長年の慣習となっている。

地元利益に直接結びつく支出は、boondoggle(無用の長物支出)や、pork barrel(選挙区用お土産予算)と呼ばれ、具体的な歳出として確定したものは、使途限定項目(earmarked spending)と呼ばれる。そして、出来上がったこの醜悪な予算は混載予算(omnibus budget)と呼ばれるのである。日本となんら変わらないというより、もっとあからさまな、しかも愚にもつかないような選挙民対策項目が、大手を振って入り込むのである。

昨日、オバマ大統領が署名して成立した4100億ドルの予算にも、この使途限定項目(earmarked spending)を、総額が1%以内に圧縮されたものの、8000件という多数のものを含めざるを得なかったのである。

オバマ大統領は、選挙公約に、この、Earmarkを根絶しようと主張してきた。オバマ大統領は、「このようなことはもうやめよう。この支出は、公正な入札を経ない随意契約で業者に発注されるので、不透明極まりなく、汚職の温床となってきたのであるから。」と訴えてきたのである。

今回、オバマ大統領の意に反して、earmark付になってしまったので、この予算を自ら「不完全だ」(imperfect)と評したうえで、「ただし競争入札を条件にする」と宣言し、議会側も民主党議員がこの条件を受け入れたのである。ただし効果は大いに疑問視されているのが現実である。

さて、世界に冠たる、米国憲法に基づく民主主義も仔細に見ると、このように不思議な矛盾に満ちている。オバマ大統領は、こうした矛盾と問題からの改革を、実行しようとしているのである。


米国の浪費生活終焉 Conspicuous Consumption

2009-03-10 | 米国・EU動向
2009年3月10日(火)

New York Timesが、米国人の消費態度の激変振りをルポして、「見せびらかし消費」(Conspicuous Consumption)の終焉と報じている。このconspicuous consumptionという言葉は、日常用語に見えるが、れっきとした経済学用語である。富裕層は、自らの存在を示そうとする自我の欲求から、贅沢で目立つものを買いあさる性向があり、ある面で経済活動を支えているというのが定義である。

米国人は、上昇志向とともに、Keep up with the Jones’という言い回しが示すように「隣人には負けたくない」という見栄を張って、背伸びをして生きているのである。したがって、見せびらかせる別荘、高級車や宝石は、飛ぶように売れたのが、今回の不況(recession)までのバブル時代であった。9/11事件の後、ブッシュ大統領が、米国民に「消費をして祖国を救え」と呼びかけたことも、その傾向に拍車を掛けたのである。

いまや、大不況のもと、オバマ大統領の’A New Era of Responsibility’(責任感を持たなければならない新たな時代)が到来したという呼びかけに、人々はこたえ始め、浪費をつつしみ、ものを大切にし、家族との時間をたくさん持つ方向に、人々は大きく舵をきったというのである。

すべては、大恐慌時代の再来のごとき、気分が充満している国へと変化し、そのキーワードは、’back to basics’(基本に戻ろう)である。