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世界の動きを英語で追う

世界と日本の最新のできごとを、英語のキーワードを軸にして取り上げます。

オバマ健保改革法案下院通過 This is our moment

2009-11-09 | 米国・EU動向
2009年11月9日(月)

土曜日夜に、これまで幾多の紆余曲折があって時間を要した健保改革法案がついに米国下院を通過した。

可決に必要な218票に対して、投票結果は賛成220, 反対215。民主党からは、39人が反対に回り、共和党は1人が賛成に回った。

Nancy Pelosi下院議長は、「なんてすばらしい夜でしょう」"Oh what a night!"と、直後の記者会見で感動を新たにした。民主党は、この1.2兆ドル(120兆円)の予算を要する健保改革によって、国民の96%が加入できることになり、国民一人ひとりに安心感(the peace f mind)をもたらすものだと、この法案の通過を誇っている。

一方の共和党の大半の意見は、「これは政府による健康保険制度の乗っ取り(take-over)であり、気分が悪くなった。この法律は、失業を作り出し、増税をもたらし、財政赤字を爆発させるもの"jobs-killing, tax-hiking, deficit-exploding"となる」という意見が代表している。

法案採決に先立ち、オバマ大統領は民主党下院議員を集めた非公開集会(a closed door meeting)を開き、熱っぽく法案通過の意義を語り、賛成票を投じるよう求めたことが大きな効果を発揮したようである。Nancy Pelosi下院議長は、今回の法案可決はこの説得工作にかけたオバマ大統領のおかげとまで言い切った。

オバマ大統領は、「賛成に回ると選挙民からの反対の声にさらされるかもしれない。もう疲れた、苦しい。選挙区で非難されているが、割に合わないという気持ちになっているかもしれない。

しかし、今年これを成立させないと、次のチャンスはいつ来るかわからない。現在の社会保障と老齢者健保(Medicare)を導入したときでさえ、賛成に回った人たちは、社会主義者とののしられたのだ。」と切り出し、

NY州で最近選出されたBill Owens議員をさして、「彼を見よ。この健保問題をはずして選挙戦を戦うこともできたであろうが、そうはしなかった」と称えた。

「私がホワイトハウスのthe Rose Gardenでこの法律に署名するときのことを皆さんは将来振り返って、『政治生活で最良の瞬間だった』'This was my finest moment in politics.’と必ずや回想できることを確信している」、その瞬間こそ「公僕としての議員の最高の瞬間なのだ。そしてこれは民主党議員としての最高の瞬間なのだ。これぞ公約を果たす最高の瞬間なのだ。」(This is their moment, this is our moment. ... This is our moment to deliver)と締めくくったと、伝えられている。


オバマ、ハローウィンに二千名の子供を招待 No Trick

2009-11-01 | 米国・EU動向
2009年11月1日(日)

土曜日の夜に、オバマ大統領夫妻は、ワシントンとその周辺のMaryland・Virginia両州の小学校から、2000名の児童をホワイトハウスのハローウィンに招待した。

子供たちは、アメリカでもっとも有名な玄関で、大統領一家からご褒美(goodies)をもらうために、ハローウィンのお祭りの言葉“trick-or-treat”(お菓子をくれないといたずらするぞ)の声を上げた。

庭では子供たちのためのイベントが行われて、キャンディをもらう長い行列をいちどきに作らなくてもよいようにとの配慮がなされた。この日は、子供たちにとって極めつけのご褒美(ultimate trick-or-treating treasure)となった。

正真正銘のご招待だったので、まさに'No trick'であった。

かつて、ホワイトハウスで、ハローウィンを大イベントで祝ったのは、1989年のGeorge H.W. Bush大統領が500名の児童を招待したのと、1993年にBill Clinton大統領が、ホワイトハウス邸内いっぱいにかぼちゃのお化けランタン(The Great Jack-O'-Lantern)を描くという趣向を凝らした、その2回である。

大統領一家は、この夕方の大行事の後は、ホワイトハウスのthe East Roomで、Joe Biden副大統領一家とともに、軍関係者とホワイトハウス職員の家族とのレセプションを行った。


米国政府の救済対象企業のサラリー制限 Public outrage

2009-10-28 | 米国・EU動向
2009年10月28日(水)

先週、米国政府からの救済措置(TARP: Troubled Assets Relief Program)を受け、まだその負債を返済していない金融・自動車メーカー7社の幹部25名のサラリーを平均90%カットするという厳しい処置を発表したばかりの、報酬制限監督官Kenneth Feinberg氏は、各社における次のレベルの75名、合計525名のサラリーも規制する方針を発表した。

対象の7社とは、AIG, Citigroup, Bank of America, General Motors, Chrysler, GMAC、Chrysler Financial.である。Goldman Sachs, Morgan Stanley、JPMorgan, Chaseはすでに政府に対する負債を完済しており今回の規制の対象からはずされているので、自由に報酬を決められる。

この75名のサラリーに関しては、金額上限などは設定せず、トップの25名ほどの厳格な制限は加えられない模様である。基本方針としては:
1)報酬の現金部分を極力削る

2)サラリーの一部(salaried stock)を自社株で支給するが、換金は、4年間はできないものとする

3)ボーナスは、3年以上の保有を義務付けた自社株式の形で支給するが、ただし会社が、TARPを完済するまでは換金できないものとする。

同氏は、この措置は、「高給取り」に対する「大衆の怒り」(public outrage)に答えたものではない、と強調している。そして「これを報復や懲罰(retribution、vindictiveness、punitiveness)を求める大衆への迎合だと批判するなら、政策を決めた議会の方を向いて言ってほしい。私は、白馬に乗ってここに攻め込んできた騎士ではない(I’m not riding into this on a white charger.)」と立場を説明した。

これで、政府救済を受けている企業7社の幹部合計、700名はサラリーを制限され、ボーナスは自社株でもらうが、救済資金の完済までは売却できないものとされる。
これには、各社の幹部に、TARPを完済して「自由」を得るために収益回復に全力を尽くさせようという狙いがある。



管理職報酬 Highest-Paying White-Collar Jobs in US  

2009-10-27 | 米国・EU動向
2009年10月27日(火)

雑誌Forbsのネット記事を引用してABC放送が、米国のホワイトカラー上級管理職の年俸の現況を報じている。調査会社Compdataが全米約 5,000 社を調査した結果に基づく報告である。

経営幹部として最上級はC-Classと呼ばれる、CEO・CFO・COO・CIO・CTOのタイトルをもつ人たちであるが、今回の調査対象はそのすぐ下の上級幹部が対象となっている。2009年の彼らの年俸は、平均で$97,500(約9百万円)である。これは2008年と比較すると1.2%減となっている。

調査の対象となった26職種の中でもっとも高給を取るのは、銀行マンの中で、企業への貸し出し(commercial lending)を担当する部長クラスである。5年連続でトップとなったこの職種の人たちのその平均年俸は、$128,600(約1200万円)である。

過去5年間で、もっとも大きな年俸カットを受けたのは、住宅ローン(mortgage lending)の部長で、その幅は11.8%であり、過去1年だけでも5.9%ダウンとなっている。逆に過去5年で最大の年俸増収となっているのは、「財務部長」(Finance Director)であり、その上昇幅は、35%にたっしており、ランキングも9位から5位に躍進した。

不況化で、レイオフの矢面に立たされて苦労した「人事部長」(Human Resources Manager)や、予算削減(bloodletting)のあおりを受けてやりくり苦労した「広報部長」はいずれも、最下位近くを低迷しており、その年俸は700万円相当のレベルにしか達していない。

米国の上級管理職の給与水準はこの程度のものであることがわかり、興味深い。また、上に述べたC-Classと上級管理職の報酬の間には、実に1桁の差がつくということである。さらに言えば、大手証券・銀行のCEOとは2桁の差があるということでもある。

オバマ、アフガン政策批判に苦しい防戦 the War of Necessity

2009-10-24 | 米国・EU動向
2009年10月24日(土)

アフガニスタン情勢が、大統領選挙のやり直しという予想外の事態の進展を見たことで、先延ばししてきた米軍増派の決定がさらにできなくなっている。

旧ブッシュ政権の軍事政策の中枢部を担ってきた「ネオコン」(Neo-con)グループからの、オバマ大統領の政策遂行責任を問う声が厳しくなってきた。その先頭を切るのが、チェイニー(Cheney)前副大統領である。

一方、オバマ陣営も反論のボルテージをあげている。オバマ擁護派は、「アフガン政策を誤ったのはブッシュ大統領であり、7年間にわたり無為無策であったことの結末の後始末をしているのがオバマ大統領である」と語気を強めている。

それに対しCheney氏が、「オバマ大統領は、Stanley McChrystal現地司令官の40,000人増派要請に答えていないではないか」と攻撃する。

対するオバマ派は、「30,000人の増派要請を7ヶ月もたなざらしにしたのが、Bush大統領と、Cheney副大統領だったではないか」と応酬する。

ネオコンは、「ブッシュがイラクに集中するという作戦を取ったのは正しかった。オバマは、選挙戦中はアフガニスタンに対する攻撃は不可欠だ(the war of necessity)といいながら、いまや迷いに迷っている大統領だ。まさにハムレット状態になっている」と批判する。

そしてCheney氏は、「オバマ大統領はアフガン問題で決断することを恐れている。そのために前線の軍は危険な状態に置かれている。逃げはいい加減にやめよ(Stop Dithering)」と、手厳しく批判した。

ホワイトハウスは、これに対して強烈に反撃した。報道官が記者会見して、「Cheney前副大統領からは異なこと(curious comment)を承る。7年も放置した人が何をいまさらの発言である。増派要請を8ヶ月も机の上にたなざらしにしたのは誰だったのか。そしてそれをやっと実現させたのは、オバマ大統領なのだ。8年間の責任を棚に上げておいて、何をいまさら片腹いたいことだ」

オバマ対チェイニーの口を極めた批判合戦は、5月のグアンタナモテロリスト収容所閉鎖や、拷問写真の公開をめぐって起こった論争以来続いている。そしてホワイトハウスはメディアによる批判にも神経質になっている。

先般ケネス・ファインバーグ大統領特別顧問に主要テレビ局6社の代表がインタビューする予定となったが、ホワイトハウス側が突然、日ごろから反オバマの論陣を張るFOX TV記者を入れないと反対したのである。残る5社が一致して抗議し、結局FOX TV記者も入ることになったが、これはホワイトハウス側が大人気ない挙に出たといわねばならない。

アフガニスタンの大統領選挙決戦投票は、事態をさらに泥沼化させる恐れが大である。オバマ大統領は、あまりにも明快にアフガニスタン侵攻を宣言したため自縄自縛に陥っているように見える。


ゴールドマンサックス快調、シティ不調の理由 US Divide

2009-10-16 | 米国・EU動向
2009年10月16日(金)

米国の金融機関の第3四半期の決算が続々と発表されているが、昨日のJPMorgan Chaseの好決算に続いて、Goldman Sachsが昨年同期比で4倍の収益を記録した。一方、Citiは引き続き赤字決算となった。

この状況をFinancial Timesは、「ウォールストリート、メインストリートと明暗分ける」(Wall Street recovering faster than Main Street)と表現し、「米国の分水嶺」(US Divide)と呼んでいる。

Main Streetとは、本来米国では街の中央の商店街をさす。(英国ではHigh Street) すなわち機関投資家向けの業務、大企業融資、M&Aを専門とする街Wall Streetに対して、Main Streetは、中小企業向けや、庶民の住宅ローンなどを中心とする消費者向け金融機関の代名詞としても使われる。

政府の救済資金の注入を受けた米国金融界の中でも、機関投資家や富裕層を対象とする債券の発行の引き受けや仲介取引を行うInvest Banking(投資銀行)は、Lehmanショック以来1年で回復を遂げた。

一方カードローンや、サブプライムなどの住宅金融部門を主力とするCitiの苦闘は続いている。サブプライムローンの条件緩和策を政府から命じられたあとも、個人の破産による住宅の差し押さえ(foreclosure)は記録的な数に達していて、収まる気配を見せていない。失業率が10%に近いところまで達していることが原因であるが、FRB(連邦準備制度)の予測でも来年末でも9%台となっていることが明らかになった。

政府の圧力を跳ね返して、投資銀行としての純血を守り、消費者金融から遠ざかったGoldmanの勝利であり、政府に3分の1の株式を握られて、身動き不自由なCitiの敗北とも評されている。

一方では、金融界最高幹部へのボーナス総額が昨年よりも増えて、約140 億円に達すると報じられている「会社を儲けさせた人が高額報酬で報われるのは社会の基本原理」とする米国資本主義の下では、政府救済という事実とは関係なく今期も、高額ボーナスが支給されることに変化は無い。


オバマ健保改革一歩前進 When history calls,

2009-10-14 | 米国・EU動向
2009年10月14日(水)

オバマ大統領が進める健康保険改革案が、上院の委員会審議の最後の関門である財務委員会を昨夜通過した。

通過を喜ぶ大統領ではあるが、これまでになされた上下院委員会における法案に加えられた変更や、これから待ち受けている上下両院における審議での困難を思い、物言いは極めて慎重であった。

その言葉は、「決意を新たにして、法案成立のためもっと努力をするときなのだ」(It is time to "dig in and work even harder to get this done.")と厳しい顔を崩さなかった。

一方、上院財務委員会の投票結果は、14:9であったが、賛成票の中に、Olympia Snowe共和党議員の一票が含まれていることが注目を集めている。彼女は最後までどちらに投票するかを明らかにしていなかったため、その行動は憶測を呼ぶことになったが、投票の際の発言を要約すると、

「この法案は私の望んだものかと聞かれれば、とんでもないと答えます。最上の法案となったかと聞かれれば答えはNoです。しかし歴史の命ずるところは歴史の命ずるところなのです。(When history calls, history calls.)

今行動を起こさなければどんなことになるのかと考えると、議会は、今あらゆる行動とるべきだと思い至ったのです。このわれわれの時代の巨大な問題を解決する能力が、われわれにあると示す機会が与えられているのだと考えたのです」
 
これから最終法案に向けての調整の長い道のりが始まる。下院は夏休み前に委員会審議を終えているが、現在3案が並立している。上院には、これで2案が並立することとなった。

両院おのおので一本化作業が行われ、そしておのおので議決が行われる。その後さらに両院議決を一本化するための両院協議会が開催され、最終的な一本化が行われるという、複雑な手続きが必要である。そのあとでやっと、一本化された法案が大統領の署名を待つということになるのである。

こんごの上院の議決に際してのOlympia Snowe共和党議員の存在は民主党にとっても、オバマ大統領にとっても非常に重要となった。彼女が途中で、今日の発言「今日の投票は、今日だけのもの」(My vote today, is my vote today.)のごとく意見を変える可能性はゼロでは無い。Olympia Snowe議員は、哲学的である。






オバマ、「聞かざる・言わざる原則」廃止 Don’t ask, Don’t tell

2009-10-12 | 米国・EU動向
2009年10月12日(月)

週末にWashingtonで開催された人権団体の晩餐会に出席したオバマ大統領は、同性愛者の入隊を公に認めるために、1993年に制定された法律が入隊条件にしてきた、「当局は同性愛者かどうかという質問をしないこと、兵役志願者は同性愛者であると公言しないこと」("don't ask, don't tell")という原則を廃止すると演説し、満場の参加者の拍手を浴びた。

オバマ大統領は選挙戦中からこの方針を打ち出し、同性愛者層の強い支持を受けてきたこともあり、この晩餐会出席はその「お礼参り」でもあった。この「聞かざる・言わざる」原則(the "don't ask, don't tell" policy)には長年にわたってゲイ団体は強く反対し、ゲイの兵役を公然化するように求めてきた。

ゲイ団体は、日曜日にWashington市内を「虹の旗」を掲げてデモ行進し、オバマ大統領が、この約束を実行すること、そしてその法制化のスケジュール(a timeline)を明確に示すことを求めた。大統領は約束(pledge)をするにはしたが、その実行をいつまでにと言うことは、あえて示さなかったが、それには理由がある。

大統領の支持者の間にも、議会協力を得なければならない案件が多数あるなか、優先順位の付け方が間違っているとの批判があり、それはおひざもとの民主党からも出ているのである。議会の協力を得なければ、当面の最大懸案の「国民皆保険」構想やアフガニスタンへの4万人増派は、年内に法制化できるめどが立たなくなる。

そして、議会の協力が無ければノーベル賞受賞の重要な要素である「二酸化炭素排出制限」も、国際条約に参加できなく可能性があるし、調印したとしても国内の批准の見込みが立た無くなる危険が迫ってくる。

Financial Timesの米国政界に関する論客Clive Crook氏は、「オバマ大統領は、以前は支持に回っていた人々からでさえ、約束どおりに政策実行ができず有言不実行(the gap between words and deeds)に陥っていることをジョークのネタにされている」と述べている。




英国に保革逆転ムード Cameron speech does the job

2009-10-09 | 米国・EU動向
2009年10月9日(金)

日本では保守から革新へと政治の流れが変わったが、英国では13年間続いた労働党政権が支持を大きく失う中、保守党が自信を回復し、来年5月の総選挙での「革保逆転」を狙っている。

保守党(Tory Party)の党大会は、今週マンチェスターで行われ、党首キャメロン氏の演説は満場の熱い拍手を送られたが、これをFinancial Timesの社説は、「キャメロン演説成功」と評価した。

キャメロン党首の、労働党攻撃のキーワードは、「大きな政府」(big government)である。「われわれは、労働党の大きな政府の官僚支配を排除し、時間を空費し(time-wasting)、お金を湯水のごとく浪費し(money-draining)、責任感を喪失させる(responsibility-sapping)ほら話(nonsense)をつぶさねばならない」

そして、極め付きの宣言となったのは、「われわれは英国に蔓延する無責任文化(Britain’s culture ofirresponsibility)と立ち向かわねばならない」という言葉である。

英国では、戦後「ゆりかごから墓場まで」という福祉政策の悪影響が出て、「欧州の病人」といわれるまでに没落した。そしてサッチャーが、1980年に「自己責任」と「市場原理主義」を掲げて登場して奇跡の復活を果たした。しかしその後の経済低迷で、労働党に政権を譲り渡したという経緯がある。

そして現在は、国際金融危機の中で、労働党も、ブラウン首相も目を覆うべき不人気に苦しんでいる。2010年の、英国選挙は、米国と日本に続いて’change’をキーワードに争われることになる。しかしベクトルは、革新から保守へと正反対となる公算が高い。

オバマの内憂と外患 Be clearer and be more committed

2009-10-07 | 米国・EU動向
2009年10月7日(木) 

New York Timesに掲載されたの二つの論説が、最近のオバマ大統領のある種の「煮え切らなさ」と「ためらい」に鋭く切り込んでいる。選挙運動中から就任直後までのあの「切れ味」はどこへ行ったのかと迫り、もっとコミットしてはっきりものを言わなければすべてを失う危険があるという警告である。


(1)Cohen Rogers: 「健康な体に、個人の自由が育つ」

欧州を回ってきて痛感した。いったいなぜアメリカ人は、欧州では当たり前だと受け止められてきた健康保険の皆保険化(universal health care)に、こうも反対するのであろうかと。

共和党は、皆保険に支えられる医療は、人を堕落させる「社会主義」(socialized medicine)そのものと言い立て、個人の自由を愛するアメリカ人の道を誤らせるものと攻撃している。このような議論で、健康保険の恩恵をあまねく国民が公正に受ける権利を奪ってよいものだろうか。

オバマ大統領はこの点もっとはっきり国民に向かって、「健康な体にこそ強い個人主義が宿る」と語るべきだ。(Individualism is more rugged when housed in a healthy body.)

(2)Thomas L. Friedman:「テロとの戦いにコミットせよ」

アメリカ人は、テロとの戦い(war on terrorism)を続けてきて、もう十分疲れたのかもしれない。しかしテロリストになる側はまったく疲れを知らず、もっともっとわれわれの上を行く知恵を出して攻めてくる(more creative)。

テロリストをつき動かしているのは何だろうか。経済的にも文明的にも劣後してしまったアラブ社会におかれたアラブの若者の”humiliation”である。それは辱められたことへの恨みを晴らすという動機につながっている。アラブの若者のごく一部の狂信者が、そのように西欧文明全体に対峙しているのだ。

「神の御心のままに、不信心ものに天誅を加える」という彼らの使命感は強く、そして彼らは疲れない。生半可な気持ちで「テロとの戦い」などといっている限り勝ち目はない。

オバマ大統領には、「テロとの戦いに本気になって(committed)取り組んで欲しい」。そうでなければ、アフガニスタンでアメリカについてくるものはいない。

オバマ、シカゴ招致で無念な結果 Chicago’s disastrous result

2009-10-03 | 米国・EU動向
2009年10月3日(土)

シカゴに2016年のオリンピック大会を招致するために、オバマ大統領は急遽コペンハーゲンに飛び、IOCの会場で夫人とともに熱弁を奮ったが、第一回投票で落選するという敗北を喫してしまった。

オバマ大統領夫人のimpassioned speech(熱情あふるる演説)も、Lulaブラジル大統領のstirring speech(魂をかきたてる演説)には及ばなかった。Financial Timesはこれを、「シカゴ、完膚無き敗退」(Chicago’s disastrous result)と表現している。

補佐官の一人が、Washingtonで記者会見に応じた内容をABC放送が報じている。内政・外交問題が山積しているタイミングで、夫人に一度は任せていた招致活動にわざわざ出かけて、惨敗の憂き目にあったことに対する政治的なダメージ・コントロールである。

「敗北は、disappointing(落胆すべき)こと」としながらも、「IOCの投票会場を支配したある種の力には、さすがのオバマ大統領の最後の健闘も及ばなかった」(some of the other forces in the room)

「他の候補国がコネを利用して行った 委員に対する集中的な働きかけに負けたのだ」と語った.(a lot of intensive lobbying)

そして「大統領の失ったものは多少の睡眠時間だけだ」(All he lost was some sleep)と発言。さらに「所詮、オリンピックの招致活動は、多々あるやるべきことのひとつに過ぎない」と締めくくった。(In the end this is just one thing)

「オバマは、右翼の陰謀の標的化」 Vast right-wing conspiracy

2009-09-28 | 米国・EU動向
2009年9月28日(月)

ビル・クリントン元大統領は、最近活発に表舞台に出たがっているようである。北朝鮮に拘束された女性記者の救出に、シャトル外交の冴えを見せて、オバマ大統領や、クリントン国務長官を出し抜いた成果を見せ付けたのは、記憶に新しい。

健保改革法案の扱いをめぐって、各地の政治集会(town meetings)で、特に白人高齢者層から過激な反対に会い、圧倒的多数を持つ議会でも法案審議がスムーズに進んでいないことに焦燥感を募らせるオバマ大統領であるが、先般ビル・クリントン氏は、「この反対運動の影には、オバマ大統領に対する人種偏見(racism)がある」と、突然いったい応援しているのか、妨害しているのか、効果の定まらない意見を発表して物議をかもした。

そして、今回は、NBC放送のインタビュー番組に出た同氏は、「オバマ大統領も、かつて自分を悩ました、右翼サイドからの同種の広範な陰謀活動(the right-wing conspiracy)の標的になっている」と、これまた、真意不明の「応援演説」を行った。

この、the right-wing conspiracyという言葉は、クリントン元大統領が、Monica Lewinskyとの不倫騒動が露見したときに、Hillary Clinton夫人が、政敵の大統領攻撃を称して、「大統領はその被害者」という意味をこめて使用したものである。

今回、当のご本人が、オバマ大統領援護にその言葉を持ち出すのも、真のメッセージは何かを考えると興味深い。もし、この「右翼の陰謀」が、米国の右半分の中に潜む黒い動機を表現しているとすると危険な兆候の予言である。

かつてアイゼンハウワー大統領が米国を蝕む諸悪の根源として非難した「軍産複合体」、Poor Whiteの人種差別主義、没落させられたFBIやCIAの反撃が始まるという意味で、ビル・クリントンはその言葉を使ったとすればである。


反オバマ運動の底流に人種差別意識 Tea Party organizers

2009-09-20 | 米国・EU動向
2009年9月20日(日)

オバマ政権の健康保険改革に反対する「茶会運動」(Tea Party organizers)が、「反黒人」運動の様相を呈してきた。

この運動に付けられたTea Partyという名前は、米国の独立戦争のきっかけとなった1773年にBostonで発生した反英暴動事件(ボストン茶会事件)を下敷きにしている。当時は、茶の輸入関税を英国の利益のために引き上げたことに端を発した反植民地運動であったが、今回は、連邦政府の権力が肥大化して各州の権利が侵されることに抗議し、健保の国民皆保険化に反対し、その結果起こる将来の増税に反対するという運動である。

しかし、問題は、この運動が反オバマ政策運動に名を借りた「反黒人運動」ではないかという懸念が出てくるような事態に発展していることである。各地で開かれている抗議集会には、オバマ大統領をアフリカの魔術師(witch doctor)に仕立てた写真を使ったプラカードが林立している。

ある写真ではオバマ大統領が、羽飾りをつけ、鼻から牙を突き出しているまがまがしい姿にされているし、別のプラカードでは顔に白化粧を施した恐ろしい形相の魔術師としてのオバマ大統領の似顔が描かれている。

この運動の指導部は、こうした過激な人々を、「腐ったリンゴ」(bad apples)と突き放して、運動全体が人種差別運動とされることを警戒しているが、本質を隠蔽することはできない。

Financial Timesは、反健保皆保険運動を「怒れる白人老人層」(angry white seniors)の反逆であると論評している。 一方CNNは、「今回の運動の背景には1906年にAtlantaで起こった黒人に対する集団殺戮事件を想起させる反黒人感情がある」と論評し、黒人の社会的な地位向上に焦燥感をあおられた白人の感情の激発であった事件との類似性を指摘している。

また、カーター元大統領が、「健康保険改革を巡るオバマ大統領への批判は、人種差別の現われ」と指摘したことも波紋が広げている。オバマ氏を大統領に選ぶことのできる度量のひろい民主主義と、狭量な人種主義が同時に存在するのが米国の本質である。

オバマ、ミサイル防衛放棄の衝撃 Obama under fire for U-turn

2009-09-18 | 米国・EU動向
2009年9月18日(金)

オバマ大統領は、ブッシュ政権が進めていた中欧ミサイル防衛構想(MD: Missile Defense Shield)を放棄すると発表し、欧州に衝撃が走っている。 

計画ではイランの核ミサイル脅威への対処のために、米国はポーランドに10基の迎撃用のパトリオット・ミサイルを配備し、チェコにレーダー基地を建設することを進めてきたが、ロシアは、対イラン防衛に名を借りた敵対行為であると非難してきた。

オバマ大統領はイランの核脅威の再評価によって、両国に配備するパトリオット・ミサイルを中核とする防衛網の必要性がないと判断するに至ったとし、海上に配備するイージス艦をベースにした新システムにその機能を果たさせることができるとしている。

そして同時に、イランとロシアに隣接するトルコに、総額7,000億円相当のパトリオット・ミサイルを売却する計画であることを議会に事前通告した。

オバマ大統領は、今年4月に「核なき世界宣言」をプラハで行い、モスクワでは「ロシアとの冷戦関係をreset」 したいと演説。さらには、年末に期限が来る戦略核兵器削減条約(START I )の交渉再開に意欲を燃やしており、今回の決断もこの一連の外交政策の上にあるものと推測される。

メジディーエフ大統領は、もちろんこの動きを歓迎し、「米国大統領が、われわれとの合意(our agreements)の実現に向けて責任ある行動をとったことを評価する」との発言を行ったが、この”our agreements”とは何をさすのか、今後の議論を呼ぶことになるであろう。

当然のことながら共和党は、厳しい批判を開始し、Financial Timesは、「オバマミサイル政策Uターンで集中砲火」の見出しで報じている。John McCainは、この大統領の決定を、「性急にして、重大な判断ミス」(rushed and seriously misguided)であると激しい攻撃を行った。

これに対し、米国政府は、ロシアとの取引(quid pro quo)は無いとし、クレムリンも一切裏取引はないと言明している。


一方、国民の大多数が反対に回っていたが、政府の強い姿勢で米国のミサイル防衛計画を受け入れてきたチェコやポーランド政府は狼狽の様相を呈している。特に昨年のロシアのグルジア侵攻をみて、ロシアの中東欧への脅威を実感し、歴史を思い出した両国をはじめ欧州諸国はこの決定を、「ロシアへの譲歩」ととる向きが多い。今回の米国の方向転換の意味を消化し理解するためには多少の時間を要すると見られる。

オバマ大統領は来週国連の安全保障理事会で輪番の議長を務めることとなっている。そして、常任理事国5カ国にドイツを加えて6カ国は、10月1日から、イランと核疑惑に関する問題打開交渉を行う。オバマ大統領の真意はそこで明らかになるはずである。



オバマ演説中に、「うそつき」とやじられる ‘You Lie’

2009-09-11 | 米国・EU動向
2009年9月11日(金)

水曜日夜のオバマ大統領の、47分間に渡る健保改革法案擁護演説中に、サウスカロライナ州選出の共和党議員Joe Wilsonが、「嘘つき」(You lie!)と、大声でやじったことが、大きな物議をかもしている。

この無名の議員の野次(heckle)は、大統領が、「提案している改革案では、不法移民には適用されない」と発言している最中に行われたものである。この一撃には、大統領も、一瞬たじろいだところが、全米にTV中継された。

You lie.は、You are lying.とは大いに意味が違う。後者であれば、不法移民についての発言についてうそをついているという意味になる。それはそれで昔であれば決闘になる、ひどい侮辱であるが、前者の表現は、「現在形」であり、「お前はいつもウソをつく」、すなわち「嘘つきである」との純粋の人身攻撃になってしまった。

野次やブーイングは、常に議会でも行われているが、Joe Wilson議員の野次は特に目立ったものであり、オバマ氏個人のみならず、大統領職に対する侮辱として、非難ごうごうとなり、同氏のネット上のサイトは、炎上して閉鎖されてしまった。

Joe Wilson議員は、共和党幹部からの指示で、大統領に謝罪し、大統領はこれを了解したと報道されている。こうした子供じみた野次が出てくるほど、共和党側の苛立ちが激しいことを示しているとも言え、法案成立までの紆余曲折は、大統領にとって容易なものではない。