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世界の動きを英語で追う

世界と日本の最新のできごとを、英語のキーワードを軸にして取り上げます。

オバマ、「失業対策に全力」を約束 For Middle-Class Families

2010-01-29 | 米国・EU動向
2010年1月29日(金)

オバマ大統領は、一般教書演説で、「庶民」(people)路線への回帰を鮮明にして、国際問題や地球温暖化問題への対応を後退させた。

その方針は的中し、演説後のCNNによる世論調査がたった今放送されたが、オバマ政権の政策を積極的に支持する・支持するをあわせて78%に急回復し、さらに米国は正しい方向に進んでいると回答した人々は53%から71%に反転上昇した。

26日の本欄でも伝えたように、マサチューセッツの上院議員補欠選挙で民主党候補が敗退し、上院における絶対多数である60議席を割ったことの政治的打撃はあまりに大きく、国論を割る議論となっている健保改革法案への拘泥はさらにオバマ政権の政治遂行能力を弱体化するほどの政治的危機にあったものを、この75分に及ぶ演説で逆転させたといえる。

演説のなかでの米国民の最大の苦しみへの対応を示すキーワードは、「雇用創出」(job creation)、 「中産階級家族」(middle-class families)への支援、「中小企業」(small businesses)への減税措置の三つである。

そして「ウォールストリート」という言葉に代表される金融界へ政府支援への反発感情にも配慮した。「私は銀行救済を憎んでいた(hated)。虫歯治療(root canal)のようなもんだと我慢してやった」とまで言い切ったのである。

そして健保改革に関する説明不足を自らの誤りと認めた上で、国民へ送った必死の覚悟とも取れる一節は次のとおりである:

「今改革の道を見捨てないで欲しい。この今、意見の違いがここまで煮詰まってきたのにこの今、見捨てないで欲しい。法案をまとめる道を探そう。そして国民のためのこの仕事をやり遂げよう」(“Do not walk away from reform. Not now. Not when we are so close. Let us find a way to come together and finish the job for the American people.”)

そして健保改革法案が可決されたら、次の言葉も歴史に残る言葉となるであろう。

「しかし忘れないで欲しい。改革が易しいことだといったことはないし、一人でやれるといったこともない。3億人の国民の民主主義がかまびすしく、混乱と複雑化の様相を呈するのも無理からぬことなのだ。大仕事に取り組み、大きな変革をなそうとすれば、人々の心を熱くもするし、反発も生み出すのだ。それがまさに今の状況なのだ」(“ And when you try to do big things and make big changes, it stirs passions and controversy. That’s just how it is.”)




オバマ、人気挽回政策へ舵を切る A More Populist Tone

2010-01-26 | 米国・EU動向
2010年1月26日(火)

オバマ大統領にとって、先週のマサチューセッツ上院補欠選挙で民主党が議席を失ったことが、世論の政権支持が50%近辺まで急落したこととあわせ手ひどい打撃となっている。

その政治的打撃を、米国メディアでは独立戦争の端緒ともなった1770年の『ボストン虐殺事件“Massachusetts massacre”』に誇張気味にたとえている。この1議席の喪失は選挙中の最大の公約の一つであった健保改革法案の成立を危うくしかねず、もしそうなればオバマ政権の今後の政策遂行に重大な影響がでるからである。

こうした中、27日に大統領の『施政方針演説』というべき一般教書を議会で演説(his first State of the Union address)することになっているが、これに先立ちオバマ大統領は、中産階級の生活の不安を払拭するための諸施策を導入することを表明した。

Financial Timesは、「庶民にもっとも影響のある問題に焦点を当てて人気挽回(A More Populist Tone)を図ろうとしている」と論評している。銀行の投機行動に枠をはめ、幹部の法外な報酬への制限を加える政策の発表に続く『庶民感情』に訴える方向への舵きりのダメ押しともいえる。

オバマ大統領はその新政策(the new initiatives)のなかで、失業率に明確な改善の兆しが見えない中、失業中の人々を職につけることを最優先にするとし、中産階級に対する社会保障制度の強化を約束した。とくに子供の養育と両親の介護のために支出を余儀なくされている世代( “sandwiched” between paying their children’s care and educations, and looking after their ageing parents)への支援を行うとしている。

発表された具体策の中には、年収850万円以下の家族への減税枠の増額、扶養児童手当の増額を行うとしている。また育英資金の返済条件の緩和によって、就職直後の低所得者層の返済負担を軽減することも約束した。さらには退職準備のための企業内預金制度(automatic workplace retirement savings accounts)と預金保護制度の新規導入の骨格も示している。

ワシントンで水曜日に発表されるオバマ大統領の『初年度の決算』となる年頭教書の内容は『庶民の味方』オバマのイメージを強く打ち出してくるものと予測されるが、世界にとっても極めて重要なものとなることは言うまでもない。

米政府、『傭兵乱射』公訴棄却に控訴決める Blackwater Trial

2010-01-24 | 米国・EU動向
2010年1月24日(日)

ABC放送が伝えるニュースによると、イラクのバグダッドを訪問中のバイデン副大統領は、2007年に発生したイラク人市民17名の殺傷事件に個人的に哀悼の意を表すと同時に、同事件に公訴却下という判定を示した米国裁判所に対して控訴を行うことを現地で発表した。

米国政府との契約によって戦争のアウトソーシングを請け負ったBlackwater社の『傭兵』が、2007年9月16日に、バクダッド市内で民間人17人に発砲して殺害した上記の事件は、まさに米国の戦争の実態が何であるかを世界に知らしめるところとなったものである。

アメリカの戦争は、正規軍のみによって戦われているのではない。民間軍事サービス会社PMS(Private Military & Security Service Company)と総称される民間会社が、訓練・兵站・警備などの分野で契約に基づいて従事している。公式には武器弾薬輸送、兵舎建設、給食サービスなどの戦闘補助業務を公式の請負業務としているが、『警備』名目での『傭兵』機能を行っているともされている。

問題の事件に関して、イラク政府は、Blackwater『社員』が米国大使館員の車列警護の際、「無差別に民間に発砲して殺戮を行った」と非難したが、一方Blackwater側は、「何ものかの発砲に応射しただけで正当防衛であった」と反論していた。

この事件に関与した『傭兵』5名に対する訴追が、米国内で行われていたが、先月裁判所は、『訴追を技術的理由によって却下する』との判断を下した。これに対して米国法務省は『控訴する』と方針を固めるに至っている。

いわば、バイデン大統領は、ブッシュ大統領の負の遺産の清算に関するオバマ政権の立場をバグダットで明らかにしたものといえる。ちなみにBlackwater社は、社名を『Xe』と変更してイメージ挽回を図ろうとしたがイラクでの米軍との業務から実質的に排除されている。一方、チェイニー元副大統領がCEOを努めたハリバートン社の子会社KBRの米軍関連業務は健在である。





オバマ、上院補欠選挙敗北で大打撃 the loss of one seat

2010-01-20 | 米国・EU動向
2010年1月20日(火)

米国の政治情勢に大変化を起こす選挙結果が判明した。47年にわたってマサチューセッツ州選出の民主党上院議員を務めたTed Kennedyの死去に伴う補欠選挙で、選挙までほぼ無名であった共和党候補Scott Brown氏に、民主党候補のMartha Coakley州検事総長が敗退したのである。

マサチューセッツ州は、民主党の金城湯池といわれて久しく、今回も大統領選挙の勢いを駆ってMartha Coakley女史の圧勝が予想されていたのであるが、戦況は最終段階で反転した。この敗戦には、オバマ大統領の政策や大統領自身への支持が、各種世論調査で大きく急落していることと無関係ではない。

民主党側が油断(complacency)をしたこと、Martha Coakley女史が選挙音痴としか思えない発言(missteps)をしたことを政治評論家がTVで半ば冗談として取り上げているが、真実を表す言葉は二つである。それは、「無党派層」(independents)と、彼らの政府の健保改革とそれに伴う政府支出の膨張に対する「怒り」(anger)である。

マサチューセッツ州の無党派は51%を占めていて、民主党員の数をも大きく上回っている。オバマ大統領は終盤に掛けて同女史のために急遽応援演説に出かけたが、時すでに遅し、であった。

上院の単純多数は50名、絶対多数は60名である。この絶対多数はsuper-majorityと呼ばれており、あらゆる採決阻止の動きを封じることができる。この鍵になる最後の1名の席をTed Kennedyの後任者が握ることになっているので、今回の民主党の敗北の政治的な意味は大きく、懸案の健康保険改革法案の成立はきわめて微妙となった。

民主党は、選挙終盤になって敗北を予想して健保法案を通すためにいろいろな作戦をすでに考え始めたことは今週になって報道されたが、いずれにせよオバマ大統領のリーダーシップと断固たる意思がすべての方向を決めることとなる。

その意味で、来週の27日に予定されている大統領の一般教書演説に何が書かれるかですべてが決まるといって過言ではない。



オバマ、第一年度決算は不振、赤字の怖れ It could be worse.

2010-01-17 | 米国・EU動向
2010年1月17日(日)

オバマ大統領の政策に対しては米国民の見る眼が急速の厳しくなっているが、いまなお同大統領の個人的な人気はまだまだ高いというのが、ABC放送がWashington Postと共同で行った最新の世論調査の結果である。

ABC放送は、この世論調査結果について、「大統領はいわば、負けてはいないものの傷ついている」(Bruised if unbroken)と総評し、「まだまだ、支持を失う可能性あり」(It could be worse.)と先行きは予断を許さないとしている。

世論調査の各項目を見ると、63%の人が、『米国は間違った道を歩んでいる』と答えている。また53%が『オバマは国の将来に正しい決定しているとは思わない』と答えてその割合が始めて5割を超えた。

大統領が選挙戦の際行った約束を果たしているとした人は、41%に過ぎない。選挙時に76%が、『オバマは変化をもたらしてくれる』と期待していたが、現在『期待通り』とする人は50%に落ちている。

政策全般にわたって、大統領は期待通りの成果をもたらしたかという問いには、52%が『NO』と答えたが、この数字は就任後3か月時点では29%に過ぎなかった。経済施策に限れば、大統領の対応を支持するとした人は、就任後1ヶ月時点で60%であったものが、47%に落ち込んでいる。

喫緊の課題である健康保険改革に大統領の取り組み成果への不承認は52%に上昇している。そして財政赤字に関しては、56%が不支持という『きつい一発』を食らった形となった。

しかし救いは残っている。オバマ大統領就任時に比べて15ポイント下がったものの、まだ53%ものの人が、大統領の仕事ぶりを支持するとしている。これは、大統領選における得票率とまったく同じ数字となっている。

そして58%が、人間としてのオバマ大統領個人には好意的な評価を下している。この個人的な人気が高いことは、政権に対する民意の表れでもっとも重要なことであり、21%も急落したとはいえ、50%ラインには踏みとどまっていることこそ現時点の唯一の救いである。




オバマ、銀行幹部高報酬へ実力行使 Prisoner of the Market

2010-01-13 | 米国・EU動向
2010年1月13日(水)

「大西洋の両岸で銀行家は、巨額ボーナスに対する政治的圧力と大衆の怒りに団結して対抗」とFinancial Timesが報じている。

その政治的圧力の急先鋒は、オバマ大統領が発表した高額ボーナスを支払う巨大金融機関に対する特別税(a new levy)である。この特別税は、昨年金融機関救済のために投入した米国政府資金(TARP)による政府の損害を回収するのが目的とされている。

ホワイトハウスの報道官はこれを政府の銀行に対する『手数料』(fee)と呼んでいる。また、FDIC(米連邦預金保険公社)は、預金保険料の算定の際、各銀行のボーナス支払いの実態を考慮したものにするとの方針であると伝えられたのも、銀行に対する大きな圧力になっている。

米国政府の金融機関救済措置による損害は、1200億ドル(約12兆円)と算定されているので、この額がそのまま金融界に新税として課せられる可能性が高い。これにウォールストリートは反応して、金融株は、一斉に3%以上下げた。

今週水曜日には、Goldman Sachs、JPMorgan Morgan Stanleyの各行のトップが議会の米国証言に呼ばれている。議会のやり取りにメディアや政治家が反応するので政府と金融界の緊張は一気に高まることが予想されている。

この証言喚問を前に、JPMorganのDimon氏は、「わが行はすでにTARPを完済した。政府にボーナスのことで口出しをされるいわれはない。わが社社員に対する個人的中傷(vilification)はいい加減に止めて欲しい」という趣旨で反論。

さらに、「優秀人材をつなぎとめるにはそれ相応の報酬が競争上必要だ。」と高額ボーナスを正当化するための論理を展開している。

一方、火曜日に行われた英国議会での喚問で、Royal Bank of Scotland(RBS)のHester頭取が、「業績を上げるために、優秀な社員をつなぎとめるには高額ボーナスが必要。その意味でわが行も、市場の囚人なのだ(a prisoner of the market)なのだ」と説明している場面をBBC放送が、繰り返し報道している。

資本主義は『金融資本主義』の失敗の10年を過ぎて、新しいパラダイムを求めて2010年代に入った。『億単位の報酬』を払わないと働かない経営陣や幹部による資本主義は、もはや大衆が許さないことを銀行家たちはまだわかっていないようだ。


オバマ、対テロ『3つの失態』『4つの対策』発表 No Silver Bullet

2010-01-08 | 米国・EU動向
2010年1月8日(金)

クリスマスの日、アムステルダム発デトロイト行きの航空機を狙った自爆テロ未遂事件に関してオバマ大統領がワシントンの木曜日に記者会見を行い、『3つの失態』を指摘し、『4つの対策』を講じることを発表した。

日本時間早朝の記者会見直後のCNN報道をみると、まず大統領は事件を、「米国の最前線は、一体化され、遅滞なく、正確に構成された情報網で防衛されねばならないが、今回そのシステムが12月25日前には発動せず、テロリストに搭乗を許してしまった」と総括した。

そして、大統領は3つの原因として、①アルカイダが米国を標的にしているという情報を諜報機関が入手しながらその追及に全力を挙げなかったこと、②断片的情報を総合することに失敗したこと、③犯人を『搭乗禁止』リストに入れないようなシステム運営であったことを挙げた。

そして、大統領が指示した4つの内容とは、①高度に危険とみなされるテロ情報の追尾には担当責任者を任命すること、②諜報内容は、政府関係機関内でより広範に共有させること、③国家諜報の責任者Dennis Blair氏に、諜報分析機関の建て直しを図らせること、④搭乗禁止措置対象リストの掲載漏れが無いように管理強化を図ることである。

大統領は、対テロの関係部署が正常に職務を果たしているかをJohn Brennan国家安全保障補佐官が、毎月大統領に報告するように命じたと説明したうえで、「すべての航空機の安全を確保するための魔法の杖(silver bullet)は無いとし、いずれにせよすべての責任は私にある("Ultimately, the buck stops with me." )と述べた。

大統領筋は、「今回の事件で, 大統領は今回の事件をとんだヘマ(a screw-up)であったと批判し、政府の各レベルでの責任(accountability)を問うと先週発言したが、それは個人の責任ではなくシステムの責任を問うという意味であった」と説明している。

事件後、TVインタービューに出演して、的外れな発言を繰り返して顰蹙(ひんしゅく)をかった国土安全省のナポリターノ長官も含めて、引責辞任に追い込まれる高官はいないということである。

今週のABC放送の政治討論では、「システムの緩みというが、もともと空港警備を含めて911事件以降の対策が、一種の失業対策事業化してしまっているのが原因」との率直な意見が出ていた。

そして「靴に爆弾を仕込んだ事件のあと空港では靴を脱がせる検査が追加になった。今度はパンツに隠していた。どんな検査が追加されるのか」と揶揄(やゆ)する意見も出て、出演者の笑いを誘っていたが、今回は、山のような情報だけを集める対テロ機関の官僚化と、検査のマンネリ化が原因であったということである。



航空機テロ情報CIAが握りつぶし Bureaucratic Fingerpointing

2009-12-30 | 米国・EU動向
2009年12月30日(水)

CNNは、信頼できる消息筋の話として、クリスマスにアムステルダム発デトロイト行きのNorthwest Airlinesの爆破を図った犯人情報は、CIA本部には届いてはいたが必要な政府機関には回付されなかったと伝えている。

「息子が過激な宗教観からテロに走る恐れが高い」との父親からの訴えを受けたナイジェリアの米国大使館のCIA係官は報告書を作成してバージニア州Langleyにある本部に送付したが、机の上に何ヶ月も放置されたままになっていたと暴露されたのである。

政府関係者は、この種の情報は関係機関にも伝達し、共同で対策を立てるのが決まりであり、「今回の事態は、関係者一人ひとりの失態、組織・警備体制の問題、検査技術の不備によって事件を未然防止ができなかったということだ」(What we have here is a situation in which the failings were individual, organizational, systemic and technological)と述べている。

CIAの関係者には、「犯人の名前などは、関係官庁には送ってあった」というものも現れており、官庁同士の責任のなすりあい(The bureaucratic fingerpointing)が始まった。しかし、50万人にも達する、「不審者」リストに入れただけで、「搭乗拒否」(no-fly)リストにいれるなどの特別な処置はまったく取られなかったのは明らかである。

一方、英国の諜報機関は、犯人Umar Farouk AbdulMutallabの動きを把握しており、同人からの英国入国ビザを拒否していた。この英米の対応の差は大きく、米国が911事件以降巨額の費用を注ぎ込んできた警備体制が機能しなかったことは、オバマ政権にとって大きな衝撃である。



オバマ政権、航空機テロで失態 Our system did not work

2009-12-29 | 米国・EU動向
2009年12月29日(火)

クリスマスを狙った米国航空機爆破の企てに対して、アルカイダは、「イエメンにおける米軍の攻撃に対する報復であった」とし、「厳しい警備体制をくぐって爆弾を機内に持ち込めたのは勝利」との挑戦的な声明を発したことを、The New York Timesが伝えている。

いかにして犯人が検査をすり抜けることができたのかという疑問が生じるが、週末の段階で、Janet Napolitano国土安全省長官を含む政府高官は「警備体制は機能していた(“the system worked”)」と言明していた。

一方、先週木曜日から10日間の休暇をハワイで過ごしていたオバマ大統領は、事件後3日にわたり公の席に出てこの事件について語ることはなく、休暇に随行した係官を通して、「政府部内で協議中」とのみ発表してきた。

しかし、大統領がハワイの日光を浴び、サーフィンに興じる映像は、空港で長蛇の列を作って検査を待つ乗客の映像とは相容れないイメージを国民の前に晒した。次第に事態が明らかになった日曜日にいたって、Janet Napolitano国土安全省長官は前言を訂正し、「警備体制は機能しなかった。大変不満な事態である。広範な調査を行っている」と述べた。

そして、オバマ大統領は、この長官のコメントの数時間後にいたって初めて今回の事件に対する政府の対応に対する非難を沈静化させるため、「事件に関与したものをすべて探し出し、責任を追及するまで、政府は休むことはない(“We will not rest”)」と述べた。

犯人として拘束されているのは、23歳のナイジェリア人で、「直前にイエメンで爆弾をアルカイダから渡され訓練を受けた」と尋問に答えている。そしてナイジェリア政府の元高官で、銀行の幹部として知名人でもあるその父親は、「息子が過激な宗教観に染まり、行方不明になっている」と今年の11月19日にアメリカ大使館を訪問し告げていたのだ。

しかし、当人の来年6月まで有効なビザは、取り消されることはなかった。大使館の担当は「次のビザ更改の際は、全面的に調査要あり」と記入した報告をワシントンに送っていたが、彼の名前は、55万人のテロ組織とのつながりが疑われる人物リストの中に入れられただけで、「飛行禁止the no-fly list」措置は取られなかった。

14,000人の要厳重注意リストにも、4,000人の飛行禁止措置人物リストにも加えられなかったことについて、「一度くらい親族が通報したぐらいではこのリストに入れることはない」との政府関係者のコメントが伝えられている。

このため彼が、米国行きの切符をキャッシュで購入した際にも、チェックにはかからなかった。テロ関連情報は、関係機関にはすべて送られているが、それを総合的に分析し、対応する能力は米国政府でさえ持っていないことを証明した事件であった。


オバマ健保改革法案上院可決  Obama's New Hurdles in 2010

2009-12-25 | 米国・EU動向
2009年12月25日(金)

オバマ大統領が選挙公約の最大の眼目として政治生命を掛けている健康保険改革法案が、クリスマスイブに上院で可決された。

民主党が絶対多数を確保している下院ではすでに先月可決されているが、上院での審議は難渋を極めた。24日間にわたるその審議の裏側で、民主党と共和党の間のみならず、民主党議員団の間での調整作業に時間を要し、ようやく投票にこぎつけたものである。

大統領は「歴史的な評決」(a historic vote)と歓迎の意を表明して、「この法案は、1930年代の社会保障法the Social Security Actや、1960年代の医療保険制度導入Medicare以来の重要な社会政策法となる」と記者会見で語り、「この法案による健保制度を導入すれば、これから10年にわたって最大の支出削減計画となる」と賞賛した。

このあと大統領は、休暇先のハワイに一家そろって旅立った。しかし、年明けには、難航が予想される上下両院案の調整作業による一本化と、一本化された法案の両院における投票が待っている。

上院の定数100に対して、票決結果は60:39で、棄権1であった。共和党による審議妨害(filibustering)を阻止できるぎりぎりの票数が60(super majority)であるからまさに薄氷を踏む思いの結末であった。共和党は、老齢議員が欠席による棄権をしたことを除いて、全員が党議(the party- line)を守って反対に回った。一方、60票の多数を確保するために、民主党の58票に加えて、独立系議員2名を必死に説得できたことが民主党案の成立につながった。

このように、両党合意(bipartisan)の上での法案形成をあくまでも望んだ大統領の意図は実現できなかった。そして共和党議員のほとんどは、「将来の世代に莫大なツケを回すもの」として絶対阻止を表明して闘志を新たにしている。

また、60票の確保のために譲歩を繰り返した結果、下院案から、公的保険(a public option)などの点で大きく乖離してしまった上院案には反対を唱える民主党議員も多く、年明けの展開は予断を許さない。




米国健保改革法は越年 Public Option and Abortion Funding

2009-12-23 | 米国・EU動向
2009年12月23日(水)

オバマ大統領の選挙公約であり政権の重要課題である健康保険制度の改革法案が、さまざまな駆け引きと取引の末に上院採決につながる一里塚を通過した。

共和党議員の一人が最後の最後になって賛成に回って「審議打ち切り動議」が可決され、クリスマスイブの最終投票に掛けられることとなったのである。このためオバマ大統領は、年末のハワイ休暇への出発を遅らせ、投票結果を見守ることとした。

上院で可決されても法案の成立のためには、すでに可決されている下院案との調整のために、両院の議長が取り仕切る調整会議(conference committee)に掛けられる。そこで法案は一本化され、再び両院で単純多数決の投票に掛けられることになっている。

両院の法案の見かけは似ているが、重要な争点で大きく異なっている。そのため問題は上院案と下院案の間の相違の一本化が進んだとしても、その内容が議員個人の主張とかけ離れた場合反対に回る公算が高いのである。すでにそう宣言している議員もいて、特に民主党と共和党の勢力が伯仲する上院での再投票結果は予断を許さない。

争点は、「政府管掌健康保険」(public option)の導入の可否、「堕胎を健保対象にするか否か」(abortion funding)の二つに集約されている。そして、所要費用については、上院案は8710億ドル(約87兆円)、下院案は1兆ドル(約100兆円)となっている。

NewsWeek誌電子版は、「何ヶ月もの紆余曲折があったが、本当の駆け引きはこれから始まる(Despite months of going back and forth, the real bargaining has yet to begin.)」と結んでいる。

オバマ大統領支持率50%割れ Obama's approval rating

2009-12-07 | 米国・EU動向
2009年12月7日(月)

CNNが実施した電話による世論調査によると、「オバマが大統領として行っている仕事(the job Obama is doing as president)を支持するか?」という問いに対して支持するとした回答が50%を割り込んだことを報じている。この数字は先月の調査から7ポイントの急落である。

アフガニスタン増派を発表した直後の調査であったが、もっとも大きく支持率を下げた層は、「大学を出ていない白人」(noncollege-educated white voters)の層であることは、失業問題が色濃く反映されたものと解釈されている。若者や女性の間での支持率が急落していることも同様の理由であると推定されている。

一方、アフガニスタンへの3万人増派への支持は60%で、2011年中半に撤兵するとしたことには、2/3の支持を受けている。しかし大半のアメリカ人は、撤兵時期を最初に示すのは愚策であると考え、その時期になっても撤兵できなくなるとだろうと思っている人が大勢を占めていることも同時に判明した。

また重要なことは、アメリカ人は、アフガニスタン政策を支持しつつも戦争自体には反対だと答えている。現在のアフガニスタン問題への対応は、ブッシュの後始末と考えている人が多くいるが、54%の人は、「2011年に解決できていなければ、それはオバマの責任」と回答している。


この世論調査は、ほとんど共和党の主張と同じである。このためもあってか、アフガニスタンの撤兵時期については、クリントン国務長官や、ゲーツ国防長官は、「情勢次第のことである」との趣旨で相次いで発言し、オバマ大統領の、「2011年7月から撤兵開始」という明言を事実上撤回し始めている。

大統領就任の年に、支持率が50%を割り込んだ大統領は、オバマが最初ではない。レーガン大統領は、同じく11月に49%に、クリントンは5月には割りこんでしまったという記録がある。




「失業対策は失業率で対応を」 jobs “saved or created”

2009-11-25 | 米国・EU動向
2009年11月25日(水)

オバマ政権が、米国経済の回復のために注入している巨額の「景気刺激策」(stimulus funds)の効果を強調するために使用している、「刺激策によって救済されたか、創出された雇用」(jobs “saved or created” by the program)という言葉は、不正確(inaccurate)であるとして、共和党幹部議員が、バイデン副大統領にその使用を中止するように申し入れた。

「このような不正確にして混乱を招く統計数字(metric)をもて遊ぶのはやめて、失業率一本に絞って対策を推進すべきである」というのが共和党の主張である。

10月30日の政府報告によると、64万人の雇用が救済されるか、創出されたとされ、政府はこの統計は正確であると主張しているが、別の統計によるといろいろの問題が噴出してきている。

存在しない地区からの報告が含まれていたり、政府自身が「不正確」であるとして、6万人分の統計を抹消したり、さらに5万人分については、刺激策の導入とは無関係であったとして抹消されたのである。

オバマ大統領は、今のところこの問題を、「枝葉末節の問題」“a side issue”と片付けているが、共和党側は、「大統領は、本質がお分かりになっていないと申し上げているのだ」“We respectfully submit that the President is missing the point.”と反論している。

共和党は、10%を超えた失業率のほうが、経済の実態を表す数字として実証されたもの(tried and tested metrics of measuring economic growth)とし、事態をゆがめている数字の操作(deceptive accounting tricks)をやめよるようさらに大統領に詰め寄る方針であると、ABC放送が、内部文書をもとに報じている。

オバマ、官民科学技術振興策打ち上げ "Educate to Innovate"

2009-11-24 | 米国・EU動向
2009年11月24日(火)

オバマ大統領は月曜日、官民合同で科学science・技術technology・工学engineering・数学mathematicsの頭文字をとったSTEMの振興を図るため,政府のみならず官民合同で青少年の教育機会を拡大することを狙いとした、「イノベーションのための教育キャンペーン(an “Educate to Innovate” campaign)を開始すると発表した。

米国大統領府のホームページによると,この運動は政府のみならず、大手企業・財団・非営利団体・科学技術学会とのパートナーシップによって、青少年の科学と数学の理解力(literacy)向上を図ろうとするものだと説明している。

特に米国の青少年の科学と数学の能力が、2006年の国際試験(Programme for International Student Assessment (PISA) comparison)において、科学知識で30カ国中21位、数学の試験においては25位であったことに重大な危機感を抱いていると述べている。

具体策はこれから打ち出されるが、米国の青少年の科学数学の知識・理解力を高めるための各種プログラムを、民間企業と団体と一緒に進めようとしており、それにはTV番組製作者や、ゲーム製作者との協業が、第一に挙げられている。

このオバマ大統領の呼びかけに大手企業が応じているが、たとえばマイクロソフトの23日付のホームページを見ると、ゲームソフトでの協力をはじめとして会社を上げてこのキャンペーンに参加することの決意のもと、7ページに及ぶ行動計画を発表している。

ちなみに、上記のPISAとは、OECDが主催して、3年おきに実施される科学・読解・数学の能力試験で、2006年には57カ国で40万人の15歳の生徒が受験した。日本は科学で6位、数学では10位となっている。



ペイリン、自叙伝発売全米キャンペーン開始 Going Rogue

2009-11-21 | 米国・EU動向
2009年11月20日(土)

米大統領選挙で共和党副大統領候補だったサラ・ペイリン(Sarah Palin)前アラスカ州知事の回顧録」が11月17日に出版されたが、彼女は、全米に宣伝のツアーを派手に展開し始め、それが大きな話題になっている。

この回顧録はもともと2010年春に出版される予定だったが、年末のクリスマス商戦に間に合わせるために、彼女に出版社が急がせて早く書き上げさせたものである。

その題名は、「Going Rogue: An American Life」である。この”Going Rogue”は、そのまま訳せば、「はぐれ者になって」となる。もちろん、ブッシュ政権が、イランや北朝鮮を‘rogue nations’(ならず者国家)と呼んだように、「ワル」という響きも濃厚な言葉でもある。

この題名をことさら選んだのには、理由がある。彼女が、大統領選挙中に、選挙戦略や、個々の戦術で、ことごとく選挙参謀や、マケイン氏と対立していたときに、オンライン・マガジン’Slate’上で政治評論家John Dickerson氏が、「サラ・ペイリンが、マケインに楯突くのは意図があってのことか、何もないのか」と論評した記事に由来する。

同氏は、その記事の冒頭で、「サラ・ペイリンははぐれ者になったか」(Has Sarah Palin "gone rogue"?) と疑問を投げかけ、さらに記事中で、the Palin-as-a-lone-wolf (一匹狼ペイリン)とか、Palin-as-rogue (はぐれ者ペイリン)と評したのである。

颯爽とメディアの舞台に復帰した彼女の言葉は、"My ambition, if you will, my desire, is to help our country in whatever role that may be, and I cannot predict what that will be." であった。(私の野心、エーと、私の願望と聞かれたら、それはこの国の役に立ちたいということね。どんな役割であってもいいのよ。それが何になるかは私にもわからないわ)

アラスカ州知事の職を突然投げ打った彼女の願望が、ベストセラーで儲けたいということだけではないことは、明らかである。