もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

G7かD10か

2021年06月14日 | 社会・政治問題

 今年のG7が閉幕した。

 今回のG7には、韓国・インド・オーストラリアがゲストとして招待されて、所謂D10の枠組みで開催された。
 G7のこれまでを振り返ると、1973年に、日・米・英・仏・西独の財務大臣が経済・金融政策について会議を持ったことに端を発しているが、資本主義世界が共産主義陣営に対抗するためには経済政策以外の政策全般に共同歩調が必要との認識が生まれ、1975年にはG5首脳会議が開催されることになった。その際、枠組みを外されたイタリアが強引に開催地に押し掛けたために実際はG6で開催された。ソ連邦の解体を受けて1998年から2014年のクリミア併合まではロシアも参加してG8となった。このように、G7は条約に基づくものではなく「自由、民主主義、法の支配、人権と言った基本的な価値観を共有する主要国の枠組み(元外務大臣の岸田文雄氏)」とされている。このために常設の事務局は無く、会議の主要テーマやゲスト招待国の選定は持ち回りの議長国に一任されている。G7では貿易、安全保障、経済、気候変動などのグローバルな問題の歩調調整が注目されるが、近年では対中国政策が注目されることが多い。
 中国の経済成長は著しいが、世界のGDPの40%を占めているとされるG7の強固な結束は中国にとって致命的な打撃であるが、今回のサミットでもフランスとドイツが中国問題についてはアメリカと一線を画すことを表明するなど、最早G7と雖も中国の影響を完全には排除できない状況であるように思える。
 既に経済力で日本を凌駕したと豪語する韓国は、今回のゲスト国であるインド・オーストラリアと共に正式なメンバー入りを渇望しているとされるが、他のメンバーに比べて経済的に中国依存度が高いこと、北朝鮮へのビラ配布を罰則付きの法律で禁止したことが人権侵害に当たるとの批判の声が高いことから、印・豪を迎え入れるG9はあっても、韓国をテーブルに招くD10は対中姿勢と対人権姿勢の弱体化に繋がりかねないので時期尚早との見方が強いようである。
 では、日本の対中姿勢はG7の優等生かと問われれば、政治的には一つの中国(台湾排除)を閣議で再確認し、新疆ウィグル・香港を念頭に置いた国会の人権決議は媚中勢力によって名指し批判を避け、経済的には引き続き中国をサプライチェーンの一角とする多国間協調主義が持論の十倉雅和氏を新経団連会長に選出し、と韓国より「稍マシ」な程度であり、これ以上の中国傾斜はG7から外されることさえ考えなければならないように思える。

 今回のG7では日韓首脳の接触も注目されていたが、結果的には「挨拶」の儀礼的接触に留まったようである。G7を始めとする国際会議では、首脳接触の度合いによって上から、会談→立ち話→挨拶というランク付けがあるようで、今回は日韓双方が「立ち話」すら設定しなかったようであるのは当然であろうか。
 ソウル中央地裁が韓国大法院の判例を破って徴用工訴訟に原告敗訴の判断を下したことに代表されるように、韓国法曹界も法治国家としての体面を模索する方向に動いているようではあるが、大法院長が「文政権の番犬」とまで酷評されるようでは、条約と国際法遵守が基本であるG7のテーブルには辿り着けないように思える。