もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

モルドバを学ぶ

2022年04月29日 | 歴史

 ウクライナ・モルドバ国境が緊張している。

 これについてモルドバはウクライナから銃撃されたとし、ウクライナはモルドバ駐留ロシア軍が越境攻撃していると、それぞれ主張しているが、いずれにしても国境付近で武力衝突したことは確かであるように思われる。
 この事態は、専門家には想定していた推移であるかもしれないが、北方のベラルーシ国境のみ注視していた自分には更なる事変拡大で、ロシアのソ連時代の版図回復は留まるところを知らないもののように感じられる。
 モルドバを知らないので、ウィキペディアの解説を年表的に整理してみた。
・14世紀 モルダヴィア公国の一部。
・16世紀 オスマン帝国の属国
・1812年 ロシア帝国・オスマン帝国戦争の結果、ブカレスト条約により帝政ロシアへ併合
・1856年 ロシア帝国からモルダビアに返還、ルーマニア公国の一部となる
・1878年 全土をロシア帝国が支配
・1917年 ロシア革命。一時モルダビア民主共和国と呼ばれるロシア共和国の自治州
・1918年 モルダビア民主共和国として独立を宣言したが、同年末には議会の議決によってルーマニア王国に統合
・1924年 ウクライナ・ソビエト社会主義共和国内のモルドバ人居住地がモルダバア自治共和国建国を宣言
・1940年 モロトフ・リッベントロップ協定でルーマニアはモルドバ人居住地ソ連へ割譲。モルダビア・ソビエト社会主義共和国が建国
・1991年 ソ連の崩壊に伴い、モルダビア共和国として独立したが、領内のドニエステル川東岸一帯は、1990年以降モルドバから離脱したトランスニストリア政府の事実上の支配下にある。
 と纏めたが、九州と同じくらいの国土であるモルドバは、常に大国の支配下にあった結果、今でもルーマニアやロシアへの統合を希求する勢力があり、プーチンの「ウクライナ国内のロシア人解放」の主張が及ぶ危険性があるように思える。
 モルドバはウクライナと同様にソ連の穀倉地帯であったために、1945~6年にはソ連の食糧徴発によってウクライナのホロドモールと同様に20万人近い餓死者を出したともされている。
 ソ連は食料の供給地としてしかモルドバを位置付けなかったために、工業は育たずに現在もサービス業がモルドバ経済の中心となっており、一人当たりGDPではヨーロッパで2番目(1番目はベラルーシ)に貧しい国とされている。

 大航海時代~第二次世界大戦終結まで西側諸国の植民地経営は、搾取・簒奪が主であったとされるが、ソ連の計画経済においては支配地域別の生産形態が衛星諸国に割り振られていたために、ソ連崩壊までベラルーシ・モルドバが富国・繁栄の方策を模索することが許されなかったばかりかソ連の簒奪に曝された結果であろうと解釈している。
 ロシアのウクライナ侵攻を受けて、本年2月にジョージアとともにEU加盟を申請したとされるが決定には長時日を要するのが常であり、親露勢力・地域を抱えるモルドバが、単独で狂国ロシアの要求には抗しきれないことが明白で、ウクライナ事変は新たな局面と拡大に発展するように思える。


ドイツに学ぶべきか

2022年04月28日 | 防衛

 新聞に「独、脱平和主義」の見出しが躍った。

 ドイツはこれまで、第二次大戦の後遺症から「紛争地域には殺傷兵器を送らない」という平和主義に徹してきたが、日本を除く多くの西側諸国がウクライナへの武器支援を行う現実を受けて、政策転換を余儀なくされたとされている。
 国是と云っても過言ではない平和主義政策大転換の背景は、国是維持として武器供与に否定的であったシュルツ首相率いる第1与党「社会民主党」に対して、第2与党「緑の党」・第3与党「自由民主党」・最大野党「キリスト教民主同盟」が武器供与を主張、世論調査も55%が支援を肯定した結果とされている。最大野党「キリスト教民主同盟」の「首相のせいで、ドイツは国際社会で孤立している」との主張が紹介されているが、武器供与を肯定する側の共通的な認識であろうと思う。
 25日にウクライナ外務省・国防省が公式ツイッターで各国からの支援に感謝する動画を公開したが、謝意を伝える31ヵ国に日本は含まれていなかった。日本は防弾チョッキや化学兵器対応用の防護マスクなどの防衛装備品の直接支援、UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)・ICRC(赤十字国際委員会)を通じて総額1億ドルの生活必需品支援を行っているが、殺傷能力を持つ武器は供与していないことによるもので、日本国内の空気を読んだ在日ウクライナ大使館が「武器を提供してくれた国に対する感謝を示すためのもので、日本の支援や協力にはもちろん感謝している」とコメントしているが、30年前の湾岸戦争で戦費の大半を支払いながらクウェートから一片の謝辞も告げられなかったことの再来で、自らの手を汚さずに金で済ますことに各国は敬意を示さないということを改めて認識させられるものに思える。
 今回ドイツが供与するのは「対空戦車」と通称されるゲパルト自走対空砲とされている。陸続きの欧州とは輸送や弾薬補給などの条件が異なるが、自衛隊も個人携行式の01式軽対戦車誘導弾(ATM-5:通称LMAT(ラット)&軽MAT)を約1,000セット保有しているので、方針変更すれば武器支援も可能であったと思う。

 なぜに日本が武器支援できなかったかを考えると、偏に日本の平和憲法の神格化・神聖視に由来するものと思う。
 日本が世界基準から離れて特異に進化することは「ガラパゴス化」と称され、携帯電話から炊飯器に至るまで本来の使用目的には不必要な付加機能で飾る文化が育っている。
 憲法、特に前文の趣旨を絶対とする意識に基づく日本の外交基準・軍事常識が、世界の現状変化に顧慮することなく進化を止めていることも、ガラパゴス的と考えざるを得ないように思える。憲法前文と軌を一にする国連憲章を平然と踏みにじる常任理事国が出現した事態に対しても、ガラパゴス島から一歩も踏み出し得ない日本の政治家・知識人は、原始人的と評すべき存在ではないだろうか。
 また、敗戦後の取り組みはドイツを手本とすべきとしていた一部の「ではの守」殿は、今回のドイツの方針転換を何と見ているのだろうか。


イスラエルの一面を知る

2022年04月26日 | 歴史

 数次にわたる中東戦争で近隣国に配備されたソ連(ロシア)製武器と対峙した経験を持つイスラエルが、ウクライナへの武器供与や経済制裁に消極的である原因の一端を知った。

 イスラエル・ウクライナ両国は共にユダヤ人が中核をなす国であるにも拘わらず、イスラエルがウクライナ事変に人道支援以上の行動に踏み切らないことを疑問に思っていたが、イスラエルには「傍観せざるを得ない事情」があるらしい。
 イスラエルには、ソ連崩壊前の1990年代以降にソ連(ロシア)政府のユダヤ人移住解禁を受けて移住し、ロシア語を(も)話す国民が全人口(900万)の15%近くを占めており、ロシアに親類縁者を持つ国民・政治家も多く、彼らに配慮するためにも人道支援以上には躊躇せざるを得ないらしい。
 また、隣国シリアに存在するシーア派軍事組織に対してイスラエルが行う報復爆撃についても、シリアの制空権を握るロシアが黙認しているという実情から、直ちに反ロシア&ウクライナ支援という西側には全面的に同調できないともされている。
 イスラエルの「アイアン・ドーム」迎撃システムを基幹とする防空能力は高い評価を受けており、近距離ミサイルに対しては90%超の撃墜率を示しているとされるので、ウクライナにとっては供与を渇望するシステムである。もしウクライナがアイアン・ドームを手にすることができれば、ロシアの攻撃力を半減若しくは無力化することが可能で、ゼレンスキー大統領もイスラエル国会に向けた演説で供与を迫ったが、イスラエルは供与の姿勢を見せていない。

 以前に、イスラエルの政党と議員構成を調べた時にパレスチナ支援・同化を主張する政党が議席を得ていること、コロナワクチンの接種を開発国の米英と同時に開始できたことから、イスラエルの不可思議さと全世界に張り巡らされているであろうユダヤ人ネットワークに驚いたが、イスラエル国内のロシア系ユダヤ人の比率とウクライナ事変対応を見ると、単純に「イスラエル=親米一色」という見方は改めなければならないようである。
 単一民族国家と捉えていたイスラエルも、国民の出自によって必ずしも一枚岩では無いことを念頭に置いてイスラエルの外交・軍事を見₉れば、「核保有」が核大国の思惑・利害で国土を失う恐れを予防する意味からであろうことが理解できる。
 独自外交・独自防衛は、核大国の恫喝に対しても反撃の核兵器を持たなければ達成できないのかもしれない。


参院石川補選に思う

2022年04月25日 | 野党

 参院石川選挙区の補欠選挙で、自民(公明推薦)候補が勝利した。

 保守王国とされる石川選挙区であれば当然の結果とされるが、野党敗因の一つとして「野党候補の一本化ができなかったこと」が挙げられている。
 今回選挙に限らず、「野党候補の一本化」については素直に頷けない。
 同一選挙区で、同一政党候補が乱立することでの共倒れを防ぐために候補者を一人に絞ることは選挙戦術として仕方のないところかと思うが、「主義・主張が異なるために袂を分かって政治活動している政党」が、例え自公政権打倒という共通の目的があるにせよ候補者を一本化することは有権者無視の所業で許されるべきでないように思う。
 例えば、100の選挙区で立民と共産が候補者の一本化を実現したと仮定した場合、立民と共産の候補者配分はどうなるのだろうか。現有勢力を基にした比例配分か、はたまた両党党首の駆け引きの結果であろうか。いずれであっても、それは「票の貸し借り」であり、そこには有権者を人格のない「票」としか見ない政治家の驕りが見て取れる。
 経済活動では、企業の生き残り・共生のためにする「談合」が自由な経済活動を損なう行為と厳しく罰せられるが、政治の場面では「談合」が許されてはいるものの、有権者の自由意思を制限する側面と被害者の多さを考えれば「選挙談合」はより罪が重たいように思う。

 軍事では「戦略の過ちは戦術では挽回し得ない」とされる。例えば、大東亜戦争で「対米戦断行」とういう戦略過誤は「真珠港急襲」という戦術勝利では挽回できなかったというように使用される。
 国民の多くが何らかの対処を求める憲法や安全保障に関して、今も時代錯誤の懐メロ政策という戦略を持つ立憲民主党は、それらを根本的に見直さない限り、選挙協力という戦術では党勢を挽回できないと思う。
 政権を担える野党(自論では「ゆ党」)を持ち得えないのは日本の不幸であり、このまま立憲民主党が負け続けるならば自公政権に対するチェック機能は弱体化してしまうが、そんな事態になっても有権者は国政を「夢見る夢子ちゃん」である現在の立民に託そうとはしないだろう。
 選挙協力という戦術が成果を挙げなかったことを自覚してであろうか、「泉代表は選挙の顔として相応しくない。野にある辻元清美氏を代表として選挙の顔に」と云う新戦術が党内で囁かれているともされるが、戦術としても未熟であるように思える。
 立憲民主党は、心情左派のクラブ・サロンではなく、ましてや個人のファンクラブではないことを自覚して欲しいものである。


光市母子殺人の死刑囚に思う

2022年04月24日 | 社会・政治問題

 山口県光市母子殺害死刑囚の第2回再審請求が広島高裁で棄却されたことが報じられた。

 驚いたのは、死刑囚の年齢が41歳とされていたことである。
 事件が起きたのは1999(平成11)年で、逮捕されたのは当時18歳の少年であった。罪状は殺人・強姦致死(屍姦)・窃盗とされ、一・二審は無期懲役判決であったが最高裁で破棄差し戻され、差し戻し控訴審で死刑判決がなされ2012(平成24)年に死刑が確定した。その間、少年犯罪に対する死刑の是非、二審から担当した弁護団の教唆と疑われる荒唐無稽な陳述、橋下徹氏の弁護団懲戒請求の呼びかけ、実名本の出版、被告が被害者家族に宛てた嘲笑的な文章、・・・などの大きな社会的反響を呼び起こし、最高裁も従来の死刑判決の永山基準を変更せざるを得なかった。
 逮捕以来23年間の獄中生活、そして2012年の確定後死刑執行に怯える(?)10年間、彼は何を考え・何を求めて生き、そして今はどのようになっているのだろうか。
 再審請求は、公判以降に見出された新資料(証拠)がないと受理されないこととなっているが、彼の再審請求資料は、「人格形成に関する学術書」だけであり、責任能力の低下という罪一等を減じる根拠とは看做されないと判断されるものであるらしい。
 死刑の執行は、再審請求中には行われず、更には死刑囚が人間性を取り戻し、かつ刑死を受け入れた時に執行されると聞いたことがあるので彼の執行は未だ先になるのだろうし、執行に際しては高僧もかくやと思わせる態度で逝く死刑囚もいると聞くが、果たして彼の場合にはどうなのだろうか。

 自分は、死刑制度容認者であるが、長期間にわたって限られた空間で・限られた生を独房で過ごすのは、死刑囚にとっても社会にとっても如何ほどの意味を持つのだろうかと考えざるを得ない。
 死刑執行は確定後3か月以内に行うこととされていること、仮釈放の望みが殆どない無期懲役が長い時間をかける死刑と呼ばれること、を思えば、厳格な死刑執行は人道的ですらあるようにも思える。
 「それでも、生きることに意味があり」「国家が殺人を行うことはあってはならない」という人々からの総スカンは免れないとは思うが。