イスラエルで総選挙後2カ月間以上の曲折を重ねた末、12年間政権を維持していたネタニヤフ政権が交代した。
新政権は、中道派、右派、左派、アラブ系の合わせて8つの政党の連立政権であり、新首相となったナフタリ・ベネット氏は強硬右派「ヤミナ」の党首であるが、ヤミナ党の議席は8議席とされている。また、ベネット政権は4年任期の半分を経過した2023年に、連立内では最大勢力(国会内第2党)の中道派「イェシュアティド」党首イール・ラピド氏に政権を移譲する輪番制とされている。
イスラエルの政治形態は議院内閣制で、国会(クネセト)は一院制、議員定数は120名、選挙制度は拘束名簿式政党比例代表制となっている>
何故イスラエルでは8党も参加する連立政権が誕生するのかと調べて見た。
人口900万人のイスラエルには20近い政党が乱立し、クネセトに議席を持つ政党も10党を超えており単独の政党が過半数の61議席を獲得することはほぼ不可能で、建国以来過半数を獲得した政党は無いとされている。そんな事情もあってか、今回の首班指名でも賛成60、反対59、棄権1という有様で、賛成票を投じた議員が1名でも欠けると連立政権自体が危うくなることも予想される。それ以上に史上初めてアラブ系政党「ラアム」が政権入りしたことで、中東政策では政権内の意思統一が図れずに空中分解する危険性すら予測される。
今回の調査(難解な部分が多く勉強とまでは至らなかった。)を通じて、イスラエルに関して2つのことを知った。
1は、国家元首である大統領に関してである。大統領は国民の誰でも立候補でき、選出方法はクネセトにおいて、過半数の支持を得た候補が選出される。1、2回目の投票で過半数を得た候補がいなければ、3回目の投票で最も多く得票した候補が選出される仕組みとなっている。大統領の任期は7年で再選は禁止されており、副大統領職はおかれていないために大統領が、死亡、辞任、解任の場合にはクネセト議長が代理として職務にあたる。大統領としての適格を著しく欠く場合、または職務遂行が困難となった場合には、クネセトで3/4以上の賛成で大統領を解任できるともされている。
2は、イスラエルには憲法がないことである。イスラエルも、独立当初は初代首相ベン=グリオンのもとで1948年10月までに憲法を制定するとしていたが、対アラブ戦争等で時期を失い、1950年になって国体や人権に関する13の基本法を定めて、以後この条文を纏めて憲法に昇格させることを意図していたが、結局、憲法典の制定は棚上げにされたまま現在に至っている。憲法制定に至らなかった理由は、相次ぐ中東戦争で憲法どころではないという事情に加え、「イスラエルという国を誰のための国とするか」という重要事項について意見がまとまらなかったからとされている。このことは、政党の乱立と同根で、アラブ人とユダヤ人が呉越同舟状態であることや、世界各国を漂流した間にユダヤ人自体の価値観も多様化した所為ではと思っている。ちなみに基本法は13であるが、日本国憲法も11章で構成されていることから見れば、国の大方針と雖も10個内外に集約されるのであろうか。