もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

FATFを知る

2021年08月31日 | 社会・政治問題

 FATF(金融活動作業部会)なる国際組織の存在を知った。

 新聞の解説によるとFATFは、マネーロンダリングやテロリストへの資金供与を防止する目的で1989年に設立・37カ国が参加している。FATFは、参加国に調査団を派遣して不当な資金の流れに対する政府等の対策を調査して格付けするとともに、改善を促す組織とされていた。今回の格付けで日本は、3段階評価の2番目の「重点フォローアップ」とされ、監視が甘い国で早急な対策強化が必要な国に分類された。
 自分は数度にわたって、活動資金の出所が不透明であることから市民団体やNPOは「胡散臭い存在」と書いた。しかしながら今回のFATFの指摘で、NPOに寄せられた寄付金や交付金が背後に隠れた実質的支配者に流れること監視が不備であることが指摘されていることを考えれば、自分の想像以上に出金の方が脅威とされているのであろう。
 NPOは、2020年度末で認証法人50,896団体、認定法人1,208団体となっている。NPOになるためには所轄庁に申請(無料)する必要があるが、所管庁の審査は書類審査のみで、認証基準に適合すると認めるときには設立を認証しなければならないとされている。ネットには「認証率100%」を謳う代行業者もいることから、認証は作文の巧拙で左右されると推測される。認証法人のうち、「運営組織及び事業活動が適正で非営利活動の健全な発展の基盤を有し公益の増進に資すると見込まれる」ものについは認定法人とされるが、2,020年度末の法人数で計算すると認定法人は全体の2.4%に過ぎないことから、大半のNPOはチョット身を引いて眺めるべき存在であり、一部には危険なNPOも存在するように邪推できる。
 また、NPOへの寄付については税法上の優遇が与えられることから、自分には想像もできない金額の流れが有るのだろうとも推測できる。
 一方、NPO法人からの送金先についての監視は、云うに易く行うには困難で、近年は電子マネー決済、暗号資産、デジタル資産などを活用する等、手口が巧妙・多様化しているともされており、特に地方銀行は、送金先の実態を暴力団関係を除いては把握していない場合が殆どであるともされている。NPOやNPOからの送金先の実質的支配者は、おそらく公安関係者しか把握していない物であろうが、それらのデータを一般と共有することは、捜査や人権にも影響することから不可能であるように思える。

 明かにIS支持者の主催するNPO法人等は色眼鏡で見ることも可能であるが、悲しむべきことであるが、難民支援や貧困支援という人道的NPO、野生動物保護を掲げる団体にすら実質支配者を隠してテロリストの集金に手を貸しているNPOも存在しているのかも知れない。
 政府はFATFの指摘・勧告に対して、3年を目途に何らかの改善を図ることを求められているが、「角を矯めて牛を殺す」に至らない改革を模索して欲しいものである。門外漢の自分には確たる方策は思いつかないが、認証法人は設立後、一定期間経過後に立入審査を受けて認定法人にならなければ認証を取り消すということではどうだろうか。


アフガン撤退期限迫る

2021年08月30日 | 軍事

 米軍のアフガン撤退期限が明日に迫った。

 現在、タリバンがカブール空港へのアクセスを遮断、23日にはIS系武装組織による自爆テロ、27日米軍無人機によるIS系武装組織幹部への報復報復攻撃、28日バイデン大統領が報復継続を表明、・・・と緊迫した情勢が続いている。
 さらに注目すべきは、自爆テロに関してタリバン報道官が「全土を点としてしか掌握していないために、更なるテロや内戦の危険性が有る」ことを認め、報道では支配下地域においては原理主義法理による行動に対して、20年に及ぶ西欧型自由を知った住民との激しい衝突も伝えられている。
 情勢の変化にも関わらず撤退期限を墨守してガニ政権を支え切れなかったバイデン大統領は内外からの厳しい批判に晒されており、身内の民主党からも大統領の資質を問う声が挙がっている。
 アメリカは、ガニ政権が存続していたならば、タリバンとの合意を破棄してテロ撲滅と治安維持のための駐留を継続して影響力を残すことも選択できたであろうが、現状では全面撤退しか選択の余地は無いように思える。
 そんな中で中国は、早々と経済支援を条件に中国人と中国資産の保全をタリバンに約束させる漁夫の利を獲得し、バイデン大統領の政策変更の余地を更に狭めることに半ば成功し、数日以内に成立すると観られているタリバン政権の承認にまで踏み込めば、アフガンからのアメリカ影響力排除・駆逐という完全勝利も夢ではないように思える。
 タリバンも、コーランが食糧を与えてくれないこと、国内の西側資産の凍結・没収という埋蔵金だけでは永続できないこと、中国の支援がアフガン自立を目的としたものではないことを十分に理解して上での中国傾斜であり、アフガンを中国衛星国とすることに同意したものとも観ている。

 アフガンの政情はなお予断を許さないものであるが、日本がこれまでアフガン復興のために資金や人的に努力したこは、何だったのだろうかと考えざるを得ない。日本の支援は、純粋にアフガン自立のためであり、アフガンからの見返りを求め資源の簒奪を目的とするものでは無かったと理解しているが、今回のタリバン政権が一時的なものであったとしても、勝者は武器であり・人権を無視する者であるように思える。
 国内外を問わず「進歩的な人道主義者や平和愛好家」が口にする、「対話で解決」「仲良く共生」の主張が極めて無力で、一発の銃弾の前には無残にも砕け散るものである現実をアフガンが示しているように思えてならない。武力礼賛ネトウヨの暴言であるかも知れないが、力の原理は、人間の業であり、人類社会が必然的に持つ病巣であり、現代社会に於いても「力」を放棄することは、主張を無にして国威を損なうものと思う。


韓国に完敗

2021年08月28日 | 防衛

 韓国がアフガンからの輸送作戦を終了すると発表した。

 韓国は、空自機が出撃した24日に「空輸作戦遂行中」と短く発表しただけであるが、本日の報道では390人の救出・輸送を完遂したとされている。輸送作戦では、カタールに退避していた大使館員(情報機関員?)4名がカブールに戻ってタリバン下でも運航可能な複数台のバスを確保して市内から空港に対象者を輸送したとされている。また、諸準備は8月上旬には完成していたともされている。
 日本の救出輸送作戦の全容と成果は後日明らかとなって、検証に名を借りた不毛な犯人探しが朝野の耳目を集めることになるのだろうが、国民とりわけ反戦・反軍を主張する人に考えてもらいたい点がある。
 一般にシビリアン・コントロール(文民統制)と呼ばれる機能は、最近は語義が明確なポリティカル・コントロール(Political control:政治統制)と呼ばれる。今回の空自機の派出遅れは、紛れもなく政治の怠慢であるように思う。自衛官の安全が確保される場合にのみ対象国の同意を得て派出できると云う法令が足枷となって、隊員安全確保の確認に名を借りた逡巡が最大の原因であろうと推測するが、何故に政府は逡巡したのであろうか。原因はただ一つ、「政治家の保身」で、アフガン人の人命保護より保身の意識が先立つかと云えば「軍(自衛隊)を動かすことに対する国民の忌避感」に過度に忖度したことであると思っている。軍事行動に対する国民の監視・ブレーキは必要であるが、過度に・常時にブレーキを踏み続けることは政治の決断を遅らせることにしか繋がらないことは今回の事例でも明らかである。
 日本は偵察衛星も持った・外務省を含む各機関の情報と防衛省の軍事情報も一元化した・情報分析官も育った・近代的な自衛隊も整備した・自衛官の士気も旺盛である、首相官邸を中心とした通信インフラも整備した、にも関わらず救出作戦が列国に出遅れたのは、情報と自衛隊を活用する(できる)政治家/政治組織が育っていなかったことと、人命救助のための軍事行動は容認するという国民感情が育っていなかったことであると思っている。

 孫子は「兵は詭道なり」「兵は拙速を聞く(尊ぶ)」「疾きこと風の如く」と説き、貴重な刻を空疎な軍議に費消した「小田原評定」の例もあることを思えば、粗削りであっても時間を重視した作戦の方が、時として巧緻な作戦に勝ることも考慮すべきことのように思える。
 今回の輸送作戦対象者の全ては日本国民では無かったが、今回の推移を見る限り、尖閣・先島諸島に対する急迫不正事態に対しても同様の逡巡・遅滞が懸念されることを考えれば、総選挙で選ぶべきは「休業補償の増額」を公約トップに掲げる政党であってならないように思うし、総理も有事にあっては右顧左眄・躊躇なく決断できる人であって欲しいと願うものであるが、それ以上に、今回の輸送作戦の検証を通じて全国民が「軍事行動の何たるか」「危機対処は如何にあるべきか」を学び直すことが必要であると考える。

 


自民党総裁選を考える

2021年08月27日 | 与党

 自民党の総裁選が9月29日投開票で行われることとなった。

 現在のところ菅総裁に挑むのは岸田文雄・下村文博・高市早苗の各氏と観られているが、石破茂・河野太郎氏の動向も注目されている。
 勝手な評価であるが、岸田氏は外相時代の実績を見る限り次席指揮官が精々、下村氏は菅総裁以上の調整型、石破氏は学者型で、いづれも総裁・総理それもコロナ過という難局に相応しい指揮官たり得ない。さらに河野氏は、紛れもなく親ロ韓の家系・家訓の継承者で、祖父一郎・父洋平が遺した負の遺産が現在までも日ロ・日韓関係の障害となっていることを思えば、総裁・総理にしてはならない人物と思っている。
 となれが高市早苗氏しか残らないが、男尊女卑論者の自分でも、松下政経塾修了者としての明晰な頭脳と明快な論理は、有事の総裁・宰相として相応しく思える。総務相として、電波管理に関しては偏向メディアの免許取り消しもちらつかせる等、改革のための強権発動も辞さない指導力は魅力である。残念ながら、高市氏は立候補に必要な20人の推薦人の確保も疑問視されているが、党内の風向きが変わることに期待したいと思っている。
 一方、総裁選日程の決定に因って、総選挙は自民党総裁選の後になることが確実視され、10月21日の議員任期満了を以ての総選挙ともなれば11月末の投開票となる
 この事態を受けて、何が何でも菅総理の不人気の下で総選挙を戦いたい立憲民主党が、苦笑を禁じ得ない諸々を晒している。立憲民主党は6月の時点で、菅政権の対コロナ対策の不備等を掲げて内閣不信任案を提出した。内閣不信任案は、可決された場合には内閣総辞職若しくは国会解散が選択されるもので、立民は6月の時点では総理の交代か総選挙を望んでいたと解される。しかしながら、僅か2か月しか経たない現在では、総理の交代も起こり得る総裁選の早期実施に反対するという論理的矛盾を主張するのみならず、安住国対委員長に至っては「横浜市長選の敗北責任を菅総理に負わせるのは酷」と菅総裁再選にエールをすら送っている。高市氏と同様に松下政経塾出身の福山幹事長は「感染拡大の最中に総裁選を行うことには違和感」としているが、6月には良くて9月にはダメという論理が成立するには「6月までのコロナ対策は糾弾に値するものであるが、以後の2か月間のそれは十分である」との前提が必要であるが、それらの主張がなされないことを考えれば、「国民に寄り添う政党」を看板とする立民と雖も、政権奪取の政争・政局を最優先する政治屋集団に過ぎないとも思える主張である。

 コロナ閉塞感によって立民政権の誕生に期待し、その誕生も有り得る情勢であるが、さて、枝野政権の具体的なコロナ対策・経済政策・弱者支援・エネルギー政策・外交政策・安全保障政策について知っている人は皆無であると思う。何故なら、連合との選挙合意でも神津会長が求めたように政権構想が無いことに起因している。
 菅総理の支持率は30%台に低下しているにも関わらず立民の支持率も微増したとは言え10%にも届いていないのは、何でも反対党の立民が具体的な政策を持たない現実を有権者が知っているためであり、コロナ禍の非常時にあっては素人集団に実験的な政権運営を託す余裕がないことを賢明にも見抜かれていることであると思っている。


アフガンへの自衛隊機派遣

2021年08月26日 | 防衛

 在アフガン邦人等の救出・輸送の自衛隊機が漸くの24日に離陸し、既に中継地のドバイに到着したと思われる。

 派遣地域の同意が必要とする条件を、本ブログで提案したように「カブール空港の機能を維持しているのは米軍」との解釈を以て自衛隊機の使用を決断したことは評価するとしても、いかにも出遅れの感が否めない。アフガンンに派兵していた各国と比較する愚を承知してであるが、既に米:2.5~4.5万人、英:7千人、仏:4千人、独:数百人の輸送を完了し、韓国も24日に輸送遂行中と発表している。
 このように緊迫した情勢下での邦人輸送が喫緊の事態にあって、日本を矯めにする意図からであろうか、日本人以外の人命は無視するの意図からであろうかは不明であるが、記者会見で共産党の小池晃書記局長が理解に苦しむ発言をした。赤旗の記事を要約すると、「既に大使館の日本人職員12人は英空軍機でUAEに退避しているのに、なぜ自衛隊を派遣するのか」、「国際機関で働く日本人若干名と、日本大使館・JICAのアフガン人スタッフ数十人の輸送に、なぜ3機もの派遣が必要なのか」、「そもそも誰を・何人運ぶのか」、「政府は具体的に説明する必要がある」となっている。
 ワクチンの輸送に関しても述べたところであるが、凡そ軍事作戦のみならず計画の詳細を事前に公表することは、敵に情報を与えて対応策を準備させて結果的に作戦を瓦解させることにしか繋がらないことは、民間企業の製品開発や販売戦術が秘密裏に行われることでも明らかであるが、小池氏は、今回の輸送作戦を「チケットを持った人をスケジュールされた場所に運ぶ”はとバス”」と同程度にしか認識していないようである。
 フランス軍が輸送したアフガン人に数人のタリバン戦闘員が紛れ込んでいたように、各国の軍用機が一秒を争って離発着する現地での人定確認は困難であり、人定や家族構成等は本人の供述を信用するしかないように思える。まして、アフガン人は輸送するに値しないかの発言は、人民の血など一顧だにしないスターリンや毛沢東をすら思わせるものである。
 もし、自衛隊機が数十名しか輸送できなかったとしても、輸送機の故障や損傷、不確定の輸送対象者を考えれば、3機の輸送機は少な過ぎることはあっても多過ぎることは無いと思う。
 確かに小池氏の言うように、軍事作戦の実施を国会に報告して承認を得ることは必要である。「ではの守」で申訳ないが、アメリカでも大統領の軍事行動は議会の承認を必要とするが、承認の是非を検討するのは非公開の上院軍事委員会である。軍事委員会は与野党の議員で構成されるが、委員となるためにはFBI(連邦捜査局)による厳重な身体検査を受けて、「外国の影響が無い愛国者である」ことを確認されることが必要であり、その上で高度の軍事・対敵秘密情報にアクセスできる権限を与えられる。大統領の発表でも、おおまかな規模は明らかにされるが詳細に関しては発表されず、韓国が「現在、輸送作業遂行中」としか発表しないのも、敵を利する情報を局限するためで、軍事行動の鉄則を守っていることに他ならない。

 今回の自衛隊機派遣を「六日の菖蒲(アヤメ)、十日の菊」と書いたが、政府の決定は歓迎すべきもので、遅ればせながら政府も軍事行動のノウハウを体得しつつあると安堵している。以後は、非公開で、かつ秘密の守れる委員による軍事委員会で、自衛隊の行動に関する監察・審査を行う制度まで高めて欲しいものである。しかしながら、公安機関による身体検査をパスできる与野党議員は、限りなく少ないのではなかろうかとも心配している。
 孫子は「百年兵を養うは、一日これを用いんがためなり」としたが、今回の政府の重い腰や共産党の小池書記局長の妄言を聴く限り、日本の防衛は未だ道半ばの感が大きい。
 私事であるが、カンボディアPKOに参加できた際には、「これで幾分かの報恩を果たせた」と思ったことを付け加えて、終演。