もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

台湾へのワクチン提供を考える

2021年06月06日 | コロナ

 日本が提供したコロナワクチン124万回分が台湾に到着したことが報じられた。

 台湾当局や台湾国民の多くは、この緊急支援に感謝を表明する一方で、日本が提供したワクチンが稀にではあるが副反応として血栓が生じるとされるアストラゼネカ製ワクチンであることから、「毒をたらいまわしにするもの」との意見も一部にはあるとも報じられている。
 台湾のワクチン確保については、中国が自国製ワクチンの提供を申し出る一方で欧米からの入手については妨害しているとされ、台湾のドイツ企業からの入手交渉に対しては既に同社との契約を完了していた中国企業(中国政府)が台湾での販売代理権も自分たちが持っていると介入して破談に追い込んだことが明らかにされている。
 今回の日本の支援に対して中国は、「ワクチン支援を政治的利益を得ようとたくらむ手段」と論評して日本を牽制しているが、台湾と国交を持つ国に対して《ワクチン提供の代償として台湾との断交を迫って一定の成果を収めた》自国のワクチン外交については「知らぬ顔の半兵衛」を決め込むと云う鉄面皮振りである。
 途上国のワクチンについては、WHOが共同購入したワクチンを分配する「COVAX」や製薬会社が一定期間特許権を凍結・公開する取り組みが動き出してはいるが、先進国間でもワクチン争奪戦が繰り広げられている品薄状況や特許を活用できる能力を持たない国が殆どであることから、有効に機能するのは1年以上も先のことになるように思える。将来的にはWHOが各国の製薬会社をリンクさせて新型感染症のパンデミックには100日以内でワクチンを開発するという仕組みも提唱されているが、夢物語に終わるのではと悲観する一方で、この枠組みは中国に先進技術を開示してワクチン・サプライチェーンの中核に中国を据えることにも繋がりかねないので、計画が実現しない方が世界医療にとって良いのではとも思っている。

 中国の主張を容れて台湾のオブザーバー参加を剥奪したWHOであるが、G7の台湾参加擁護下の今年の総会でも台湾問題は議題にすら上らなかったのは、中国のチャイナマネーによる多数派工作がWHO内部に浸透している現状を示しているように思える。WHOは、コロナ対応に伴う不信感から体制の改革を求められているが、来春の任期切れを前にしたテドロス事務局長は、中国代弁者との陰口も意に介さない体で体制改革の中心にWHOの権限・強制力の強化を求めているが、次期事務局長選での再選を目指しているとも報じられていることを見れば、改革の本意は「WHOの中国薬局化完成」であろうことは容易に推測できる。