もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

七菌八起(ななころなやおき)

2021年12月23日 | コロナ

 住友生命が募集する「創作四字熟語2021」が発表された。

 最優秀作品は「七菌八起(ななころなやおき):38歳男性」が選ばれ、他にも、優秀作品9点・入選作40点が公表されたが、いずれも世相を端的に表現しており云い得て妙と思うところである。
 また、複数の高齢作者が複数の作品で入選以上を果たしており、諧謔味に薄い自分としては羨ましく思うと同時に、作者が柔軟な頭脳を保ち続けておられることに敬意を捧げざるを得ない。
 特に、入選作である「
中傷必罰」は2名の方の作品とされているが、本ブログでも「中傷」に近い表現が多い我が身を正すべきものに感じたので、来年は「怒りの感情」をソフトに、クスリに言い換える「創作4文字熟語」に挑戦してみようかと思っている。ただし、来年の計画を何一つ成し遂げたことのない過去を振り返れば、計画倒れに終わることも目に見えてはいますが・・・。

 今年も余すところ一週間となりましたが、1年間の御訪問とご指導に感謝申し上げます。
 だましだまし使っていたPCを、思い切って修理に出すことにしました。年末年始の無聊を慰める手段の一つを失うことになりますが、最後のお手入れに乏しい財布をはたくことにしました。
 修理完了後にはまた、拙文を再開したいと思っております。


チェンバレン・平沼騏一郎を学ぶ

2021年12月21日 | 歴史

 アメリカの新聞が、バイデン大統領を「現代版ネヴィル・チェンバレン」と書き立てていることが報じられた。

 ネヴィル・チェンバレンは、1937(昭和12)年5月~1940(昭和15)年5月の間イギリスの首相であり、ナチス・ドイツに対する宥和政策で第二次世界大戦を招いた世紀の失策の政治家とされている。
 1938(昭和13)年9月、チェコスロバキアのズデーテン地方帰属問題解決のためにミュンヘン会談を主導して、ヒトラーに対して「これ以上の領土要求を行わない」ことを条件にズデーデン地方の割譲を認めたことで、ヒトラーに誤ったシグナルを送ったとされているが、ミュンヘン会談の結論は、当時の欧州からはドイツとの全面衝突を回避した英断と高く評価され、英本国でも帰国したチェンバレンに国王夫妻とともにバッキンガム宮殿のバルコニーから国民の歓迎を受ける特権を与える等の評価を受けている。
 1939年9月1日のドイツのポーランド侵攻を受けて、2日後の9月3日に対独宣戦布告を行う羽目に陥り、結果的にミュンヘン会談は対独戦を1年間先送りしたに過ぎない結果となった。この1年間でイギリスの戦争準備が整ったとの評価もあるが、チェンバレンの後を継いだチャーチルは「ドイツにも戦備充実の時間を与えたもの」と評しているように、後世の評価は芳しくないようである。
 一方、平沼騏一郎氏は第35代内閣総理大臣として1939(昭和14)年1月5日から8月30日まで内閣を率いた。1937(昭和12)年に締結された日独伊防共協定に基づいて共産主義(ソ連)の浸透阻止に当たることを信じていた平沼であるが、1939年8月20日のノモンハンでの日ソ衝突を横目に8月23日に独ソ不可侵条約が電撃的に締結されたことを知り、有名な「欧洲の天地は複雑怪奇なり」という声明を残して総辞職した。
 チェンバレンと平沼の例では、力での現状変更を企図する国に対しては、いかなる条約も一夜にして紙切れに変わり得る現実を示しているように思える。国際司法裁判所の裁定を無視して九段線を維持し・歴史的にも他国領土である尖閣諸島を狙う一方で、北京五輪には日本に対して臆面もなく「信義」を言い立てる中国の例を待つまでもないだろう。日韓合意を平然と破る韓国にもその匂いが濃厚であるが、総理には「紙(条約)は火(武力)に弱い」現実を心に留めて欲しいものである。

 バイデン氏が攻撃されているのは、ウクライナ侵攻・併合を隠そうともしないロシアに対して、経済制裁しかしないことに因っており、「ウクライナへの武器供与はロシアの侵攻が起きた後」とするに至っては弱腰とまでこき下ろされている。プーチン氏は停戦合意という紙を信じて内戦激化という火を過小評価したアフガニスタン撤退を観て、バイデン氏が強硬策を採れない「弱い指導者」と見做しているともされている。
 日本も、お得意の”遺憾”表明など冷徹な国際関係にあっては何の役にも立たないことを学ぶ時期にあるように思うのだが。


RIMPAC92'の思い出

2021年12月20日 | 自衛隊

 補給艦に乗ってRIMPAC92'に参加した。

 参加国は、米・日・加・豪・韓の5ヶ国で、海上自衛隊の兵力は、第2護衛隊群の護衛艦8隻、補給艦・潜水艦各1隻、ヘリコプタ8機、対潜哨戒機8機という大兵力であった。
 パールハーバーに集結した演習参加艦艇は45隻以上とされているが、その全てが埠頭係留で、さらに埠頭には艦船への給電設備と給油設備が備わっているという贅沢さで、貧乏海軍(海自)では想像できない基地機能であった。流石に全艦艇に電力を供給する程の余裕はなく電力受給は電機関係を修理する場合に限定されたが、埠頭での給油は、バージ(油船)に頼っている海自から見るとうらやましいものであった。
 補給艦のように大量の燃料を搭載する場合は、専用の給油岸壁で行う必要があった。その際、担当者(軍属)への缶ビール6本の袖の下で貯油・給油施設を窺うことができたが、覆土防護されたタンク群は圧巻であった。対米戦争劈頭の真珠湾攻撃で南雲機動部隊は基地機能破壊のための2次攻撃を行わなかったが、燃料タンクだけでも破壊しておれば米海軍の行動を制約することができて、ミッドウエー海戦も違った展開になっていただろうにと悔しく思ったものである。
 米海軍では、0800時と日没時の軍艦旗掲揚・降下に際して、在泊艦艇の国歌を吹奏する慣わしである。RIMPAC92'でも5ヶ国の国歌が陸上の拡声器から流され、その間(10分近く)乗員は挙手の敬礼のまま「気を付け」する必要があるが、補給艦の停泊場所は拡声器から離れていたために国歌が終わった時が聞き取れず、見張り員を配して僚艦等の動向に倣う必要があった。資料ではRIMPAC2018'の参加国は26ヶ国とされているので、この伝で行けば国歌吹奏時間は1時間近くにもなるであろうことから、何らかの対策が取られているのではないだろうか。
 以前にも書いたことであるが、ハワイ停泊中の各艦にはオートボーンと呼ばれる海軍回線電話が設置された。オートボーンにはランクがあり、個艦には緊急時には割り込み・遮断される回線が、司令部には遮断機能が無い回線が割り振られた。電話帳には世界各地に展開する米海軍基地が網羅されており、オーシャンネイビーの底力が滲み出ていた。さらに裏技を使えばオートボーンから海自回線に接続することも可能であるのかも知れない。

 最近の産経抄で「真珠湾と云う名称は無い」ことを知った。確かに、海図(港図)にもパールハーバー(真珠港)と書かれており、山本五十六提督の書簡や連合艦隊の作戦計画にも「布哇真珠港攻撃」と書かれているそうである。
 今更、真珠湾⇒真珠港への呼称変更は必要ないと思うが、アメリカ側の「リメンバー・パールハーバー」はさておき、徹底を欠いて悔いを残した戦訓を忘れないためにも、「真珠湾を忘れるな」は日本でこそ語り継がなければならないように思う。


リムパックへの台湾招待

2021年12月19日 | 軍事

 アメリカが、リムパック2020に台湾を招待する可能性が報じられた。

 台湾としては表舞台への正式招待であり西側諸国の友誼と好意的に受け取る一方で、中国関係が尖鋭化することや中国への帰属を主張している国民党支持者の反発も予想され、招待受諾にはなお紆余曲折が予想される。
 リムパック(環太平洋合同演習(RIMPAC)は、アメリカ海軍が主催して2年に1度ハワイ周辺海域で実施される演習であり、主要な変遷は次のとおりである。
  1971(昭和46)年 アメリカ・カナダ・オーストラリア・ニュージランドの4カ国海軍で開始
  1980(昭和55)年 海上自衛隊が護衛2隻と対潜哨戒機8機で参加。5カ国
  1984(昭和59)年 ニュージランドが枠組みから離脱。 4ヶ国
  1990(平成  2)年 韓国参加。5ヶ国  
    以後、回を追って参加国が増加
  2012(平成24)年 ロシア参加(ロシアの参加はこの回のみ)。 22ヶ国
  2014(平成26)年 陸上自衛隊参加。中国参加(2016年も参加)。23ヶ国
  2018(平成30)年 参加26ヶ国。艦艇47隻・潜水艦5隻・航空機約200機・人員約25,000人の歴代最大規模の演習となる。
  平成20年は世界的なコロナ禍で、計10ヶ国。艦艇22隻・潜水艦1隻・人員約5,300人と規模を縮小し洋上演習のみ実施  となっている。
 海上自衛隊の参加兵力も、2000年前後は、潜水艦・補給艦を含む艦艇10隻程度、対潜哨戒機8機と大規模で参加していたが、北朝鮮のミサイル対処や尖閣海域の緊迫等に伴って2010年以降は護衛艦1~2隻の参加となっている。
 現在の訓練態様は不勉強であるが、かっては集団的自衛権解釈の制限から、RIMPAC参加であっても訓練相手はアメリカ海軍に限定されており、その他の海軍とはハワイでの儀礼的な交歓に留まっていた。そのため、海上自衛隊の目的は、ハワイ近海でのRIMPACよりも、ハワイ~サンディエゴ間で行われる米海軍との日米共同訓練が主体であった。

 参加(招待)国の推移に見られるように、近年のRIMPACは各国海軍の戦技・戦術の共有・錬成よりも、政治的デモンストレーションの趣が強くなっているように思えるので、台湾招待もその一環でなされたものであろう。
 台湾にとってRIMPAC招待の諾否は、北京五輪の政治的ボイコットで苦慮している日本など足元にも近寄れないほどの政治的決断を迫られるものと同情するところであるが、軍事的意義を考えれば受諾・参加することになるのではないだろうかと観ている。


岸田総理の限界か

2021年12月14日 | 与党

 子育て支援給付金の支給が、実質的な10万円一括給付で活着した。

 岸田総理の信条の一つは、かっての著書に記された「聞く力の体得」と理解しているが、就任以来の言動を観る限り、「聞く力」の重視は、多様な異見に逡巡して判断を先送りすることで憶測の乱立を呼びこんで結果的に混乱を増幅することにしか寄与しないように感じられる。
 当初の配分計画では、5万円をクーポン給付するとされていたために、前回の定額給付金の支給遅れ批判の矢面に立たされた自治体は、印刷物の先行手配等に踏み切ったケースも有るとされる。
 一部識者の分析では、先の定額給付金の多くは消費に回されることなく貯蓄に回されたので、クーポン配布の方が多様な消費行動に使用されて経済効果は大きいとされるが、そのような本来議論よりも事務経費の多寡に議論が集中してしまった。この1000億円近い事務経費も、最終的には印刷・運輸通信業者や地方公務員(臨時雇用者を含む)の手に渡るので、経済支援の一部に捉えられる公費支出であるが、一様に税金の無駄と切り捨てられた。
 公明党の発議以来半月近くも岸田総理が決断できなかった一連の顛末を眺めると、岸田総理が偏に「異見に耳を傾け過ぎた」結果であるように思える。
 全額現金支給と半額クーポン支給には一長一短があり、いずれかの方策が効果的であるかは誰でも断定できないが、全ての国民が満足・賛成する国策などあり得ないことは歴史も証明していることで、賛否拮抗の場合は指導者が断を下すことは全ての国で行われている。
 もう一つ気懸りであるの、対オミクロン水際対策として国交省が「日本人の入国禁止」を航空会社と旅行業者に通告したケースである。この事象は単なる国交省の暴走であり、岸田総理が翌々日に撤回を指示したことで混乱は最小限に抑えられたが、禁止通告を官僚が専行したことについては疑念を持つものである。
 トップにある程度の専権事項を定めたタスクフォースであれば許容できる程度のものであるが、通常編成の官僚機構で起きたことは、官僚上層部に「岸田総理は官僚の判断を承認、若しくは否定しない」との認識があるのではないだろうか。官僚上層部が、国務大臣時代に示した判断などから、政治(岸田総理)軽視の風潮を持っているのではと危惧している。

 今になれば愚策と評価されている「アベノマスク」政策であるが、当時の狂乱世相を思い起こせば「何か有効な手段は?」という模索の結果から政治指導でなされたもので、結果論としては否定されても無作為の愚には優るように思う。
 「政治家は後世の被告席に立つ覚悟」が信条の中曽根氏の言を俟つまでもなく、岸田総理には、異見に耳を傾ける以上に、拙速であっても「スピードを」、「官僚へのコントロール強化」を求めるものである。
独りごと《高市総理であれば3日で決断したろう。》