もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

国連の人種差別撤廃委員会を勉強

2018年08月31日 | 中国

 国連の人種差別撤廃委員会が「慰安婦問題の恒久的解決」を日本政府に勧告した。

 日本は、韓国の慰安婦問題に関しては「日韓合意で最終的かつ不可逆的に解決済み」と主張したが、勧告では「韓国人だけではなく全ての国籍の慰安婦対処」と拡大されたのみならず、一部の委員からは同問題における政府間合意は解決にならないとする意見が出された模様である。国連とは政府間の軋轢を調整する機関と認識していたが、同委員会は国連の枠組みを超越して個人の利害の領域に踏み込んだ気配がする。過去にも朝鮮学校への教育無償化除外の是正を勧告する等、同委員会の勧告には不透明な部分が極めて多いと感じていた。改めて同委員会の活動を調べてみたが、苛斂誅求なアパルトヘイトと報じられているチベット自治区や新疆ウイグル自治区における漢民族の横暴には中国政府の大攻勢に慄いたかのように公式発表を鵜呑みにしてさしたる勧告を出せず、主として民族的な理由から難民となったクルド人やロヒンギャ問題についてはUNHCR(国連難民高等弁務官事務所)にすべてを託しているもののようである。過去、国連の人権理事会(人権委員会の発展形)からも慰安婦問題に関して勧告を受けているが、当時は日韓合意が肯定的に捉えられていたように記憶しているが、今回の人種差別撤廃委員会の勧告を見ると中国覇権主義の影響拡大が懸念されるものである。極めて中国寄りとなったユネスコからアメリカが脱退したためにユネスコ自身が改革を約束した背景には、改革しなければならない不正が存在する自覚がユネスコにあったものと思う。

 こうした一連の動きを眺めてみると、国連の勧告には耳を貸すであろう国に対しては厳しい勧告を、そうでない国に対してはおざなりな勧告で済まし、恰も人種差別に対して一定の功績を挙げているとする安易な姿勢が見え隠れする。欧米諸国を主犯とする植民地問題の根幹に触れることなく満州国建設を糾弾する国際連盟を脱退した日本のような国が再び現れるかもしれない。いや、日本も改革の様相によってはユネスコや人種差別撤廃委員会から脱退すべきかもしれない。


防衛計画の大綱の改定とクロス・ドメイン

2018年08月30日 | 防衛

 防衛計画の大綱改定に対する有識者懇談会の初会合が開催される等、作業が本格化した。

 防衛計画の大綱は、概ね10年間隔で改定されることになっているが、前回改定後の国際関係の急激な変化に対応すべく5年経過後に改定が検討されるものである。しかしながら大綱に盛り込まれた諸施策が実効的に完成されるためには数年の期間が必要であり、常に自衛力が情勢変化に後追い状態であるのは致し方のないところと思う。今回の大綱改定のキ-ワードは「クロス・ドメイン(自民党訳は多次元横断:政府訳は「領域横断)と「アクティブ・ディフェンス(積極的防御)」機能の強化であると思う。クロス・ドメインとはインターネトで世界中のサーバーから公開されたコンテンツを利用できるシステムであると思っていたが、一般的にも使用されるものだと知った。それはさておき、自民党から今回提言された「クロス・ドメイン」は、従来の陸海空3自衛隊の統合運用の枠を宇宙やサイバー空間にまで広げたもので、ハイブリッド戦にも対応できる防衛力の整備を念頭に置いているもののようである。折りしもJAXAはスペース・デブリ(宇宙ゴミ)回収方の開発研究や有人宇宙船(月面離陸船)の開発に意欲を見せており、防衛計画と気脈を一にした動きとも考えられる。一方、アクティブ・ディフェンスは、これまでの専守防衛の概念から一歩踏み出して、侵攻兵力の後方に位置する策源地若しくは指揮管制機能を攻撃し得る兵力を整備しようとするもので、これまで忌避されていた巡航ミサイル等の長射程火力、EMP兵器、ステルス戦闘機等の整備を可能とするものと考える。また、米中の関係が進展してアジア地域におけるパワーバランスが崩れる事態を考慮すれば、これまでのようなアメリカの兵器体系に従属・隷属する状態からの脱却をも考慮しなければならないと思う。現在、日本学術会議は軍事技術の研究開発には加担しないとしているが、これまでも半導体、金属材料、AI等のデュアルユース技術開発を担って世界の軍拡に手を貸している事実を認めて、象牙の塔から出て日本の存立に貢献することを求められる日も近いと思うところである。

 今回の大綱改定、特にアクティブ・ディフェンス能力の強化に伴って問題視されるのが、憲法9条との兼ね合いであろうと思う。二つのテーマを並べてみるとき、9条2項を削除するという石破茂氏に軍配を挙げたくなるのだが、果たして総裁選ではいかに・・・。

 


92歳の英国人と露営の歌

2018年08月29日 | 歴史

 92歳の英国人が、軍歌「露営の歌」を5番までよどみなく歌うと聞いた。

 氏は、日本陸軍の暗号解読のために日本語速修を命ぜられた18歳の時に覚えたと述べているが驚きである。尤も、氏は大戦後も英国の諜報機関で勤務しアラビア語やスロベニア語も修得したとされることから特別の才能をお持ちの方と推測するが。閑話休題、今日の口説は軍歌と記憶力である。軍歌や行進曲は云うまでもなく兵士や国民の戦意高揚のために洋の東西を問わず作られており今に残る名作も多い。さらに、軍歌等は作られた時代の潮流・世相を伝える遺産とも呼ぶべき価値があると考えるが、日本においては口ずさむことさえはばかられる存在となっている。ちなみに、軍歌は、数年前までほんの数曲ではあるがカラオケメニューに残されていたが、現在では全く姿を消してしまった。世界3大マーチとも称される「軍艦行進曲」はパチンコ店でも流されなくなった。運動会でもラデツキイー行進曲、トルコ行進曲の使用はまだ許せるとしても、星条旗よ永遠なれが流される事態に至っては、泉下の先人は何と考えるであろうか。歌詞に込められた先人の熱情・至誠を伝えるためにも、国語力伝承のためにも、カラオケメニューとしての復活を望むところである。一方、記憶力に関してであるが、昨日の夕食メニューより幼児期の記憶の方が鮮明である痴呆老人の路を確実に歩んでいる自覚がある自分として、92歳英国人に挑戦すべく高校3年時に漢文教師から強制された「長恨歌」暗唱を試みたが、20行くらいであやふやとなってしまった。やはり記憶域の活用には天賦の才と後天的な訓練が必要であることを痛感した。子供を騙る詐欺犯に易々と乗ぜられることでも明らかなように記憶力のみならず識別・弁別の能力も確実に衰えていることは明白で、橋本環奈と長濱ねる両氏の区別が心もとない、吉永小百合ははっきり認識できるのに(長嘆息)。

 DHA・EPA・アラキドン酸・・・・。ボケ防止を謳うサプリメントのCMを毎日目にする。自分も世話になった方がいいのだろうか?イカン・イカン。製薬会社の口車に乗るものかと、このブログを書き続けて何とか乗り切ろうと考えておりますので、どうぞ人助けと思いお付き合い下さい。一方、カラオケの軍歌メニュー復活は是非にと願うものであるが。


ソフトランディングは今どこに

2018年08月28日 | 歴史

 産経新聞に掲載された、神谷万丈防大教授の論を読んだ。

 氏は、現在の世界情勢を『数十年に亘って世界の平和と繁栄の基盤とされた「リベラル国際秩序」が動揺する事態』と分析している。氏の云うリベラル国際秩序を自分流に意訳すれば、後進地域に先進地域の物質的恩恵を分与して後進地域住民の価値観を変化させ、以て先進地域(西側)と同様な政体に穏やかに導こうとする考えを表現したものと思う。それを一言で表したのが北朝鮮対策として一時もてはやされた「ソフトランディング」というキャッチフレーズではなかろうかと考えるものである。しかしながら、ソフトランディングが成功した事例は、東西ドイツの統一くらいしか思いつかない。ドイツ統一にしても東ドイツが曲がりなりにもキリスト教的価値観を残していたことと、複雑な民族対立が無かったことから実現できたものであると思う。アフガン、リビア、シリア、イラク、ミャンマー等々の紛争地機には、物質的な豊かさ以上に譲れない価値観があるためにソフトランディングなど思いもよらない状態にあり、同じキリスト教価値観の基に富の共有で共生に成功した感のあるEUでさえも、英国の離脱やスペインの内部分裂の動きが顕在化している。ソフトランディングの最大の失敗例は中国であろう。中国の巨大な市場に惹かれた先進諸国は、挙って中国をホームパーティーに招き、プレゼントを渡した結果が、現在の暴挙を阻止できない状況を作り出していることに、ようやく世界が気付いたものである。しかしながら時すでに遅く、飼い犬と思っていた中国は狂犬と化し、飼い主を噛むどころか病原菌を世界に蔓延させようとしている。近年まで中国にODAで支援したものの南京虐殺という返礼しか貰えなかったこと、尖閣領有権の主張を大人の知恵と棚上げした挙句に苦境に陥っている現実、近隣国への配慮のみ重視した日本の「リベラル国際秩序」論者の責任は計り知れないものと思うが、既に彼等の大部分は紛争地域に対する経済制裁(ハードランディング)を良とする側に宗旨替えをし、残りの一部は人道支援の美名を隠れ蓑にして未だに蠢動しているのではなかろうかと推測するものである。

 氏の主張は、「それでも世界はリベラル国際秩序の理念を保持し続けなかればならない」と続き、技術・経済・環境・人権で中國を凌駕できればソフトランディングは可能と結論している。一方でトランプ大統領は、中国のソフトランディングの試みを放棄して力勝負に持ち込もうとしており、後世の勝者は米中のいずれであり、歴史家はどちらに軍配を上げるのだろうか。

 

 


米国の有力シンクタンクに中国の影

2018年08月27日 | アメリカ

 米議会の「米中経済・安全保障検討委員会」報告で、米国の有力なシンクタンク等が中国共産党中央統一工作部から資金提供を受けていることが明らかとなった。

 米国のシンクタンクは、内政・外交・経済等の主要政策に関する主張が世論に大きな影響力を持つのみならず、下野した高級官僚や明日のホワイトハウス入りを目指す人材が多く集まっているため、単なる研究機関ではなくアメリカにおける政治経済の人的補給源ともされていると認識している。孔子学院で大学に浸透し、有力シンクタンクには資金で影響拡大を図り、各議員へのロビー活動は特定の広告代理店が一括して行う、中国のハイブリッド戦略がアメリカ社会で成功しつつある実態が、ようやく明らかにされつつある。アメリカのリベラル紙も象牙の塔の汚染に警鐘を鳴らし始め、国防総省のプログラム(軍事研究の共同・委託開発)に組み込まれた大学における孔子学院閉鎖も実現しつつある。知的財産権保護のために関税障壁を設けたり、受注等の経済活動に制約を設けたトランプ大統領にとって、知的財産の宝庫である大学・シンクタンクからの中国ウィルス汚染除去は、是非にも完遂したいことと推測する。日本政府もようやく重い腰を上げて、政府機関の受注業者指名から中国の2社を外すことを検討中とされているが、いかにも遅い対応で、しかも具体的な対象(社名)を明示しない不徹底かつ及び腰な内容になるとも報じられている。この対応の遅さを見ても、日本の中枢にも中国の魔手が伸びているのではないだろうかと疑心案議に駆られる。同一行政区域内に存在する問題にも拘らず、尖閣諸島については無言、米軍基地撤去のみ主張するオール沖縄運動と運動の中核をなす共産党に関しても同等以上の思いがする。

 アメリカ東部のボストン・ヘラルド紙は社説で「大学は、保守的な思想家が構内にいることを許さないが、中国共産党が「かれら」の言葉で話すことは許している」と皮肉っているそうである。日本のテレビに登場する中国問題の専門家や研究者にも同じ臭いを嗅ぐのは、果たして自分だけだろうか。