国連の人種差別撤廃委員会が「慰安婦問題の恒久的解決」を日本政府に勧告した。
日本は、韓国の慰安婦問題に関しては「日韓合意で最終的かつ不可逆的に解決済み」と主張したが、勧告では「韓国人だけではなく全ての国籍の慰安婦対処」と拡大されたのみならず、一部の委員からは同問題における政府間合意は解決にならないとする意見が出された模様である。国連とは政府間の軋轢を調整する機関と認識していたが、同委員会は国連の枠組みを超越して個人の利害の領域に踏み込んだ気配がする。過去にも朝鮮学校への教育無償化除外の是正を勧告する等、同委員会の勧告には不透明な部分が極めて多いと感じていた。改めて同委員会の活動を調べてみたが、苛斂誅求なアパルトヘイトと報じられているチベット自治区や新疆ウイグル自治区における漢民族の横暴には中国政府の大攻勢に慄いたかのように公式発表を鵜呑みにしてさしたる勧告を出せず、主として民族的な理由から難民となったクルド人やロヒンギャ問題についてはUNHCR(国連難民高等弁務官事務所)にすべてを託しているもののようである。過去、国連の人権理事会(人権委員会の発展形)からも慰安婦問題に関して勧告を受けているが、当時は日韓合意が肯定的に捉えられていたように記憶しているが、今回の人種差別撤廃委員会の勧告を見ると中国覇権主義の影響拡大が懸念されるものである。極めて中国寄りとなったユネスコからアメリカが脱退したためにユネスコ自身が改革を約束した背景には、改革しなければならない不正が存在する自覚がユネスコにあったものと思う。
こうした一連の動きを眺めてみると、国連の勧告には耳を貸すであろう国に対しては厳しい勧告を、そうでない国に対してはおざなりな勧告で済まし、恰も人種差別に対して一定の功績を挙げているとする安易な姿勢が見え隠れする。欧米諸国を主犯とする植民地問題の根幹に触れることなく満州国建設を糾弾する国際連盟を脱退した日本のような国が再び現れるかもしれない。いや、日本も改革の様相によってはユネスコや人種差別撤廃委員会から脱退すべきかもしれない。