WTO(世界貿易機関)事務局長選に韓国産業通商資源省の兪明希氏(女性)が出馬することが報じられた。
元アゼベド事務局長(ブラジル)は2013年に第6代事務局長に選出されて現在2期目であるが、WTO改革が進まないことから任期を1年残して退任する。現時点で後任選挙に立候補を表明しているのはメキシコ・ナイジェリア・韓国(EUは出馬断念)であるが、誰が当選しても西側諸国(特にアメリカ)が納得できるような改革は実現できないだろうと観られており、上級委員の選考・選出を拒否しているアメリカの姿勢が変化することはなく、WTOの機能不全は近い将来には解消できないと思われる。韓国は、日本の対韓輸出管理の厳格化に対してWTOに提訴したが、提訴を担当したのが兪明希氏であることを思えば氏が当選した場合には、今まで以上にWTOの公正さが損なわれることが予想される。兪明希氏は立候補表明に際して「紛争解決機能の実効性を失うなど危機にあるWTOの交易秩序と国際協力体制を復元し強化することが、私たちの経済と国益の向上に重要だ」とし、「高まっている私たちの国の地位に相応しく、国際社会の要求に主導的に貢献する時が来た」と述べている。このコメントについて日本のメディアは一様に「WTOの中立理念を述べている」と報じているが、自分は「当選後は韓国経済のために働く」と公言しているものと解釈している。「韓国経済のため」は貿易管理体制を中国主導型に変更させる間接表現に他ならず、こうなれば15の国連機関のうち中国が意のままに操れる機関はWHO・WTOを含めて6機関にも及ぶこととなる。
先に日本が提訴した「韓国の福島県産品輸入規制問題」では、科学的根拠を認めて日本の主張を妥当とした小委員会(パネル)の裁定について上級審が「韓国の食品衛生法に合致しており妥当」と韓国国内法を優先するという国際調停機関としては不可解な裁定に煮え湯を飲まされた日本としては、WTOを更に恣意的に運用するであろう兪明希氏の当選阻止に全力を挙げて欲しいと願うところである。