もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

宇宙資源法の成立を知る

2021年06月16日 | 社会・政治問題

 宇宙空間で採取した資源の所有権を民間企業に認める議員提出の「宇宙資源法」が、与野党の賛成多数により可決・成立したことを知った。

 時事通信によると《宇宙資源については国際的な規定がなく、国内法は2015年に米国、17年にはルクセンブルクで成立しているが、2017年に国連の宇宙空間平和利用委員会(COPUOS)が国内法整備を排除しない見解を示した》ことを受けて制定されたもので《激化する各国との宇宙開発競争に乗り遅れないようにする狙いがある》とされ、今回成立した法律は《人工衛星の許可に特例を設け、事業者は月などの天体を含む宇宙空間に存在する水や鉱物資源を採取・使用することで収益を上げ、処分する権利を取得できる》となっているらしい。
 国家事業としての月や火星の探査が進み、月面基地の建設も絵空事でないことに加え、アメリカでは間もなく民間企業による宇宙旅行が実現する状況であるが、鉱物資源の採取・持ち帰りについては当分の間は実現不可能であろうとは思うものの、採算が採れる希少物質が発見された場合には一挙に加速する可能性も残されているように思える。
 ではJAXAが持ち帰った「りゅうぐう」の土壌サンプルで一儲けできるのではと思ったが、JAXA(宇宙航空研究開発機構)は 国立研究開発法人であるので土壌サンプルを売却することは出来ないようである。
 さらに、月と火星の土地は個人に販売されているのでは?と思って調べて見ると、1980年以降ネバダ州に本社を置くルナ・エンバシー社が販売しており、日本でもルナエンバシージャパンとして活動しているようである。何故に月と火星の土地の販売が可能かと云えば、ウィキペディアでは《アメリカ人のデニス・ホープ氏が「月は誰のものか?」と調べたら、1967年に発効した宇宙条約で、国家が所有することは禁止しているが個人が所有してはならないとされていなかったので、1980年にサンフランシスコの行政機関に所有権の申し立てを行ったところ正式に受理された。これを受けて同氏は、念のため月の権利宣言書を作成、国連、アメリカ合衆国政府、旧ソビエト連邦にこれを提出したが、この宣言書に対しての異議申し立て等が無かった為、月の土地を販売して権利書を発行するというビジネスを開始した》と解説されていた。現在、いかほどの土地が、いかほどの個人に売られているのか判らないが、もしかするとアポロ11号のアームストロング船長は私有地に許可なく踏み込んだ可能性もあり、将来月面基地が建設される際には地権者から借地料を求められたり、日照権訴訟を起こされる可能性も無しとしないようにも思える。

 会期末恒例の内閣不信任案も提出・否決され、立民・公明が競って骨抜きした外国人土地規制法が成立し、と消化試合に入った国会であるが、宇宙資源法のように20年30年後には大きな意味を持つかもしれない法律もひっそりと成立している。会期末に一括上程されて華々しく審議・討議されることもなく一括採決される法案については衆目を浴びることもないが、宇宙資源法について将来の国民は「先見性・慧眼」と評価するのだろうか、それとも「大いなる足枷・愚則」と切り捨てるのであろうか。