元内閣参与の高橋洋一氏がTwitterでの発言を批判されて更迭された。
改めて書くまでも無いと思うが、高橋氏は日本のコロナ禍の現状についてジョン・ホプキンス大のデータを列挙した上で「この程度の『さざ波』で五輪中止とかいうと笑笑」と呟いたとされる。氏のTwitterを見ていないので各国の感染率を試算した。医療態勢が整っているであろうことと、データ隠しが少ないであろうG7における感染者の対人口比を高い順に並べると、アメリカ10.1%、フランス8.9%、イタリア7.0%、イギリス6.7%、ドイツ4.4%、カナダ3.7%、日本2.9%となっている。日本ではPCR検査や抗体検査母数が少ないために無症状感染者が統計に現れていないという反対意見があるので、対人口死者比についても並べてみたら、イタリア0.2%、イギリス0.19%、アメリカ0.17%、フランス0.16%、ドイツ0.09%、カナダ0.06%、日本0.007%となり、日本の感染率や死亡率はG7中で最低であるように試算できる。
改めて、この数字を念頭に置いて高橋氏の発言を眺めると、あながち暴言と切り捨てるのは明らかに行き過ぎであるように思えるが、ネット上に見られる高橋氏への批判コメントの多くが、一様に「これだけ人が死んでいるのに・・・」という枕詞を付けて述べられているので、科学を越えた単なる情念の差異に起因する攻撃であるように思える。閑話休題。
竹中平蔵氏がテレビ番組で「(世論の6・7割が五輪中止としているが)世論は間違ってますよ。世論はしょっちゅう間違いますから」と述べてこれまた批判されているが、熱情に浮かれた世論が国を誤らせた例は数多いと考える。古くは衆愚政治と揶揄される直接民主制で国を失った古代ギリシャ、近世には、世界に冠たるドイツを標榜するヒットラーに政権を託したドイツ、米英討つべしという世情が大東亜戦争を決意させた日本という好例が有り、EU離脱を国民投票という世論で選択したイギリスの正否は現在進行形で示されるであろう。
これらのことは、熱情下・危機下における世論や多数決が極めて危険であることを教えており、それを防ぐために多くの国は憲法に緊急条項を設けて国の存亡が問われる場合には憲法の一部を停止・凍結して、時の指導者に大きな権限を付与する仕組みを準備していると思っている。これらのことを踏まえて竹中平蔵氏は「世論はしょっちゅう間違える」と表現したものと思っており、堀江貴文氏が「まァそうだわな」と賛意を寄せたのも肯けるものである。
高橋氏や竹中氏は統計や歴史を基に持論を述べているもので、コロナ全集中のあまりにヒステリックに即応するのではなく、一呼吸おいて冷静に吟味・対処する必要があるように思える。
反対意見を瞬殺する愚は、日本統治の功罪を学門的に解明しようとする動きすら「親日」と一蹴する隣国が反面教師となって我々に教えてくれているではないだろうか。