中国公安が設置した「海外派出所(海外110番)」が、物議をかもしている。
中国は、30か国に「海外派出所(海外110番)」を開設したと公表しているが人権団体等は50か国にも及ぶとしており、日本でも東京都千代田区神田和泉町にある十邑会館が本部とされている。
設置の目的と活動について中国は、「在外中国人を扶けるサービスセンター」としているが、9月にスペインの人権団体が「亡命中国人の監視・脅迫」を行っていると告発したことを受けて疑惑が集中している。
本来、海外にある国民を扶助するのは現地に置かれた公館の任務であると思うが、「海外派出所(海外110番)」は中国公館とは指揮関係を持たないものの様で、その名前が暗示するように国際法では認められない中国司法権の執行すら企図しているのではと疑えるように思える。さらなる杞憂は、中国との関係が最悪の状態になった場合には、派出所が国内騒擾の起点となるかもしれない。
派出所が開設された国の反応は、閉鎖を要請した国、懸念を伝えた国と多様で日本は後者と報じられているが、各国の反応が要請や懸念の伝達に留まっていることを見れば、国際法では強制的に派出所を閉鎖することはできないようで、孔子学院と同様に何とももどかしく感じられる。
暴論でるが、派出所の暴走を予防するためには「テロ等準備罪に基づいて電話傍受を行う」と明らかにすることが有効ではないだろうか。
おりしも中国で発生した「ゼロコロナ反対デモ」は世界各国に飛び火するとともに、反独裁・反習近平の色合いを濃くしている。共産党と解放軍さえ掌握していれば民意など無視できる巨象であっても蟻の動きは気になるらしく国内デモの鎮圧に強硬な姿勢を見せているが、国外のデモに対しては習主席の鉄槌も半減してしまう。この事態に派出所は絶大な効果を発揮するだろうし、習指導部にあっては以前からこの事態を予測して備えていたのかもしれない。
最後に、中国における「反ゼロコロナ・デモ」から習政権の外交・中華・人権政策の軟化や、極端には習主席の交代まで期待する意見もあるが、党と軍に支えられた大躍進や文化大革命が2千万人以上とされる犠牲者を出しながらも政体に僅かの変化しかもたらさなかった過去・歴史を見れば、習政権の強権体制は維持されると観るべきと思う。
また、デモによる求心力の低下をそらすために外征(台湾・尖閣)の時期が早まったとするのも、杞憂に過ぎないと思う。