昨日(1月28日)に日米首脳が電話会談したことが報じられた。
アメリカ大統領は、最初に隣国のカナダ、メキシコ首脳と会談、次いで欧州(英独仏)首脳と会談することを慣例としており、その後に順次列国首脳と会談する。
今回の会談で菅総理は隣国・欧州に次いで会談を果たしているために、日米同盟の重要性がトランプ政権と同等に評価されていることの表れかと安堵している。特に、トランプ政権に引き続き尖閣水域が日米安保の対象であることを確認できた意義は大きいと考える。
しかしながらバイデン政権の顔ぶれを見る限りでは、オバマ政権(バイデン副大統領)の継承であるために中国政策が先祖返りする可能性・危険性を棄て切れないようにも思える。前政権時に関係国が共有していた「自由で開かれたインド・太平洋戦略」は両地域に於いては強権と犠牲を以てしても中国の覇権を阻止するという強い意志であったが、バイデン氏は「自由で開かれたインド・太平洋における平和と繁栄」と言い換えて、平和と繁栄の前には中国と妥協する可能性に含みを持たせてしまった。さらに報道官が対中姿勢の理念について、既にクリントン政権以降で失敗が明らかとなった「戦略的忍耐」を復活させていることも気懸りである。
バイデン政権が重視している地球温暖化対策、コロナ対策、オバマケアに代表される貧富格差是正は、中國との協調なしには推進し得ないことから、なし崩し的に対中軟化するであろうことは日本としても覚悟する必要があるように思える。
トランプ氏がパリ協定の枠組みやWHO等の国際機関から相次いで脱退したのは単に「アメリカファースト」ということではなく、アメリカが1票の発言権しか行使し得ないために独自の行動が縛られる枠組みに留まるよりも、常任理事国としての拒否権さえ維持すれば枝葉の諸問題は関係する2国間合意によってアメリカが独自に力を発揮できると判断した結果ではないだろうか。
かって自分も、アメリカが西側各国に要求した米軍駐留経費の増額要求について「負担額に応じて防衛力を提供するのは、アメリカ軍を傭兵部隊化するビジネス感覚」と書いたことがあるが、バイデン大統領の外交政策と対比すれば浅はかな考えであったと反省している。
バイデン政権の内政重視・弱腰外交を見据えてか、中国は軍用機の台湾領空侵犯を常態化し、イランはウラン濃縮度を20%まで高めて核兵器製造まで3~4か月と期間を短縮させ、北朝鮮は対話再開のシグナルを送る等の事象が報じられている。韓国ですらアメリカが日韓関係の調停に意欲を示さないとの観測からであろうか、日本の海洋調査に難癖をつけ始めている。
バイデン氏の健康状態によっては「より左傾した」カマラ・ハリス副大統領の昇格も考えられるバイデン政権。既に米国の一部の識者やシンクタンクからは「バイデン時代は空白の4年間」になる危険性も予言されていることを思えば、米中関係改善に伴う世界情勢の変化は、トランプ政権とは比べ物にならない規模になるかも知れない。