もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

医療態勢逼迫に思う

2021年01月10日 | コロナ

 大阪府等の3府県知事が、緊急事態宣言範囲に加えることを要請する意向が報じられた。

 コロナ禍の第3波拡大を招いた要因は多いと思うが、「医療態勢の逼迫」という表現も要因の一つであるように思っている。
 医療態勢逼迫という表現は、コロナ患者治療のための医療設備や医師・看護師・保健所の能力が限界に近付きつつある現状を伝えるためには正確な「お役所言葉」であるのかも知れないが、我々のような一般大衆に対しては、「なるほどお医者さんは大変だが、それを正すのはお役所の仕事、お役所頑張れ」という感想にしか結びつかないもので、政府や医師会が望むような「国民の外出・行動の自粛」にまで発展することは無いように思っていた。もっと直截的に「これからコロナに感染しても入院はおろか治療もできない状態」と表現・広報すべきで、そうすれば国民は医療態勢の逼迫を自分の行動自粛と結び付けて考えることができたのではないだろうか。
 漸くここ数日、病床の空き数を公表するとともにトリアージ到来の現実感を加味して危機を訴えるという表現も目にするようになったが、主用されるのは相も変らぬ「医療態勢の逼迫」であり、このことは日本各界の指導的立場に立つ人々が修辞による効果を軽視している好例であるように思う。
 これまで修辞の綾で民意を掴んだり納得させた例は数多い。松岡洋右外相は国際連盟脱退演説を「名誉ある孤立」と結んで民意を纏め、橋本龍太郎自民党幹事長は「チクショー」の一言で宰相への階段の足がかりを掴み、土井たか子社会党委員長は「ダメなものはダメ」でマドンナ(一時的ではあったが)となった。
 今、安全保障関連法を「戦争法」と、改正組織犯罪処罰法を「共謀罪法」と読み替えることで世論の誘導を図った修辞の達人集団である野党からも「医療態勢の逼迫」に替わる言葉が聞こえてこないのは、政府攻撃以外には関心が無い、それ以上に政府の施策に協力することを拒否するのが使命とする人々であれば仕方のないところであろうか。

 現在、政府の定例会見は議員・大臣である官房長官が行っているが、日本以外の多くの国では、行政府に属する専門のプロ広報官・報道官が行っている。彼等は「どうすれば国民が納得するか。どの言葉が世界に効果的か」を知っているので、彼等に官房長官と同じ内容を発表させたとすれば、語句・抑揚を変えることで遥かに効果的に伝えることができるように思える。
 あの憎たらしいまでに”自信に満ちて””豊富な語彙で他国を切る”中国外務省の報道官が好個の例であるように思う。
 聞くところよると多くの謝罪会見にはプロの指導官による事前訓練がなされているとされるので、広報のプロは日本にもいると思われる。「餅は餅屋」。日本も「永田町・霞ケ関言葉」ではなく、より的確で、より現実的で、より説得力を持った修辞・話法を心得ている人を報道官として活用する方策を講じるべきではないだろうか。