もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

秋田豪雪に思う

2021年01月07日 | 自衛隊

 秋田県知事(横手市長)の要請で、自衛隊が除雪のために災害派遣出動した。

 秋田県の降雪・積雪は記録的な規模とされ、除雪のための自衛隊出動は15年ぶりと報じられている。雪に慣れた地域とは言え過疎地域や高齢者住宅の難儀は、想像を超えるものであろうし、現に屋根からの落屑や雪下ろし作業時の滑落による犠牲も報じられているので、自衛隊への派遣要請も当然とすべきであろう。
 しかしながら、本日は、出動した隊員からも反感を持たれるかも知れないが、自衛隊(自衛力)の存在に対する一般認識への繰り言である。
 秋田県と云えば、防衛庁の不手際はあったにせよ本土防衛の切り札的なイージスアショアの新屋演習場(秋田市)配備に対して、県知事・自治体首長を始めとして官民を挙げて反対・反発したことが記憶に新しい。下世話に言えば今回の災害派遣要請は、こちらの要求には頑として応じない隣人が、急場しのぎに虫のいい頼みごとをしてくることに似ているように感じられる。隣人の思惑は、与しやすい・使い勝手のいい隣人なので日頃の不義理は見逃すだろうという浅はかさであるに違いない。
 昨今の災害派遣実績でも、本来自治体が行うべき瓦礫処理等の復旧作業すら要求されるケースも散見され、派遣要請した首長は自衛隊を無料の労働力と考えているかの報道もある。自衛隊の任務は、外部からの武力侵攻や国内騒擾を企図する武装集団に備えることで、災害派遣・民生協力は片手間の任務であり、自衛隊を無料の労働力と考えることは、本業は否定して使い勝手のいい片手間任務のみ期待するもので、かっての社会党が提唱した自衛隊を武装解除のうえ国土建設隊として創設するという荒唐無稽な主張の現代版と呼べるものに等しいように思える。自衛隊が本来の任務に邁進するために国民は相応の負担が求められるのは当然であり、負担を拒否して恩恵にのみ預かろうとすることはあってはならないように思う。

 イージスアショア配備反対を主導したのは、日本共産党傘下と云っても過言ではない日本(秋田市)平和委員会であるが、その主張の多くは科学・軍事的な裏付けに欠けるものであるが、住民の不安を掻き立てるに十分な表現となっている。1980年代に起きた佐世保エンタープライズ寄港阻止闘争(エンプラ騒動)や横須賀原潜寄港阻止闘争で声高に叫ばれたのは、「アメリカの戦争に巻き込まれる」や「放射能汚染」であったが、半世紀過ぎた今も起こらず、そんな騒動があったことすら忘れ去られている。「オスプレイは危険」という主張も、オスプレイと他のヘリコプタの事故率に大差ないことが明らかになっても未だに根強く尾を曳いて、佐賀空港への配備が頓挫している。秋田市平和委員会もイージスアショアの電磁波による健康被害を反対理由の目玉の一つに挙げているが、アメリカが原子力空母・潜水艦・オスプレにアメリカ人を載せ、イージスアショアを米国人が運用していることを考えれば根も葉もないことが想像できると思うが、印象操作に曇った耳目には違って聞こえ・見えるのだろうか。とすれば「陸蒸気(汽車)で鶏が卵を産まなくなる」「写真を撮られたら魂が抜かれる」とした明治から一向に進歩していないようにも思える。