ピピのシネマな日々:吟遊旅人のつれづれ

歌って踊れる図書館司書の映画三昧の日々を綴ります。たまに読書日記も。2007年3月以前の映画日記はHPに掲載。

アヒルと鴨のコインロッカー

2007年12月23日 | 映画レビュー
 これはまあ、面白いといえばいいのか面白くないといえばいいのかよくわからない映画だ。なんだか妙な映画で、コメディだと思って見に行ったら意外にもハードボイルドだったり、けっこう切なかったり。途中であっと驚く仕掛けがあるのだけれど、実はわたしは「あっ」と驚かなかった。だからといって結末が予測できたとかそういうのではなく、要するに「いったいこれは何を言いたい映画なの?」という不思議な気分がつきまとっていたから、何が起こっても「へぇ、そうなんだ」と受け流してしまう。およそありえそうにもない設定を強引に押し通していくから、リアリズムから程遠く、ゆえに、あっと驚かなければならない仕掛けにもさほどの驚きがない。ただし、おそらく原作の構成はとても巧みなんだろうと思わせる面白さはある。途中の「仕掛け」は小説で読むほうが衝撃が強いのではなかろうか。

 舞台は仙台。ああ、行ってみたい仙台。仙台といえば牛タン。誰もが言う、「仙台といえば牛タン」。牛タンが重要な伏線かと思ったけれど、これは単なる小ネタだったみたい。主人公は東京から仙台の大学へ入学してきたばかりの可愛らしい男の子、椎名。アパートの隣人で大学生の河崎の部屋に引越しの挨拶に行ったところ、いきなり「本屋を襲うんだ、一緒にやろう」と明るく誘われてしまう。椎名の隣室のブータン人留学生に『広辞苑』をプレゼントするというのがその動機だ。

 いきなりこういう素っ頓狂なトーンで始まるこの映画、全編に流れる「神様=ボブ・ディラン」の歌「風に吹かれて」が重要なモチーフとなる。

 この映画はいったい何がいいたかったのだろうか? 外国人差別はいけませんとかそういう教訓めいたことなのだろうか?

 とてもそんな風には思えないのだが、かといって疾走する青春の爽やかさと切なさを描こうとしただけにしては話がややこしすぎるしね…。役者たちの演技も自然らしさがなくてみんなどこかぎこちない。そんな中で主人公椎名役の濱田岳がとても愛らしくてよかった。大人になりきれない少年の面影を残す童顔の濱田岳が頼りない椎名役にぴったり。

 河崎とブータン人との友情が摩訶不思議で、どうしてブータン人が河崎にそれほど惹かれたのかがよくわからない。しかし、ブータン人というのはとかくそのように理解しがたいものだと思ってしまえば問題はないのだが…。そういう解釈でいいのかぁ?

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日本、2006年、上映時間 110分
監督・脚本: 中村義洋、プロデューサー: 宇田川寧、原作: 伊坂幸太郎、音楽: 菊池幸夫
出演: 濱田岳、瑛太、関めぐみ、田村圭生、なぎら健壱、松田龍平、大塚寧々

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4 コメント

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 (しまりす)
2008-04-08 23:36:42
はじめまして
伊坂幸太郎ファンとして言わせて貰えばこれは本を読んだほうがいいです
視覚によらず空想の中ですっかり作者にだまされることの面白さに何度も読み返してしまった
映画はわかりにくいけどドルジの孤独感がよく出ていて切ない映画でした
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原作 (ピピ)
2008-04-10 00:26:08
 しまりすさん、初めまして。
 
 そういえば、「しまりすくん」って、アニメの登場人物(動物)でいましたが、あれはなんというタイトルのアニメだったかしら、うちの子ども達が小さいときにいつも見ていたのです。哲学的なアニメでした。

 いきなり話がそれてすみません。確かにこの映画は原作のほうが面白いんだろうと思いました。
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ぼのぼの (しまりす)
2008-04-10 18:43:12
それは「ぼのぼの」ですよ
うちの子供たちも私も大好きで「しまりす」もそこから貰いました
伊坂さんが「本屋大賞」を受賞されてとってもうれしいです
受賞作「ゴールデンスランバー」もぜひ映像化して欲しい
主演はV6岡田君で・・・
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ぼのぼの! (ピピ)
2008-04-11 00:01:33
 そうそう、「ぼのぼの」です。このアニメのことは鶴見俊輔さんが絶賛していました。
 井坂本はけっこう映画化されているみたいですね。
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