ピピのシネマな日々:吟遊旅人のつれづれ

歌って踊れる図書館司書の映画三昧の日々を綴ります。たまに読書日記も。2007年3月以前の映画日記はHPに掲載。

パプリカ

2007年11月18日 | 映画レビュー
 夢が現実を浸食し、夢と現実は融合して一つになる。アニメならではのイメージの炸裂に酩酊する作品。

 この作品のストーリーは、財団法人精神医療研究所の天才技術者が生み出した、他人の夢に入り込める機械「DCミニ」が何者かに盗まれて悪用される、その事件を解く夢探偵「パプリカ」の活躍を描くというもの。ものすごく既視感の強い作品で、まるで「アニマトリックス」か「マトリックス」、「イノセンス」か大友克洋か、と思ったが、「千年女優」の今敏監督作品だった。

 美しきセラピスト千葉敦子が夢前案内人「パプリカ」という少女に変身して他人の夢の中に入っていく。今やフロイト流の夢分析をするような精神治療は時代遅れらしいけど、この物語ではその治療法が最新のコンピュータシステムによって開発されていることになっている。夢と現実を縦横に行き来する映像は実写では表現不可能だろう。いかにCGを使っても嘘くささが丸出しになって笑ってしまうかもしれない。アニメだからこそ表現可能になったと思われる。ストーリー的には目新しさが感じられないけれど、映像が美しく自由自在なので楽しめる。

 わたしは長い間、夢に苦しめられてきた経験があるだけに、「夢と現実の区別がつかない」という感覚はとてもよくわかる。夢に支配されるという恐怖は案外誰にでもある潜在的なものかもしれない。自分だけが変なのかと思っていたがそうでもないことがわかってほっとした。と同時に、この作品では、夢への恐怖だけではなく、夢への逃避という願望も描かれている。げに、たかが「夢」、されど「夢」である。

 夢といえば、つい先日、タイ・シージェの小説『フロイトの弟子と旅する長椅子』を読み終えたばかりでこのアニメとの不思議な繋がりを感じる。小説『フロイトの…』は、フロイトの弟子を自任する主人公が夢判断屋を開業しながら処女を捜す旅に出るという波瀾万丈奇想天外なコメディ。

 ま、それはともかく、ぜひ大画面で楽しみたいアニメです。(レンタルDVD)


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日本、2006年、上映時間 90分
監督: 今敏、アニメーション制作: マッドハウス、原作: 筒井康隆、脚本: 水上清資、今敏、音楽: 平沢進
声の出演: 林原めぐみ、古谷徹、江守徹、堀勝之祐、大塚明夫、山寺宏一、田中秀幸

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