ピピのシネマな日々:吟遊旅人のつれづれ

歌って踊れる図書館司書の映画三昧の日々を綴ります。たまに読書日記も。2007年3月以前の映画日記はHPに掲載。

Mr.ビーン/カンヌで大迷惑?!

2008年10月03日 | 映画レビュー
 カンヌ国際映画祭をこきおろす作品? それとも、カンヌの観光プロモーション映画?

 映画版よりはテレビ版のほうがよほど面白い「ミスター・ビーン」シリーズ。相変わらずこの人は身体が柔らかくてそこが売りなんだけれど、今回は特別にブラックな笑いが満載というわけではなかった。物語の非日常性が二次関数的に増大していく面白さにもいまいち欠けたし。

 たまたま籤でカンヌの高級ホテル行きのチケットを手に入れたミスター・ビーンが、単身イギリスからフランスはカンヌへと向かうが、途中で親とはぐれた(はぐれた責任はビーンにあるんだけど)少年を拾って二人で珍道中。さらにカンヌ映画祭に向かう若い女優に拾われて…というお話。面白いのは、グルメの国フランスの手長エビとか生牡蠣といった料理を食べられない悲しいイギリス人ビーンの姿。なんでドーバー海峡を隔てただけでこんなに食生活が違うのかねぇ。

 フランス語のできないミスター・ビーンがあれこれとパントマイムでどうにかごまかし、しかし、途中で財布もパスポートもなくして往生しつつ、なぜかちゃんとカンヌまで到着してしまうところが可笑しい。自力自闘で大道芸人を演じてしまうミスター・ビーンのアリア「私のお父さん」が見物です(笑)。

 途中で一緒になった愛らしい女優がどこかで見たことあると思ったら、「潜水服と蝶」や「恋愛睡眠のすすめ」に出演していたエマ・ドゥ・コーヌであったとは。それにしてもこの映画、ちょい役のゲスト出演者が豪華です。

 カンヌ映画祭でオープニング上映されたりパルムドールを獲る作品は芸術性が高く難解なものが多くて(近年必ずしもそうとは言えなくなっている)一般受けしにくいが、そのことを皮肉ったのが最後の映画上映シーン。まあ、こういう笑いは正直言うとあまり好きではない。芸術的な高さをあざ笑うというのはいかにも大衆受けを狙った下品な戦略のように思えてわたしは好まない。やたら高尚な内容の作品というのは確かに自己満足的に充足しているものが多くて批判すべき点はあると思うが、それだけでおちょくられるというのはいかがなものか。とはいえ、このシーンが確かに一番面白かったことは認めよう(^_^;)。

 総じて、ブラックな笑いのレベルが低く、中途半端に観光映画にしてしまったところもいただけない。映画版になると予算が増えてロケもふんだんに取り入れられるし、奥行きやスケールのある画面を作れるから監督には嬉しいだろうと思うのに、やってるネタがどうしてもテレビのままだからこういう中途半端な作品になります。(レンタルDVD)

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Mr.ビーン カンヌで大迷惑?!
MR. BEAN'S HOLIDAY
イギリス、2007年、上映時間 89分
監督: スティーヴ・ベンデラック、製作: ピーター・ベネット=ジョーンズほか、脚本: ロビン・ドリスコル、ハーミッシュ・マッコール、音楽: ハワード・グッドール
出演: ローワン・アトキンソン、エマ・ドゥ・コーヌ、ウィレム・デフォー、カレル・ローデン

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