ピピのシネマな日々:吟遊旅人のつれづれ

歌って踊れる図書館司書の映画三昧の日々を綴ります。たまに読書日記も。2007年3月以前の映画日記はHPに掲載。

ウェイトレス/おいしい人生のつくりかた

2007年11月30日 | 映画レビュー
 ダメ亭主のダメぶりが身につまされる。愛と束縛をはき違える勘違い男にはうんざりするけれど、こういう男はいくらでもいるのだ。コメディだけれど、いろいろと考えさせられる映画。

 本作は、妊娠検査薬を睨みながらがっくりするウェイトレスの制服姿のジェンナ(ケリー・ラッセル、なかなかキュート)の表情から始まる。側にはウェイストレス仲間の二人が心配そうに腰かけている。そこは彼女達の職場であるパイとコーヒーの店のトイレ(休憩室)なのだ。この映画は、パイ作りの名人ジェイナが妊娠を知ってから、望まないままに出産するまでを描く。その間に彼女にはどんな変化が現れるだろう? 大嫌いな夫の子どもをうっかり身ごもってしまったジェンナが、どうやっていやな亭主と別れるのだろう。

 このいやな亭主を演じたジェレミー・シストがほんとにいやな男に見えるから、気の毒なぐらいだ。妻を徹底的に束縛する男。経済的にも精神的にも束縛し、子どもができたとわかると「赤ん坊よりもオレを愛せよ」とネチネチ言い寄ってくる。あ~、気持ち悪い。ジェンナは金を全部夫アールに握られているから、家出もできないのだ。頑張ってこっそりへそくりを貯めているけど、なかなか自立資金にまでは至らない。

 して、妊娠したジェイナ、産婦人科医にかかるのだが、この医者がちょっと優しそうな男。この二人のやりとりが面白くて、いったいどうなるんだろうと思っていたら、いきなり不倫です。この映画の可笑しさは、この「いきなり」というところにある。あまり書くとネタバレで面白くないので、あとは見てのお楽しみ。

 映画の中ではいろんな問題が「いきなり」解決されてしまうのだが、そこに至るまでのジェンナや他の登場人物の心理描写がよくできているので、「いきなり」が納得できてしまう。ラストのジェンナの爽快な解決には感心した。

 ところで、肝心のパイのほうなのだが、あまりおいしそうに思えなかった。いろんな材料をふんだんに使いすぎてどっちかというと面妖なパイになっているのだ。甘ったるそうだったり、クリームがてんこ盛りで胃にもたれそうだったり。わたしはあっさりとかぼちゃのパイとかアップルパイが好きだな。

 
 監督でかつ出演者でもあるエイドリアン・シェリーは、本作を撮り終わった後、40歳の若さで亡くなった。幼い娘も一緒に出演しているのだが、これが遺作となってしまった。お気の毒です。

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WAITRESS
アメリカ、2006年、上映時間 108分
監督・脚本: エイドリアン・シェリー、製作総指揮: トッド・キングほか、音楽: アンドリュー・ホランダー
出演: ケリー・ラッセル、ネイサン・フィリオン、シェリル・ハインズ、エイドリアン・シェリー、ジェレミー・シスト、アンディ・グリフィス

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2 コメント

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そうなんです!! (パープルローズ)
2007-11-30 22:28:02
私もあのパイはおいしそうだとは思えませんでした。思いついたものをなんでもほおりこんでるだけで、私にも作れそう。
有名な俳優さんもでてないし、アメリカでヒットしたという感じでもないので、何で日本で公開されたのかちょっと不思議な気がしましたが、私は楽しく見ました。
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パイ料理 (ピピ)
2007-12-01 21:55:26
もともとパイ料理はあんまり馴染みがないものですが、お菓子といえどもどぎつい色のクリームが乗っていたりするとげんなりしますよね。アメリカ人とは感覚が違うのかしら。

 この映画はインデペンデントものとしてはアメリカで破格にヒットしたらしいですよ。
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