ピピのシネマな日々:吟遊旅人のつれづれ

歌って踊れる図書館司書の映画三昧の日々を綴ります。たまに読書日記も。2007年3月以前の映画日記はHPに掲載。

ラブソングができるまで

2007年05月13日 | 映画レビュー
 80年代がこれほど笑えるものだとは思わなかった。MTVそっくりな巻頭の歌と踊りのシーンといい、ヒュー・グラントの若作りの髪型も大笑い。80年代の人気ポップグループのボーカル、今はすっかり落ち目の「あの人は今」という元スターという役がぴったりなのがこの人、ヒュー・グラント。いいねぇ、こういう役がよく似合っててしょぼくれた感じが自然に醸し出されている。

 落ち目歌手兼作曲家のアレックスが、自分の落ちた姿をちっとも卑下してなくて、むしろシニカルに嗤っているところが面白い。全然深刻になったり悩んだりしているふうがなくて、とにかく仕事があれば遊園地でかつてのギャルいまは中年のおばさん相手のしょぼいショーでもなんでもやってしまうという軽いノリのアレックスがポストモダンふうといえば言えるのか。

 ソフィーは作家との恋に傷つき、ましてや元カレが自分をモデルに小説を発表したもんだからいよいよどん底に傷ついている。そんな彼女だけれど、何気なく口にした歌詞がすっかりアレックスのお気に入りになり、二人で人気歌手コーラの新曲を作ることになるが…

 このコーラを演じた若い子は本物のアイドル歌手なのかと思ったらなんと本作が映画デビューの新人だそうで、日本人にも受けそうな愛らしい顔やスレンダーな身体はこれからブレイクしそうな雰囲気。そしてコーラが仏教オタクなのか、やたらインド音楽に身を捩って踊る姿が面白可笑しい。本人が真剣なのがなお可笑しい。

 二人して歌を作っていく場面は微笑ましくスリリングでとてもいいテンポだ。セリフもしゃれている。ただ、あまりにストレートな展開なので先が完璧に読めてしまって面白みに欠けたかも。

 いい映画にはキラリと光る脇役の存在がある。この映画ではアレックスのマネージャーがそう。よくぞ落ちぶれたスターをずっと支えているものだと感心するのだが、この人もやっぱりシニカルでよかった。ただ、「ノッティングヒルの恋人」みたいに変わった友人達が異彩を放つというほどには抜けてなかった。お話全体としてはやはり「ノッティングヒルの恋人」のほうが面白いけど、本作もなかなかいいです。

 挿入されている歌の数々は覚えやすいメローな旋律がいい感じ。サントラ欲しくなった。

 それにしても80年代がナツメロ時代になるとは、わたしも歳を食ったもんだわ。

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MUSIC AND LYRICS 上映時間104分(アメリカ、2007年)
監督・脚本:マーク・ローレンス、音楽:アダム・シュレシンジャー
出演:ヒュー・グラント、ドリュー・バリモア、ブラッド・ギャレット、クリステン・ジョンストン



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