ラブコメとしては元ネタの「マーサの幸せレシピ」よりよくできています。さすがにハリウッド映画はこの手のものはうまい。
実を言うと、わたしは料理映画が大好き。料理がおいしそうな映画には点が甘い。で、もちろんこの作品でも高級フランス料理がおいしそうだったのは言うまでもないのだけれど、それよりもイタリアンの副シェフ・ニックがプライベートに創ったピザがおいしそうでたまらんかったわ。
オリジナル作品「マーサの幸せレシピ」との比較をしながら見ようかと思ったのだけれど、オリジナルの細部は全然覚えていなかった。おぼろげな記憶をたどると、オリジナル作品では主人公のシェフ、マーサが他者に心を開かない意固地な女性として描かれていて、その点がかなり強調されていたと思う。つまりはテーマは恋愛と同時に他者とのふれあいという、より普遍的なものなのだ。その点、今回のリメイクではシェフのケイトがかなり自己主張の激しいよくしゃべる女になっている。この辺がドイツとアメリカの文化の違いか。精神科医とのやりとりも面白く、セラピーの途中で医者に新作料理を食べさせるなんていう話は笑えていい。この笑えるエピソードはオリジナルにもあったもので、この映画の笑わせどころやよくできている部分はほとんどオリジナルのアイデアだ。元ネタがよくできているのだね。
ストーリーは恋愛映画の常套を踏んで、彼と彼女を最初は反目させながらいつの間にか恋人にさせて、かと思うとまたまたいがみ合わせて観客をやきもきさせる、という定石どおりの展開。もちろん最後はハッピーエンドだから安心して見ましょう。
この映画が新しい時代の流れを的確につかんでいると思えるところは、ケイトが血のつながりのない「家族」を築き上げていくという点だ。亡姉の一人娘、8歳のゾーイを引き取って育てることになった独身女のケイトが四苦八苦するところは、子どもを持ったことのないキャリア女性がいきなり子育てすることになる苦労をたくみに描いている。血の繋がりがないと書いたけれど、ゾーイはケイトの姪だから、もちろん血の繋がりはある。問題はケイトの「パパ」になる人物だ。これがケイトのシェフとしての立場を危うくするかもしれない、新入りの副シェフ・ニックというところがミソね。ニックはケイトを尊敬していて、あくまで彼女の後ろに控えていようとする。この映画では上昇志向に煽られて肩肘張って生きているのは女のほうで、男はのびのびと脱力して心優しく生きているのだ。しかも、最後にはケイト、ニック、ゾーイという三人の関係が対等になる。これがとても微笑ましくいい感じ。
アビゲイルちゃんは「リトル・ミス・サンシャイン」でも達者な芸を見せてくれたけど、今度もすごくうまい。いい感じです。アーロン・エッカートはシェフには見えなかったけどなぁ~。
美味しい水牛モッツアァレラ・チーズとバジルのピザをつまみにワインが飲みたくなりました。
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NO RESERVATIONS
アメリカ、2007年、上映時間 104分
監督: スコット・ヒックス、製作: ケリー・ヘイセン、セルヒオ・アゲーロ、製作総指揮: スーザン・カートソニス、脚本: キャロル・フックス、音楽: フィリップ・グラス
出演: キャサリン・ゼタ=ジョーンズ、アーロン・エッカート、アビゲイル・ブレスリン、パトリシア・クラークソン、ボブ・バラバン
実を言うと、わたしは料理映画が大好き。料理がおいしそうな映画には点が甘い。で、もちろんこの作品でも高級フランス料理がおいしそうだったのは言うまでもないのだけれど、それよりもイタリアンの副シェフ・ニックがプライベートに創ったピザがおいしそうでたまらんかったわ。
オリジナル作品「マーサの幸せレシピ」との比較をしながら見ようかと思ったのだけれど、オリジナルの細部は全然覚えていなかった。おぼろげな記憶をたどると、オリジナル作品では主人公のシェフ、マーサが他者に心を開かない意固地な女性として描かれていて、その点がかなり強調されていたと思う。つまりはテーマは恋愛と同時に他者とのふれあいという、より普遍的なものなのだ。その点、今回のリメイクではシェフのケイトがかなり自己主張の激しいよくしゃべる女になっている。この辺がドイツとアメリカの文化の違いか。精神科医とのやりとりも面白く、セラピーの途中で医者に新作料理を食べさせるなんていう話は笑えていい。この笑えるエピソードはオリジナルにもあったもので、この映画の笑わせどころやよくできている部分はほとんどオリジナルのアイデアだ。元ネタがよくできているのだね。
ストーリーは恋愛映画の常套を踏んで、彼と彼女を最初は反目させながらいつの間にか恋人にさせて、かと思うとまたまたいがみ合わせて観客をやきもきさせる、という定石どおりの展開。もちろん最後はハッピーエンドだから安心して見ましょう。
この映画が新しい時代の流れを的確につかんでいると思えるところは、ケイトが血のつながりのない「家族」を築き上げていくという点だ。亡姉の一人娘、8歳のゾーイを引き取って育てることになった独身女のケイトが四苦八苦するところは、子どもを持ったことのないキャリア女性がいきなり子育てすることになる苦労をたくみに描いている。血の繋がりがないと書いたけれど、ゾーイはケイトの姪だから、もちろん血の繋がりはある。問題はケイトの「パパ」になる人物だ。これがケイトのシェフとしての立場を危うくするかもしれない、新入りの副シェフ・ニックというところがミソね。ニックはケイトを尊敬していて、あくまで彼女の後ろに控えていようとする。この映画では上昇志向に煽られて肩肘張って生きているのは女のほうで、男はのびのびと脱力して心優しく生きているのだ。しかも、最後にはケイト、ニック、ゾーイという三人の関係が対等になる。これがとても微笑ましくいい感じ。
アビゲイルちゃんは「リトル・ミス・サンシャイン」でも達者な芸を見せてくれたけど、今度もすごくうまい。いい感じです。アーロン・エッカートはシェフには見えなかったけどなぁ~。
美味しい水牛モッツアァレラ・チーズとバジルのピザをつまみにワインが飲みたくなりました。
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NO RESERVATIONS
アメリカ、2007年、上映時間 104分
監督: スコット・ヒックス、製作: ケリー・ヘイセン、セルヒオ・アゲーロ、製作総指揮: スーザン・カートソニス、脚本: キャロル・フックス、音楽: フィリップ・グラス
出演: キャサリン・ゼタ=ジョーンズ、アーロン・エッカート、アビゲイル・ブレスリン、パトリシア・クラークソン、ボブ・バラバン