ピピのシネマな日々:吟遊旅人のつれづれ

歌って踊れる図書館司書の映画三昧の日々を綴ります。たまに読書日記も。2007年3月以前の映画日記はHPに掲載。

アイ ウォント ユー(I Want You あなたが欲しい)

2007年10月28日 | 映画レビュー
 ”9 Songs”でウィンターボトム監督のエロぶりにぶっとんだけど、この映画を見て確信した。この人、すけべです。

 この映画はわたしの期待したものとちょっと違った。最初のうちこそ、ウィンターボトム色が出ていて枯れたようなざらついたような渋い色の景色が広がっていたのだけれど、だんだん暗い場面ばかりになってくると、ストーリーもひたすら暗さを増していき、後味の悪さが広がっていった。

 かつての殺人事件の真相が明らかになっていく過程は決してサスペンスの様相を呈していない。それよりも、母の自殺によって口がきけなくなった少年の孤独の描き方が秀逸だ。口のきけない彼は自分の耳にするものを録音するのだ。「耳にする」というよりは<盗聴>なのだが、彼が耳をそばだてたその内容は姉の情事であったり憧れの女性デート場面であったり。その録音テープを使っていたずらをしてみたりするのが彼の小さな楽しみだ。

 殺伐とした波止場の風景や、姉と二人きり、世間から見放されたように暮らす少年のわびしい生活や、だだっ広い屋敷に一人暮らしのヒロインの孤独や、そういった点描はそれなりに表現力を感じさせるウィンターボトムなんだけれど、心に響いてくるものがない。それは、過去の殺人事件に至った過程がきちんと説明されていないのと、ヒロインの心理が観客の同情をそそるほどには描き切れていないからだろう。無意味に多いセックスシーンにも違和感がある。

 ウィンターボトム監督の作品ではやはりもう少し人の心の絆ややさしさについて描いたもののほうが好きだ。あるいは「CODE46」みたいに切ないのがいいね。(レンタルDVD)(R-15)


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I WANT YOU
I Want You あなたが欲しい(ビデオ)
イギリス、1998年、上映時間 87分
監督: マイケル・ウィンターボトム、製作: アンドリュー・イートン、脚本: エワン・マクナミー、音楽: エイドリアン・ジョンストン
出演: アレッサンドロ・ニヴォラ、レイチェル・ワイズ、ルカ・ペトルシック、ラビナ・ミテフスカ

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