ピピのシネマな日々:吟遊旅人のつれづれ

歌って踊れる図書館司書の映画三昧の日々を綴ります。たまに読書日記も。2007年3月以前の映画日記はHPに掲載。

チャンス!

2008年05月19日 | 映画レビュー
 黒人でかつ女性。およそアメリカ社会の最底辺の一角を占めるに十分な資質をもったローレルが金融市場で成功を収める痛快物語。

 ストーリーの構成はまったく定式どおり。大企業のやり手社員として活躍していたローレル(ウーピー・ゴールドバーグ)が、同僚男性社員にだまされ出し抜かれたことに怒って辞表をたたきつける。そして独立して自分で投資信託会社を設立したけれど、いっこうに客はつかず…という苦労の果てに成功する物語。めでたしめでたし。

 しかし、この物語の面白さは、女性経営者が信用されないと知ったローレルが、いもしないカリスマ社長をでっちあげたところ。架空の人物「カティ」が行うすべての取引が大成功し、顧客は儲けてローレルも大成功。しかし、彼女はすべての手柄を架空の白人男性「カティ」に持っていかれることの理不尽に耐えかねて…

 とにかくどたばたが楽しい。それと、ローレルの窮状を見かねてやってきた秘書のサリーの素晴らしさだ。アメリカ人は日本人のようにへりくだらないとはきいていたが、平気で自分のことを「優秀だから」と自慢して売り込むのには驚くと同時にすがすがしさを感じた。サリーを演じたダイアン・ウィーストのおばあちゃんぶりがほほえましく、この映画でもっとも美しい場面ではなかろうか。この映画に出演したときダイアン・ウィーストは48歳、今のわたしより若いのに、すっかりおばぁちゃん化しているのには驚きだ。しかも優秀な秘書であり、笑顔が最高に素晴らしい柔らかな女性であることがうれしい。

 笑って笑ってすっきりさわやか! 女性観客はみんな大喜び! ……というほど単純じゃないのよね。世界帝国アメリカの金融市場で勝ち組になることがそんなに素晴らしいことだろうか? こちらからあちらへと株を動かすだけで巨利を得るって、そんな仕事が倫理的に許されるのか? まあ、この辺の価値観がわたしとは相容れないのでその分減点。でも確かに元気にはなれます。落ち込んでいるときには楽しめる映画。(レンタルDVD)

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THE ASSOCIATE
アメリカ、1996年、上映時間 113分
監督: ドナルド・ペトリ、製作: フレデリック・ゴルチャンほか、脚本: ニック・ティール、音楽: クリストファー・ティン
出演: ウーピー・ゴールドバーグ、ダイアン・ウィースト、ティム・デイリー、
ベベ・ニューワース、レイニー・カザン