ピピのシネマな日々:吟遊旅人のつれづれ

歌って踊れる図書館司書の映画三昧の日々を綴ります。たまに読書日記も。2007年3月以前の映画日記はHPに掲載。

ウディ・アレンの 影と霧

2008年05月04日 | 映画レビュー
 ウディ・アレンはこの映画で何をしたかったのだろう? 巻頭のおどろおどろしさはいかにも吸血鬼が出てきそう。モノクロで恐ろしげな影を映したり、象徴的なカットを挿んで表現主義的な雰囲気を盛り上げてはいるが、やはりコメディなので、なんだかその怖さも中途半端。

 殺人事件の真相も謎のままで、その犯人を追う自警団というのも謎で、自警団の一味であるウディ・アレンが自分の役目もわからないまま犯人を追いかける羽目になり、でも結局彼がなにをすべきなのかいつまでも謎のまま。何もかもが謎のまま、本人が自覚もなく状況に放り込まれていくというのはまさにカフカ的不条理の世界。

 ウディ・アレンのおどおどした神経質な世界と、サーカスの芸人カップルの痴話喧嘩とが繋がっていくのだけれど、どうにもまとまりが悪い。モノクロ映像といい音楽といい、レトロな雰囲気を出してはいるけれど、雰囲気倒れ。ウディ・アレンらしさを求めるとスカされる。これだけ豪華なキャストを使っていったい何がしたかったのだろう? あ、みそくそに書いてしまったけれど、実は案外面白くて85分という短さもあって最後まですっと見てしまいました。売春宿の娼婦たちがジョディ・フォスターやキャシー・ベイツだもんね、うわ、すごいなとびっくりするだけでも見た値打ちはあるかも。(レンタルDVD)

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SHADOWS AND FOG
アメリカ、1992年、上映時間 85分
監督・脚本: ウディ・アレン、製作: ロバート・グリーンハット、撮影: カルロ・ディ・パルマ
出演: ウディ・アレン、ミア・ファロー、ジョン・マルコヴィッチ、マドンナ、ジョン・キューザック、ジョディ・フォスター、キャシー・ベイツ、リリー・トムリン