ピピのシネマな日々:吟遊旅人のつれづれ

歌って踊れる図書館司書の映画三昧の日々を綴ります。たまに読書日記も。2007年3月以前の映画日記はHPに掲載。

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2008年05月14日 | 映画レビュー
 自分の身に関係のあることがらだけに限られるけれど、2分先の未来が見えるという男クリス・ジョンソンの物語。彼はこの才能を活かして何か大もうけをするなどといったことはなく、ラスベガスの場末のクラブでしょぼいマジックショーを見せるだけの手品師にすぎない。カジノで賭はするけれど、決して目立つような大儲けはしないことを肝に銘じている。「特別な私」でありたいという近代人の肥大した自意識から対極にあるクリスは、しかしその才能をFBIに発見されてしまう。 

 この映画はいくらでもツッコミどころ満載のけったいなストーリーが無理矢理に展開していくのだが、そもそもからして、「2分先が見える」などというチャチな超能力しかない男をスカウトして「テロリストの手に渡った核兵器を取り戻す」などという大仰な任務に狩り出そうと発想するところが理解に苦しむ。その2分先の未来といっても、そのときどきの未来だから、いくらでも変更可能。ていうか、クリスは見えた未来に干渉するわけだから当然にも未来は変更されてしまっているのだ。では、いくらでも永久に変更され続けるのではないのか? つまりはいくら2分先が見えても意味ないやんか! このタイムパラドクスをどうしてくれる!? などと真面目にツッコミだしたらきりがないので止めておこう。


 2分先の未来が見えるという才能をナンパに使う最初の場面なんてほんと可笑しくって笑えます、これなかなか快調な滑り出し。ニコラス・ケイジの髪型が変、などとここでも文句をつけたいけれどこれまたぐっと抑えて、「運命の女」との運命の出会いを果たすクリスくんの奮闘に拍手。運命の恋人リズと出会い、彼女が先住民の居留地で子ども達に勉強を教えている場面が出てくるのだが、これがまったくなんの伏線にもなっていないのは不可解だ。まあとにかくリズの気持ちを捕まえたのはいいけれど、彼女はテロリストに誘拐されてしまう。2分先が見える技を最大限に生かしてクリスの闘いが始まった!

 冴えないマジシャン・クリスがどういうわけかFBIも真っ青のすごい戦士に早変わり! 最後は分身の術まで使いますから、ほとんど忍者の世界。面白ければなんでもいいという近年のハリウッド映画の王道を行きます。まあ、確かにけっこう面白かったから許す。

 この映画、なんといっても良いのはトーマス・クレッチマンです。わたし好みの俳優が悪役で出ているなぁ~と思ってデジャヴに襲われていたのだが、やっぱり、彼は「戦場のピアニスト」のドイツ将校を演じた彼だったのだ。素敵だわぁ。

 で、ラストでまたしても反則をする映画に出くわしてしまいました。もう笑うしかない。いよいよ続きますね、というわけでこれがほんとの「ネクスト」です。


 あ、そうそう、ピーター・フォークを久しぶりに見ました。チョイ役ですがこの人、やっぱりいい味出します。

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NEXT
アメリカ、2007年、上映時間 95分
監督: リー・タマホリ、製作: ニコラス・ケイジほか、製作総指揮: ゲイリー・ゴールドマンほか、原作: フィリップ・K・ディック『ゴールデン・マン』、脚本: ゲイリー・ゴールドマン、ジョナサン・ヘンズリー、ポール・バーンバウム、音楽: マーク・アイシャム
出演: ニコラス・ケイジ、ジュリアン・ムーア、ジェシカ・ビール、トーマス・クレッチマン、トリー・キトルズ、ピーター・フォーク