気分はガルパン、、ゆるキャン△

「パンツァー・リート」の次は「SHINY DAYS」や「ふゆびより」を聴いて元気を貰います

ヨウコの狙撃が前提だった?

2024年01月10日 | ガールズ&パンツァー

 サークルのガルパン仲間のT氏は、ガルパンファンの例にもれず、最終章第4話を何度も視聴したといいます。上映劇場も地元のTジョイ京都だけでは飽き足らず、劇場ごとの音響を体験したいと大阪のTOHOシネマズ梅田、兵庫のアースシネマズ姫路、滋賀のイオンシネマ草津、奈良のユナイテッドシネマ橿原にも行って、合計8回の視聴を楽しんだそうです。

 どこが良かったか、と訊くと「姫路やな」と即答しました。アースシネマズ姫路は、私も兵庫県に住んでいた時期に何度か行ってDolby Atmosのセンシャラウンド音響の素晴らしさに感動しましたので、同感でした。
 ガルパンの映画を堪能したあとは、国宝姫路城に寄ってんや、あそこは日本最大級の現存城郭やから、色々と歴史の凄さを体験出来るので面白いな、とのT氏の感慨にも「うん、面白いよな」と同意しましたが、肝心の最終章第4話についての感想は、微妙に異なっていたようです。

 T氏はまず大洗女子学園チームの勝利を祝い、臨時に指揮を引き継いで見事に勝ちを引き寄せた澤梓の健闘ぶりを、ウサギさんチーム推しらしく賞賛と絶賛の言葉で大いに讃えました。そして、それとは逆に継続高校チームの試合ぶりを「全てが減点対象なんと違うかね」と思いっきり酷評しました。

 その批判の口調は、継続高校チームに、というよりは継続高校チームの戦いぶりを作案し演出した制作陣へ向けられているようでした。もうちょっと頭を使って考えてくれれば、栄えある戦いぶりを表現出来たんと違うかね、と三度も繰り返しました。どうやら、第4話の展開は、T氏が劇場版以来ずっと抱いていた継続高校のイメージと違っていたようです。

「継続の作戦は、あれで作戦と言えるのかね。全ては、スナイパー・ヨウコ(上図)の狙撃を前提としてるみたいに思えた。やから、ヨウコがやられた後は、ただのジェットコースター物語でしかなかったやんか、刺さるような戦車戦をちっともやってないまま、あっさりと引っかけられて敗退した。ミカって、その程度の指揮官やったのかね」

 T氏の言う「刺さるような戦車戦」というのが具体的にどのような戦車戦を意味するのかは、よく分かりませんでしたが、「ミカって、その程度の指揮官やったのかね」という部分だけは、なんとなく頷けるものがありました。

 

 私自身は、もともとミカに関しては、かつて黒森峰女学園チームを苦戦させたという西住みほの述懐からも、かなりの手練れというイメージがありました。劇場版での目の覚めるような活躍ぶりも記憶に鮮やかでしたし、実際のところ、第4話の冒頭からの展開は、そのイメージからの乖離感をあんまり感じさせませんでした。

 たとえば、序盤で雪だるまからの奇襲をかけて相手チームを四散させ、戦力を分散せしめたうえで、主兵たるあんこうチームを撃破して戦列外に退けたのは見事というほかはなく、その衝撃で一時的な混乱に陥りかけた大洗女学園チームに圧迫をかけるようにしてジリジリと包囲戦に持ち込んだあたりも、流石と思わせるものがありました。

 さらに、指揮を引き継いだカメさんチームをも撃破して相手チームの統率力をさらに弱めようとし、次なる指揮官のもとでトンネルからの脱出を試みることをも察知して、トンネルの出口に待ち伏せの部隊を急派したあたりも、隙の無い歴戦の戦術派指揮官らしい凄味を感じさせました。
 こんな相手が隊長じゃ、そりゃ黒森峰女学園チームも苦戦させられるわけだ、と納得したものでした。

 ところが、上図のヨウコのⅢ号突撃砲G型が大洗の同型車輌にあっさりと撃破された後は、その冴えわたるような頭脳の煌めきが全く消え失せてしまったかのようでした。相手チームの要点をピンポイントで潰していく、という流れがピタリと止まってしまったかのように感じられました。

 そのギャップの意外さに、思わず席から腰を浮かしてしまい、おいミカ、どうしたんだ、と思わず声が出そうになってしまい、慌てて右手で口を抑えたのを今でも覚えています。

 

 なので、それまでのミカだったならば、続いて指揮を執っていたウサギさんチームに狙いを定める筈だろうと思うのですが、ヨウコが陣外に退けられた後は、その形跡すら感じられず、執拗にマークすることも無く、T氏のいう「ただのジェットコースター物語」のなかで滑走と小競り合いを楽しんでいるだけのように見えました。

 試合形態はフラッグ戦でしたから、勝利条件は相手フラッグ車の撃破となります。したがってアリクイさんチームを執拗に追いかける、という構図が直ちに成立する筈でしたが、見た感じではそれほど執拗に狙って追いかけている、という感じはあまり強く感じられませんでした。むしろ、急斜面の降下スピードを相手チームと競っているような感が強かったと思います。

 確かに雪山の急斜面の降下自体は継続高校のお家芸らしく、隊長搭乗車のBT-42にはソリまで履かせて乱れぬ陣形で優雅に滑走して相手にプレッシャーをかけ続けていました。しかし、ハイスピードで降下しながらの射撃にはやはり難があったらしく、肝心の撃破スコアを思うように稼げていなかったところがあります。

 

 むしろ大洗女子学園チームのほうが驚異的な適応力を示していつしか降下滑走にも慣れ、上図のサメさんチームが初の撃破戦果をもぎ取りました。大洗側は続いてもう1輌のT34/76を擱座せしめ、澤梓たちも「大脱走」の大ジャンプシーンにヒントを得てサメさんチームを踏み台として跳躍、継続高校チームの守りの要であったKV-1Eを射ち抜きました。

 この試合は準決勝戦ですから、戦力比は15対9の圧倒的優勢だった筈ですが、ここで一気に同数ぐらいに転じています。これはどう捉えてもピンチ以外の何者でもないでしょう。

 こういった流れになることをミカが予想していなかったのであれば、隊長の作戦指揮としてはあまりにもお粗末です。この試合の作戦が、全てヨウコの狙撃を成立させることを前提にして編まれていたとしても、ヨウコがやられた場合の備えも二重三重に巡らしておくのが指揮官たる者の務めではないでしょうか。

 ですが、ヨウコに続いてユリを失った後は、もう何の作戦も仕掛けもとらずに、ただアリクイさんチームを追いかけるだけになっていました。山麓に降りて集落に戻ってきた終盤の時点で、兵力比はまだ2対1で優勢を維持していたのですから、大洗のラスト1輌の思わぬ反撃にも備える余裕はあった筈です。雪崩にも巻き込まれずに最後まで随伴してきた1輌(タミ?トミ?)が居ましたから、それと連携しての詰めを仕掛けて最後の華を掴みとるべきでした。

 要するに、大洗のラスト1輌はどちらかの雪玉の中に隠れていたわけですから、まず随伴車輌に片方を撃たせて、その結果次第でミカが王手をかければ良かったのです。トラップと分かっていれば、そこで一歩引いて先を読んで仕掛けることも出来た筈ですが、そのままフラッグ車の自らが仕留めに行き、返り討ちにあいました。そうしたミカの戦いぶりは、明晰な判断が冴えわたった前半とは別人のようでした。

 アリクイさんチームの雪だるまトラップに単純に引っかかった、と言えばそれまでですが、その程度のミカだったのだろうか、といまでも少し首を傾げます。あのトラップ程度なら、試合前半期のミカであれば易々と見破ったに違いないし、そうでなくても万全の備えをとって対処しただろうな、と思うからです。

 そもそも、ミカが相手フラッグ車と睨んで自信満々のニヤリ顔で撃ち飛ばした雪だるまは、序盤の自チームの雪だるま奇襲作戦に使用した複数の雪だるまのうちの未使用分であったようです。
 その複数の雪だるまは、もとから集落内に並んでいて、大洗女子学園チーム側も河嶋桃隊長以下が横目で見ています。その居並ぶ雪だるまの一つであったならば、それらは序盤の奇襲作戦に用いるべくミカたちがこしらえたものであることになります。なんで自分たちが作った雪だるまトラップに引っかかるかな、と思ってしまったわけです。

 やっぱり、T氏の評のとおり、「全ては、スナイパー・ヨウコの狙撃を前提として」の作戦だったのでしょうか。個人的にはそこまで極言するには至りませんが、ミカの指揮作戦が、ヨウコの撃破後になにか一気に崩壊してしまったような、そんな感じをなんとなく抱いたのだけは確かでした。
 策に策を重ねた前半戦とは違って、後半戦が「ただのジェットコースター物語」で単なるお互いのすり減らしに終始していたため、黒森峰女学園チームと聖グロリアーナ女学院の終盤のアクロバチックな戦いぶりが鮮やかで熱く感じられてしまった程でした。

 なので、T氏は酷評していましたが、私自身は何か物足りない気分、いわば不完全燃焼の状態で、劇終後の初視聴の席を立ったのでありました。

 

コメント
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