2022.11.18那覇CyberBox
横道坊主ライブの感想④
国際通りからホテルに戻り、荷物を置き、汗だくのTシャツを横道坊主仕様にチェンジ、さらに鬼阿弥アクセをフル装備して、いざ臨戦態勢に。
あらかじめ近場の宿を押さえていたので、およそ2分でライブハウスに到着。
雑居ビルの7Fなので、若干分かりにくくて一度通り過ぎてしまった物の、開場時間の15分前到着で、1番乗り。少々気が逸り過ぎたか。
開場の10分前あたりで、演者らしき人がエレベーターから出て来て「遅れてすいません」と場内に入って行った。しばらくしてリハらしき音が漏れて来て、おいおい、間に合うのか?
案の定、開場時間が遅れる事に。
そういえば、前述のユメノスキマ那覇ライブの時は、1時間以上押して、結局21時を遥かに回った時刻に始まった記憶が…。
これが噂の「沖縄時間(ウチナータイム)」か。
不思議と全然腹が立たないのも、沖縄ならではの空気感のせいかもしれない。
最終的に15分押しで開場、30分のDJタイムを経て、OAの新谷一作さんが登場。優しい声と低いトーンで、センシティブな社会問題などに臆せず切り込むスタイルは、まさにご自身のバンド名「カミソリ」のごとく。
次に登場したのは、地元のパンクバンドCHAIN’SOLE 。過去にボーカルさんと義人さんが意気投合した事で、今回の沖縄ツアーの縁ができたのだとか。
スタイルは、正々堂々ど真ん中のパンクロック。個人的にコテコテのパンクは苦手なのだけど、シンプルで短いストレートな楽曲と、勢いのあるリズム感が心地良く、最後までダレることなく楽しめた。
そして、いよいよ、とうとう、ついにこの時がやって来た!
横道坊主結成以来、38年越しの沖縄初登場。
今から50年前、ベトナム戦争に行き来する米兵相手に始まったとされる沖縄ロックシーン。そんな、ジャパニーズロック発祥の地と言って過言ではない場所に鳴り響く『ブランクジェネレーション』を背に、最高にカッコ良い4人が居並ぶ様は、それだけで幸せいっぱい胸いっぱい。
かき鳴らされたギターに合わせて、拳(こぶし)が一斉に天を指差す。
初めての地に気負うことのない百戦錬磨、いつもの横道坊主のライブが始まった。
全力一本槍でド派手な音ばかり鳴らすのでなく、時に初見にもわかりやすいシンプルな提示を見せ、かと思えば、いきなり力任せに横っ面を引っ叩いて来たりと、元中日ドラゴンズの今中ばりの緩急で翻弄して来るもんだから、自然と気持ちは跳ね上がるし、体は勝手にビートを刻み、拳も思わず天を突く。
そこにはもはや、手拍子の促しや、振り付けの強要や、「ついて来い!」などの煽りは必要なく。
義人さんのボーカルは優しく広く場を包み、今井さんのギターはそこに抜群のアクセントを加えつつ、時に主役に躍り出て、ヒデオさんのベースはリズムだけでなくバンドとしての表情を表現して、黒田さんのドラムの説得力たるや。
(特に今回の黒田さんのドラムは、身震いがする程心地良く体の芯まで響いて来た)
最前に陣取っていたため、後方にはあまり目が行かなかったものの、背中に伝わって来た熱には「え、これ本当に沖縄初登場のバンドのライブ?」と思わずに居られなかった。
新旧の代表曲揃い踏みのセトリからは、沖縄への想いがあふれんばかりに伝わって来たし、名刺代わりというには余りある、深くて消えない幸せな爪跡を、沖縄の地に残したんじゃないかなあ。
加えて特筆したいのは、サイバーボックスの素晴らしさ。ステージは見やすく、照明は豊富かつ的確で、音響も終始聴きやすく、演出も矢継ぎ早やかつ「わかってる感」。配信撮影スタッフも、けしてオーディエンスの目線を遮る事がなかった。
そして、最後になってしまったけど、地元は勿論、海を渡って駆け付けた横道魂達の心強さ。
あくまで個人的な思いとして、ファンとバンドの距離が(馴れ合い的な意味で)近すぎるのは、ファンとして味わえる妙味を自ら薄めているように感じて、あまり好ましく思わないのだけど、この日の両者の間は、緊張感がありながらも、絆はしっかり見て取れる、最高の距離感だったように感じました。
あの場所にいた全員で作り上げた奇跡のライブだったのだと、今なお思うのです。
(⑤に続く)