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甘くて苦いもの。

2005年12月12日 | 

荻原 浩【コールドゲーム】

野球部を引退して進路を考えあぐねている高校生の光也。
ある時、昔の同級生に相次いで事件がおこっている事を知る。
犯人として浮かび上がってきたのは、
クラスのいじめられっ子だったトロ吉だった。

サイコサスペンスとしてはすごく面白い。怖い。
高校生の描写がリアルで、主人公の光也や友達に感情移入してしまう。
高校の時はこんな事考えてたなぁって感じ。
初めて同級生の運転する車に乗ったときや、
仲間うちで初めて酒飲んだときの感情が蘇ってくる。

光也はいじめには加わった事はなかったが、
自分がいじめられるのが嫌で助けようとはしなかった。
日常の中から意識して追い出してしまっていた事を悔やむ。

僕は中学時代、すごくいじめられていた。
ほんとに学校へ行きたくなかったし、
いじめている奴等なんか死ねば良いと思っていた。
死んでしまいたいとも思っていた。
でも、どうせ僕と同じ高校へは行けないという事だけが、
その頃の支えだった気がする。
そうこうしているうちに、いじめっ子のトップだった奴が、
中堅の奴等からいじめられるようになって僕へのいじめは無くなった。
その時も、僕は傍観していただけだった。

驚くのは、その頃の同級生に会っていじめられてた話をすると、
覚えてない人がほとんどだという事だ。
逆に、いじめっ子がいじめ返されてた事の方が印象にあるらしい。
僕は高校生になってからがらりと変わったので、
それからの印象が強いのかもしれない。
結局、当事者じゃ無ければその程度の事なんだけど、
いじめられている人間は本当に追い詰められている。

だから僕はいじめられている人の気持ちも、
傍観者の気持ちも良くわかる。
ただ、助けなかった事を後悔したりはしない。
なかなか、助けられるもんじゃないし、いじめは無くならない。

この小説では、教師もいっしょになってトロ吉をいじめる。
クラスで笑いを取る為、自分が狙われないため。
僕も先生に相談して良いことなんかあったためしが無いし、
逆に怒られたりもした。
教師のストレスはわかるが、そこで裏切られた気持ちはなかなか消えないものだ。
救えないにしても追い討ちをかけてはいけない。