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スイッチの切り替わる瞬間に。

2005年12月06日 | 

本多 孝好【MOMENT】

ある病院でささやかれる、死期の迫った患者の前にあらわれ、
最後の願いをかなえてくれる仕事人の噂。
その病院で掃除夫として働くバイトの青年は、
あるきっかけで、仕事人として願いを聞くようになる。

この主人公の青年の性格がなんか現実離れしているというか、
とにかく自分の周りにはいなさそうな感じで、
冷静なのか冷たいのか逆に優しいのかいまいちわからない。
受け答えも洗練されすぎていて、それがまた現実感をなくしているかな。
でも、これはこれで良い味になっていると思う。
同様に文体や表現も技巧的で嫌味になる寸前という感じで、
逆にそれはすごいうまいんじゃないかと思わせるところがある。
テーマの割にさっぱりとしていて読みやすい。
表紙の“MOMENT”をとらえた写真のイメージそのままだ。

病院は治療をするところだけど、やはり死が身近にあるところでもある。
子供も若い人も年老いた人も、病に倒れ、あるいは大怪我をする。
生きていながら、確実に近くに迫った死を見つめている人も多い。
僕は今30歳だが、これまであまり死を近くに感じた事はない。
ただ、今後は確実にその可能性は増えていくのだ。
40までの10年間を大病もせず過せる保証はない。

死を前にした人の最後の望みは何かがテーマだが、
そのとき死について考えるのだろうか、
それとも生について考えるのだろうか。
死を考える事 ≠ 生を考える事だと思うのだが、
実際に何を望むかといわれればなんだろう。色んな事を考えるんだろうな。
生にすがり付こうとするのかな。それとも苦しみから逃れようとするのかな。