今年の桜は開花からあっという間に満開となった。散るときも早く三日と持たずに散り始め、
思えば随分と慌ただしい桜だった。
桜(ソメイヨシノ)は散ってしまったが、そのあと野川沿いでは薄紅枝垂れ桜が見頃を迎える。
野川は国分寺市に水源をもち、国分寺崖線(はけ)に湧く湧水を集めて多摩川に合流する。
幅2,3mほどの水量のない小川で夏の渇水期には干上がってしまうほどだ。
川沿いには散策路が両岸に設けられている。
観光化されているわけではないので、散策しているのは殆どが近所の人。
この日は天気も良くゆっくりと歩くことが出来た。川に沿って瀟洒な家が立ち並んでいる。
見上げると青空と薄紅の枝垂桜が競演している。
枝先にはまだ蕾も多く、見頃はもう少し先だったようだ。
訪れた日は4月1日。ソメイヨシノが葉桜となった日だった。
三好達治に「甃(いし)のうへ」という詩があったのを思い出した。
あはれ花びらながれ
をみなごに花びらながれ
をみなごしめやかに語らひあゆみ
うららかの跫音<あしおと>空にながれ
この後はもう思い出せない
薄紅枝垂れ桜はソメイヨシノとちがい、一本一本個性的な枝ぶりなのが良い。
対岸に渡って引き返すことにする。
野川に沿って少し下ると武蔵野公園がある。ここでもたくさんの桜が見られる。
桜を愛でた後は野川観察園へ。2週間ほど前にも来たのだが、その間に
随分と季節は進んだようだ。
アケビの花が咲いていた。大きいのが赤みの強いのが雌花。
まだ4月に入ったばかりなのにオドリコソウも開花していた。
毎年心待ちにしているフデリンドウの花も春の日差しを一身に浴びている。
ニリンソウの後に咲きだすイチリンソウ
僅かだが、ヒトリシズカの花もひっそりと咲いていた。
見上げた先にはカエデの花
確かこの辺に咲くはずとやっと探し当てたカテンソウの小さな花
何とも存在感のあるムサシアブミの花はこれからといったところ
最後にここ数年探しても見つけられなかったレンプクソウの花。観察園を管理している
ボランティアの人に場所を教えてもらった。
レンプクソウは連福草、何とも縁起の良い名を持った花だ。
ゆっくりと流れる野川。
流れる水とはうらはらに、季節の歩みはどんどん早まっているようだ。
この辺で。