魔弾の王と戦姫〈ヴァナディース〉2 (MF文庫J) 価格:¥ 609(税込) 発売日:2011-08-24 |
読了。
今回も面白かったわー。
コレの1巻は、僕が川口士さんという作家さんを知るきっかけになった作品なので思い入れがあるんですけど、1巻で感じた面白さを損なうことなく、しっかりと物語を展開させているのは見事の一言です。
んー、このへんの安定感は、さすがベテランって感じなんじゃろうか。や、この場合、年期はあまり関係ないのかもしれませんけど、コレに限らず川口さんの作品って、物語の展開の速さというかテンポがすごく自分好みなんですよね。
ラノベって(ラノベに限ったことではないですけど)、どの作品も序盤はイイ感じで物語が進行するのに、徐々に進行が遅くなっていくイメージが強いのですよ。良く言うと「世界観やキャラを掘り下げる」、悪く言うと「脇道にそれる」ということになるんですけど、そういうサブストーリー的な展開に注力するあまり、話が進まなくなってしまう作品が少なくないので。具体例を挙げると、ハーレム系の作品で毎巻新ヒロインが登場するうちはいいけど、ヒロインが出揃ってからはロクに話が進まずにグダグダになってしまう、みたいな。はい、『IS』です。
逆に最近だと『ロウきゅーぶ!』の進行速度が好きですけど、やっぱその場で足踏みするようなエピソードが続くと作品自体への興味も薄れていきますからね。『魔弾』の2巻は、リュドミラという新キャラを登場させてティグルたちと絡ませつつ、世界の情勢がじわじわと動いていくという感じで、二つの要素が並行して進んでいるのは、なんとも興味を引かれます。
以下雑感。
・と、おおむね不満のない内容ではあったが、ここだけの話、100ページあたりまで1巻の「戦後処理」の話が続き、やや退屈だった感は否めないかも。言うなれば作品の地盤固めのようなものなので、軽視できない要素だというのは理解したうえで、もうちょっと短くまとめてもよかったかな、と。何より、主人公ティグルとヒロインエレンのかけ合いが作品の魅力のひとつであるのは間違いないので、各々別行動をとる展開になるとニヤニヤ分は減ってしまうのが悩みどころ。ただまあ、こういうところに凝るのが味というか、丁寧な描写が売りの作家さんだというのも事実なので、今後も路線は変えずにこのままいって欲しいです。ハイ。
・そんなわけで、100ページ以降で盗賊を相手取ってからのテンポの良さは凄まじかった。大活躍というほどではないにせよ要所を押さえたティグルの働きは十分な俺TUEE要素だし、何気にリムとも親交を深めているし、1巻を読んで膨らんできた期待をしっかり受け止めてくれたので大満足。エレンと合流してからは、信頼関係やら独占欲やらが表にチラチラ出てくるたびにニヤニヤしてしまったので困る。これぞMF文庫。
・ぶっちゃけ、序盤で尺を取りすぎたせいで終盤駆け足になるのを危惧していたのだが、リュドミラとの戦は思っていたよりも過不足なく描かれていた。たしかに、いわゆる「デレ」が早すぎると突っ込むことは可能だけど、まあこんなもんかなあという感じもする。欲を言えば、もうワンクッション欲しかったというか、リュドミラと行動を共にしたときにもう一つくらい「ティグルを見直すイベント」があるとよかった気もするけど、それは山中で遭遇したときのやり取りで補えるという判断なんだろうなあ。リュドミラに関しては今後の立ち回り次第なので期待したい。
・しかし今さらながら、〝戦姫〟って設定は絶妙ですね。なんつうかこう、エロゲでいうところの「姫ゲーに当たりなし」の法則に真っ向から立ち向かっているというか、姫キャラ特有の高貴さがありながらも、姫属性に縛られることなく動かせるという設定の妙を感じるというか。エレンが可愛いから他の戦姫も気になってましたが、リュドミラも人気出そうだなあ。
・読んだ人誰もが感じたことだろうけど、マスハス爺ちゃんの死亡フラグ半端ない。これ絶対死ぬでしょ。ティグルさんが戦姫とイチャイチャしてハーレム構築してる裏で、爺ちゃんひっそりと殺されちゃうでしょ。泣ける(´;ω;)
・川口士さんの書く主人公はラッキースケベが標準装備。いいわね?
色んな意味で3巻が楽しみですということで一つ。